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ファシリテーションの方法論 ~どこでも通用するスキルを身に着ける②~

終身雇用制度が崩壊し、副業や兼業を行う人が増えてきたし、これから異業種間の人の流動性も高まってくる。そうすると、どれだけ”持ち運べる”スキルがあるかが重要になってくると思う。専門的な知識や社内調整力よりも、①課題解決力、②人を動かす力、③構想力など、どこへ行っても通用する能力を身に着ける必要性が高まってくると思う。

課題に対する解決策を実行していくためには、関係する人達を巻き込み、策を実行していく必要がある。そこで役立つのが、人を動かす力、特に”ファシリテーション力”である。コンサルなどの第三者や社内のタスクフォースチームなどが解決策を提示しても、なかなか実行に移されないことが多い。なぜなら、自分で考えた策ではないので、思い入れがないから。誰かに言われたことよりも、自分で考えた方が実行度は確実に上がる

逆にいえば、課題の深掘りや解決策立案の”プロセス”に実行する側の人達を参加させるのが有効であり、その肝になるのがファシリテーション力である。個人的にはコンサルティングに必要なスキルの中で、最も難易度が高いと思っている。

これまで様々な企業・組織・テーマで、ファシリテーションを長年経験してきて、ポイントは大きく3つだと思う。①組立てる、②場を創る、③引き出す/纏める(下図参照)。

ファシリテーション力

組立てる

組立てるとは、複数回ある会議体のゴールを逆算で設定し、ゴール達成に必要な議題・論点に落し込み、各論点におけるアウトプットイメージを事前に明確化することである(下図参照)。

組立てる

アウトプットイメージ

ここでのポイントは、どういう議論をし、どう議論を可視化し、どうアウトプットにするのかをファシリテーター側が明確な答えを事前に持っておくことである。具体的な結論を誘導する必要は全くないし(むしろ、どういう答えでもOKというスタンスで臨む)、結論と自分達の答えが違っていても構わないが、どういうプロセスで議論をし、どういう議論が想定されるのかを事前に準備しておくこと。

場を創る

場を創るというのは、議論しやすい環境を整えるということ。具体的には、①会議室のレイアウトの設計、②グランドルールの設定、③参加者の役割を明確にすることで、参加者が前向きな意見を出せるようにすることである。ここでのポイントは二つ。一つは、ちょっと狭い会議室にすること(下図参照)。経験則的に、広い会議室よりも、狭い会議室の方が確実に議論が活性化する一方で、広い会議室の場合は意見が出にくい傾向にある。

レイアウト

もう一つは、議論が活性化するようなグランドルールを設定し、繰り返し共有すること(下図参照)。多くの企業で見られるのは、自由に議論をするという経験のない人が多い。だから、「こんな意見を言ってもいいのかな」とか、「これを言ったら上司に怒られる」というような懸念を解消する工夫が必要となる。その一つがグランドルールの設定である。

グランドルール

引き出す/纏める

最後に、会議の場で参加者から意見を引き出し、纏めていく。そこでも幾つかチップがある。まずは、決め方を決めること(下図参照)。特に意見が割れそうな議論の場合は、意思決定の方法を事前に決めておいた方が良い。何を意思決定のものさしとするのか、合意形成のプロセスをどうするのかを決めておく。議論する前に決めておけば、合意形成はしやすくなる。

決め方を決める

意見を引き出すにもポイントは幾つかある。

①宿題を出す:その場で頭を動かして、議論をするのが得意でない方は結構いるので、次なるテーマを示しておき、事前に考えてきてもらうのは有用である。

②ポストイットを活用する:議論に入る前に5分程度、各自、アイデアを書いてもらう。議論に参加するタイミングの掴めない人がいるので、それでも意見が出せるように先に書いてもらう。

③ファシリテーターが前に立つ:勇気がいるけども、これはマスト。議論を進める人がちゃんと前に立つ。オーケストラの指揮者のように。

④立って議論をする:私が運営する議論のための会議は原則、立ち会議としている。論点を前にして、皆が円陣を組むように集まり、意見を出し合う(下図参照)。腰が辛くなるので、皆早く終わらせようと意見が活発に出る。

全員から話を聞く:オープン質問(下図参照)で投げかけても、意見を言わない人がいるので、個人名で意見を聞いていく。「〇〇さん、どう思いますか?」っていう感じで。すると、当てられると何かしらの意見は出てくるものである。

⑥発言を繋ぐ。出てきた意見をもとに、他の人の意見を引き出したり、具体的な背景を深掘りをしたりと発言を繋いでいく(下図参照)。「〇〇さんはこういっていますが、××さんはどう思いますか?」っていうような具合に。

円陣を組む

質問

一通り意見が出つくしたら、意見を纏めていく。類似する意見などでグルーピングしていくのもありだし、アウトプットイメージで提示したフレームワークに沿って、意見を整理していくのもあり(下図参照)。私の場合は、大きいイーゼルパットで決定事項などを記載していく(下図参照)。会議終了後にパワポに落して、全参加者に共有する。もちろん、次回までの宿題を記載することも忘れずに。このプロセスに巻き込むことで、自分達で定義した課題であり、自分達で深掘りした原因であり、自分達で考えた解決策であり、自分達で決めたアクションとなるので、実行度は確実に上がる。

ポストイット

議論を纏める②

対立した意見があり、なかなか合意形成が図れない場合は、幾つかの手法を活用するのも有用である(下図参照)。

①視点を変えて対立を解消する:そもそもの目的を戻る方法と、将来の目標を再度確認する。そもそもの目的や目標に立ち戻ることで、対立している意見の解消になる場合がある。

②代替案・妥協案を提示する:お互い譲れない時はあるので、その両者を意見をくみ取った代替案・妥協案をファシリテーター側が提示する。

③歩み寄り30:70を使う:代替案・妥協案が出せない場合は、30:70の法則に使う。絶対妥協できない点、70%妥協できない点、30%妥協できない点を洗い出した上で、30%妥協できないところから小さな合意形成を図っていくアプローチである。

④共通点を整理する:③に類似しているが、相違点と共通点を洗い出しをして、共通点から合意形成を図っていくアプローチである。

議論を纏める

以上が、ファシリテーターの方法論であるが、一番は場数を踏むこと。社内のちょっとした議論でもいいので、自らがファシリテーター役として、前に立ってやってみて、終わった後にきちんと振返りをすること。良かった点と改善点を洗い出し、改善点に対して、改善行動を決めて、「次回は、これとこれを改善する」と決めていく。それを繰り返すことで、自分のファシリテーションに対する自信が生まれ、それがいつしか自分の武器になっていく。

私は、今でも、重要な会議の事前には緻密な設計をしているし(下図参照)、終了後には必ず振返りをしている。

タイムテーブル

また、通常の経営コンサルティング・プロジェクトは20週間~30週間と長いけども、それを会議体を中心として20~30週間分のゴール設定をプロジェクトが開始する前に完成させている(下図参照)。そして、一度作ったものを毎週、向こう4週間分の見直しをしている。これはあらゆるプロジェクトで有効な方法だと思う。

週次ゴール

最後に議論するとは、どういう意味なのか、どういう効果があるのかという、根底となる考え方を共有しておく。

”議論とは、論破することではなく、指摘し合うことでもなく、一人(又はチームだけ)では到達できなかった知的領域まで届くことを目的とする。 即ち、個人(又はチーム)での検討が「1」とした場合に、全体で「2」にも「3」にもすることである”

この考え方はFace to Faceの会議でも、オンライン上でも同じで、私が運営しているオンラインサロン「右腕倶楽部」も同様の考え方に基づいていて、一人では到達できない知的領域に辿り着くことを主としている。

リアルにファシリテーションを学びたい方は、右腕倶楽部で実施している幾つかのプロジェクトやイベントにご参加頂くのも一つのオプションかと思う(初月無料:~2020/5/6迄、会費月額1,000円、共感頂けるはどなたでも参加可能)。





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