Cyanotype
しばらく更新が出来ずにおりましたが、最近また新しい写真の楽しみ方に目覚めてます。
Cyanotype(サイアノタイプ またはシアノタイプ)という手法で、
「ネガフィルムを感光剤を塗った紙に密着させて、紫外線に露光させてプリントする」
というものです。
Cyanotypeって?
いわゆる「ベタ焼き」というものと同じような具合なんですが、この方法の何よりのメリットというか楽しみは、
・フィルムと同じ寸法のプリントが出来上がる。
→基本的に引き伸ばしはしない
・出来上がった絵は青と白のコントラストだけで表現される
→モノクロ写真の自宅プリントみたいな具合です
・仕上がったプリントの絶妙なレトロ感
→モノクロデータの印刷とは一味も二味も違う仕上がりです
といったポイントがあります。
このCyanotypeを楽しむために必要なものは
・感光剤(または感光剤をしみこませた紙などのベース)
・ネガ
・ネガと感光紙を密着させるための仕組み
・日光(紫外線)
この四つです。
感光紙は日光(紫外線)に当たると、当たった部分は青く変色し、当たらなかった部分は色が変わらないという性質になります。
実際に使ったもの
まず感光剤や感光紙ですが、Amazonで売ってます。
こちらが感光紙で、感光剤は粉末の入ったボトルが売られています。
どちらも3000円くらいですが、感光紙の方は届いたらすぐに使えます。ただ枚数はA4サイズが15枚とさほど多くはありません。
厚みは普通のコピー用紙くらい。割と薄手です。
感光剤の方は、薬品を自分で紙に塗る必要がありますが、その分厚手の紙だったり、木や布などに塗ることも出来ます。
で、ネガですが、実際に撮影して現像が終わったネガフィルムを使うのがベストです。
ただ、我が家では最大のフィルムでも5x7(12㎝x17㎝)といったサイズで、これだとかなり小さい写真しかプリントできません。
なので、
・現像済みネガフィルムをSilverFastなどで読み込む
・Lightroomなどで調整
・トーンカーブを右下がりに修正してネガ化
・ネガ化した画像を出力して
・顔料インクに対応したOHPシートに印刷
という手順で、最大A4サイズのネガフィルムを作りました。
露光台は?
で、サイアノタイプは通常「日光で30~40分ほど露光させる」という方法で焼き付けますが、日光露光だと天候状態によって左右されるのと、あと夜とか夕方とかだと出力が出来ません。
サイアノタイプの焼き付け自体は可視光線とか赤外線ではなく、紫外線で露光しますので、紫外線LEDを使って作りました。
2mx3セットで2000円くらいのLED適当な長さにカットして、ダイソーのMDF板に張り付けます。
この手のLEDテープは途中でカットが出来て、しかも配線が簡単なので楽です。
底板と、無反射ガラスを保持するための天板2枚、側面用のパーツなどで、300㎜x400㎜のMDFを4枚ほど使い、
こんな具合の箱を作り、ガラス面にネガ→感光紙を乗せて密着させ、LEDの電源を入れる、という具合で露光させます。
露光時間は?
今回作ったLED露光台は、紫外線LEDの数が1列9個x13列でしたので、発光素子が117個、素子から無反射ガラスまでの距離は約60㎜。
この環境で、露光時間7分20秒くらいがベストみたいでした。
露光を終えた直後の感光紙は、ネガフィルムと同様に明暗が反転したものになっています。
この感光紙を水で洗うと、
・紫外線が当たったところは青く変色して、色素が定着する
・紫外線があたっていないところは色素が定着せず、洗い流される
という具合で色が残ります。
ネガフィルムを密着して紫外線を当ててますので、
・ネガで明るい所=本来は暗い所=光が当たる=青色が定着する
・ネガで暗い所=本来は明るい所=光が当たらない=色が定着しない
といった仕組みになりますので、水で洗い流したあとは
こんな感じで色が変わります。
では仕上がりは?
これは縦200㎜x横300㎜の紙に、Lightroomから出力したOHPネガで露光したものです。
ちなみに、この写真は左から順に10分露光、8分露光、右端が7分露光です。
この辺の実験結果から7分30秒がベストかなと思います。
過酸化水素水仕上げ?
露光した感光紙を水に漬けて薬品を洗い流すと、明暗が反転して肉眼で見るような絵になります。
一度水につけてから、過酸化水素水を溶かした水につけるとコントラストが強くなるそうです。
ただ、過酸化水素水(オキシドール)なんてものは手元にありません。
台所や洗面所などを探してみて、ちょうど洗濯用の漂白剤ワイドハイターEXが「酸素系漂白剤」と銘打たれてましたので、こちらを試してみます。
これが、水で洗って乾かしただけの状態。
そして下の図が、水で洗って乾かしたものを、ワイドハイターEXを薄く混ぜたものに着けて乾かしたものです。
青い色が強くなって、コントラストが強くなったような仕上がりです。
こちらも、ワイドハイターEX仕上げ。
明暗がはっきり出てクッキリした仕上がりになります。
Cyanotypeの面白さ
結構面倒なプロセスを経て出来上がるのが青の濃淡だけで仕上がる絵、という、実に「労力に対して割に合わない成果」ではありますが、例えば5x7フィルムを使ってベタ焼きすれば
・一切デジタル処理を経ないでプリントできる
・意外と解像度が高い
・日光での露光であれば、電気を使わずにプリントできる
という、インクジェットプリンタを使った印刷とは全く違ったプロセスを楽しめます。
また、LightRoomなどを使ってOHPに印刷した「デジタルネガ」であっても、印刷だと目立つであろう画質の粗さが逆に良い味になってくれます。
モノクロ写真はこれまでスキャンして画質を調整して、印刷して、といった楽しみ方でした。
この印刷するという楽しみに新たなバリエーションが加わりました。
ますますモノクロ写真を撮るのが楽しくなりそうです。