夜更かし
誰かに「ねぇねぇ、聞いて」と悩みを打ち明けることがなかなかできない。
なんとなく、それとなく、話すタイミングを見計らって、あわよくば話すことが出来たらな……その程度に波長の合う学生時代からの友人にメールをしてみた。
すると、思いもよらない言葉が友人から送られてきたのだ。
「人前で名前を呼ぶな」と。
???
「どした?何かあったのか?」と返す私に、個人情報がダダ漏れると返されたのだ。
学生時代から呼び捨てで呼んでいた彼女の名前は、割と珍しい。
それゆえ、外で名前を連呼するなと言うのだ。
私にしてみれば、校庭で教室で廊下で呼び止めるような感覚で、数十年経つ今でさえも公共機関で呼んでいたことに対し、彼女はずいぶんと気にしていたというのだ。
ハッとした。
「電話をしてもいいか?」とメッセージ後、いいよと返され、久しぶりに友人に電話をかけることにした。
「もしもし……」
友人の第一声が聞こえてくるや否や、私は間髪入れずに謝った。
最近、親しくなった常連ファンの子を、ひょんなことから旅行へ誘うことになり、行列のできる店に並んでいた間に本名を聞かれ、迂闊にも答えてしまったその瞬間、
「きゃあ〜、◯◯ちゃん!」とデカイ声で言われたのだ。
イヤイヤ、ホントそういうの勘弁して欲しい……と思っていたことを、まさかこの私もバカでかい声で叫ばないにしろ、友人に対して数十年うんざりさせていたことと重ねて猛省した。
「怒ってるんと違うんやで」と、やんわりと友人は話した。
ひとしきり謝った後、そこからなんとなく私の思い悩んでいる事をポツリと話すタイミングへと繋がった。
彼女は、私が悩んでいるという話を、押し付けがましさのない意見で今後の対策と励ましをくれた。
やはり、持つべきものは旧知の仲である。
そこから、ここ最近の気になることや、昔に二人で出掛けた時のエピソードなどの思い出話にてんこもりの花を咲かせた。
「遅くまでごめんな。」と言っては、また次の話に繋がってを繰り返し、気がつけば時計の針は午前3時に向かおうとしている。
「コロナだけど、今度パソコン見るのつきあってくれる?」
と言う私に「良いよ」と素っ気なくでもなく、大袈裟でもない彼女のトーンが、私の心を温める。
「おやすみ。じゃ、また約束の日が近づいたら連絡するよ。」
スマホを充電して、灯りを消した。
実冬の文章や朗読がいいなって思っていただけたら嬉しいです。 お気持ちは、自分へのご褒美に使わせていただきます😊