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世界を創るのは誰かじゃない


小学生のころ、私は「将来の夢」を聞かれるのが苦手だった。クラスメイトたちは「ケーキ屋さん!」とか「サッカー選手!」とか元気よく答えていたけれど、私は「特にない」と答えるのが常だった。いや、嘘をついたわけじゃない。本当に「これがやりたい!」というものが見つからなかったのだ。

そんな私を見て、父は「何でもいいんだよ。やりたいことをやれば」と言ったが、「その“やりたいこと”がないんだってば」と思った。しかし、大人になった今、私はわかる。あのころは「やりたいこと」を“すごいこと”じゃなきゃいけないと思っていたのだ。

だが、最近気づいた。人生って、ちょっとしたことでエネルギーが湧いたり、逆にしぼんだりするものなのだ。

たとえば、近所のパン屋さん。店主のおじさんはいつもニコニコして「クリームパンが焼きたてだよ!」なんて教えてくれる。私はその店のパンが好きなのはもちろん、おじさんの楽しそうな雰囲気が好きで、つい寄ってしまうのだ。パン屋のおじさんは、パンを焼くのが楽しくて仕方ないのだろう。おいしいパンを焼くことが、自分の「やりたいこと」なのだ。そして、そのエネルギーが私に伝わる。

こういう人がいると、まわりにいいエネルギーが流れるのだ。

逆に、会社員時代の上司を思い出す。その人は仕事がつまらないのか、いつもイライラしていた。書類を渡しても「なんでこんなに遅いんだ」とか、会議中も「そんなの意味があるのか?」と文句ばかり。周りの人たちもだんだん影響を受け、みんなピリピリしていた。私はそんな職場が嫌で、いつも胃が痛かった。

同じように働いているのに、どうしてこんなに違うのだろう?

それは、「やりたいことをやっているかどうか」ではないか。

やりたいことをやっている人は、エネルギーが明るい。まわりにもそれが伝わる。でも、やりたくないことばかりやっている人は、不機嫌になり、その雰囲気が周りをも暗くする。

となると、「世界を変えよう!」なんて大それたことを考えるより、まずは「自分がやりたいことをやる」ことが、実は世界を変える第一歩なのかもしれない。

かつての私は、「世界を変えたい!」と思ったことがある。でも、その方法がわからなかった。「世界平和」とか「環境問題」とか、なんだか大きすぎて、自分にはどうしようもない気がした。でも、今ならわかる。

世界を変えるって、まず自分が変わることなのだ。

それに気づいたのは、ある知り合いの女性の影響だった。彼女はずっと勤めていた会社を辞め、「自分の好きなことを仕事にする!」と決めた。周りからは「そんなの無理だよ」「安定した仕事を手放すなんて」と散々言われていたけれど、彼女はニコニコして「でも、やりたいんだもん」と笑っていた。

私はその姿を見て、「あ、こういうふうに生きてもいいんだ」と思った。すると、自分もなんとなく「本当にやりたいことって何だろう?」と考え始めたのだ。

やりたいことをやる人が近くにいると、そのエネルギーに触れて、こっちまでやりたくなる。

だから、世界を変えたいなら、まずは自分がやりたいことをやる。それだけで、まわりの空気は変わるし、そこから少しずつ、世界も変わっていくのではないだろうか。

私は「文章を書くことが好きだ」と気づいたとき、すごくホッとした。何か特別なことをしなくても、私にできることがあるのだと思えた。だから、今日もこうしてエッセイを書いている。

これを読んだ誰かが、「そうか、まずは自分からでいいんだ」と思ってくれたら、それだけで世界は少し変わるのかもしれない。

世界を創るのは誰かじゃない。

あなたが創るのだ。

そして、私も、そのひとりなのだ。





ここまで読んで下さり、ありがとうございます。


このお話は半分フィクションです。
自分の中にある思いをこの世界と混ぜ合わせて、ひとつのお話にまとめました。
風からの便りのような、誰かの心へと吹き抜けるような、そんななにかをお届けできたらいいなと思っています。

よき日でありますように!




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