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「子どもと○○しなくても大丈夫」って 何の根拠があって言ってるの?

「子どもと遊ばなくても大丈夫」「子どもに絵本を読まなくても大丈夫」「子どもの空想に付き合わなくても大丈夫」というような「子どもと○○しなくても大丈夫」という言説を、時折目にする。最近増えてきたような気もする。

そういうことを言ったり書いたりしている人の主張を、最後までよくよく読んでみると、「親も疲れていたり、大変な時もあるんだから、いつも子どものやりたいこと最優先じゃなくてもいいよ」と、母親父親に安心を伝えたいだけ、ということも多いけれど、でも、それらをまとめて「○○しなくても大丈夫」と言い切っちゃっている。
その言い切りは、私には、ちょっと危ういな、と感じる。

いくつか言いたいことがある。

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1つ目は、一緒に遊んだり、絵本や会話を楽しんだりすることを、大人が子どもに「してあげる」という一方的な行為だと思っていないだろうか?という違和感。
「子どもと遊ばなくても大丈夫」ではなくて、「子どもと遊んであげなくても大丈夫」という言い方をする人もいる。してあげている、と思っているのだろう。
でも、遊ぶとか、絵本やテレビや動画を一緒に楽しむとか、散歩するとか、おしゃべりするとかって、お互いに楽しいことであって欲しいなぁと思う。そりゃ、インドア派だから子どもとの外遊びが苦手、という人はいるだろう。ごっこ遊びはどうしても気恥ずかしい気がして苦痛と言う気持ちも分かる。でも、それは、子どもと関わる方法のうちのいくつかが自分の好みではない、というだけであって、親子で一緒に何かを味わう時間って、本来は嬉しいものであって欲しい。

子どもを自分たちの家族の一員として迎えて、新しい生活が始まれば、大変なことも沢山あるし、大人だけの生活では感じなかった不自由さもあるかもしれない。それでも、一緒に過ごす時間や、楽しい気持ちを共有できる時間は、幸せだなぁ、って感じられたらいいのになぁ、と願う。

新しい家族と共にある幸せを具体的に実感できるのが、相互のコミュニケーションだと思う。小さな子どもにとって、そのコミュニケーションの手段の1つが遊びであり、絵本なのだ。大人が子どもに「してあげる」ことではなく、共に「する」ことだと、そんな風に考えてもらいたいなぁ、と思う。

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そして、もう1つは、何を根拠に「大丈夫」って言うのだろうか、という懸念。
子どもの育ちって、いくつもの色々な要素が絡み合っていて、何を、どうしたら、どんな影響があるのか、一言で言いきれないものだ。育ちの過程で、どうすれば正解なのか、どうすれば間違っているのか、正直に言えば誰にも分からない。分からないからこそ、我が子の様子を見ながら、どんな風に関わればいいのか、必死に向き合う。その必死に向き合う過程こそが、父親母親と子どもとの関係性を「親子」にしてくれるんだと、私は考えている。

「大丈夫!」って言い切れることなんて、何もない。

「くよくよ考えなくても大丈夫」「そんなに心配しなくても大丈夫」「育児書通りじゃなくても大丈夫」「できないことがあっても大丈夫」・・・というような、大人の在り様についての「大丈夫」を伝えていくことは必要なのかもしれない。

でも子どもの個別の事例について、「大丈夫」かどうかは、なかなか言い切れないんじゃないかな。その答えが分かるのは3年後、5年後、いや、もしかしたら、50年後や80年後かもしれない。

アレもコレもしなくちゃいけない、と思っている保護者に「そんなに完璧を求めなくても大丈夫」をお伝えすることは、相手のプレッシャーを取り除くという意味では必要なのかもしれない。でも、相手が欲している、耳障りのいい言葉をそのまま投げかけるだけなのは、ちょっと無責任だ。

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ちなみに私も、「子どもと遊ぶことが苦痛」「絵本を何度も読むことが苦痛」というご相談を頂くことがある。

その時には、遊びとか絵本は方法はともかく、親として、〈子どもに関わることを楽しんでもらいたい〉という思いをまずお伝えしている。子どもに関わる手段はなんでもいい。お腹をツンツンつつくだけでもいいし、授乳もオムツ変えも、子どもに関わる大切な手段の1つ。
それでも、子どもに関わる方法がネタ切れになった時には、絵本とか、オモチャとか、遊びというものは、本当に保護者を助けてくれる。絵本やオモチャがあれば、それを介して、子どもに語り掛けられるし、同じ絵や物を共有できるし、何に興味を示したのかも分かる。

だから、「遊ばなきゃいけない」「絵本を読まなくちゃいけない」って思う必要はないけれど、遊びや絵本に助けてもらうと、我が子との関わり方が
増えて、随分ラクになるんだよ、とお伝えしている。
「やらなくちゃいけない」という負荷ではなく、「助けてもらえる」という手段として、考えたらいいんじゃないかなって。

あれもこれもやらなくちゃいけない、と思って、本当に一生懸命な人には、「そんなに頑張りすぎなくてもいいよ」って、言いたくなる。
私が、この先どこかで「大丈夫」を伝える機会があれば、「○○しなくても大丈夫」ではなくて、「あなたは、あなたのままで大丈夫」とお伝えしていきたいなぁと改めて思う。

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