見出し画像

絵の具の水の量が違うだけで 子どもたちの作品が変わる

保育園の子どもたちと、「つくる」を楽しむ活動をしています。
私は、外部講師という立場で保育園を訪れています。

7月は絵の具の活動を行いました。
今年度からアートクラスを始めた園の子どもたちが、どんな風に楽しむのか、私もまだ分かりません。まずは、「一番自由に発散できそう」な環境を設定してみることにしました。

とは言っても、そんなに、特別なことでもないんです。床にシートを敷き、ロール画用紙を広げたくらい。

なお、床に敷くのは使い捨てできる「養生シート」がお勧めです。マスカーと言う商品名で売っています
だってさ、ブルーシートを敷いたら、結局、後でブルーシートを洗わなくちゃいけないんですよ。これ、かなり大変。何なら、床掃除以上に大変です。

絵の具は、紙コップに入れて、1人1個ずつの紙コップを渡します。大事なのは、子どもが「絵の具もっとちょうだい!」って言った時に、イヤな顔したり、めんどくさそうにしないこと。使いたいだけ存分に絵の具を使って良しとします。だって、床に長々と画用紙を広げているんです。かなりの量の絵の具を使わないと、紙は埋まりません。
大抵、活動の途中から私は絵の具屋さんになり、子どもたちが、机の前に行列を作っては「赤くださーい」「黄色くださーい」「赤と青くださーい」ともらいにきます。それでいいんです。

私の役割の大部分は、環境を用意することです。ダイナミックに絵の具の活動をするときも、あおりません。「やれやれー」とか「もっとぐちゃぐちゃにしてみよう」とか、言いません。子どもの行動を言葉で説明することはあります。「あ、色と色が混ざったね」「手の形になってるね」「●色がひろがってきたねー」などでしょうか。

今回の活動で気づいたことは、環境設定は意外と繊細で、例えば絵の具に入れる水の量が違うだけでも、作品が変わります。あるクラスでは、お手伝いをしてくれた先生が、絵の具に入れてくれた水の量が多かったんです。(多いなー、と思ったけれど、まぁやってみよう、と思って、私も指摘しなかった。)そうしたら、最初に「指を使って塗ってみよう」と声をかけても、絵の具がさらさらしすぎていて、指の先につかない。当然塗れない。子どもたちは、紙コップの中の色水を紙にこぼしはじめたんですよね。先生は「水をたらすんじゃなくて、塗るんでしょー!」と声をあげていましたけれど、まぁ子どもの立場に立てば当然です。このクラスでは、水分多めの絵の具が最初から紙の上でまざりあったので、全体的に色と色が融け合った感じの作品になりました。

ちなみに、絵の具に入れる水が少なくても、絵の具の伸びが悪いので、描いていて心地よくないんですよね。指や筆を動かした時に、自分の思ったように色がついてこないので、ちょっとイライラしてしまう。飽きやすくなります。

直感的な動きに絵の具がついてくるくらいの、ちょうどいいカタさに水を入れると良いのですが、私も最初は、つい水を入れすぎることが多かったです。思っているよりも水の量は少なくていいんですよね。何度かやっていくうちに、混ぜる感触で分かってくるものです。

クラスによっては、「絵の具のおかわり」のタイミングが遅くなったところもあり、その場合は、絵の具同士の混ざりあいが少ない、元の色や、元の線が残った感じの作品になりました。
同じ環境を用意したつもりでも、ちょっとの水の量、声かけのちょっとのタイミングによって、全然違うものになる。環境の変化が活動に与える影響って大きいんですよね。

ただ、だからって、最初から「正しい環境づくり」を目指すのも、ちょっと窮屈な感じがします。環境を作ってみて、子どもたちの反応、遊び方、何に夢中になるのか、やりたいのにできていないことはないか・・・などを観察しながら、良い感じにチューニングしていくのが面白いと思うんです。子どもが想定外の楽しみ方をした時に、それはどうしてかな、何を楽しんでいたのかな、最初に想定していた遊びの楽しさを味わってもらうには環境をどんな風に変えたらいいかな・・・と考えて、また次に試してみる、と言う繰り返しができるところが、大人にとっても楽しいと思うんですよね。

今月も、クラスによって、違う楽しみ方に発展し、クラスの子どもたちのタイプだけではなく、クラスの先生たちの関わり方によっても、随分活動の在り方が変わるなぁと感じたのでした。人の関わり方も、環境にとって大切な要素だということに、改めて気づきます。
私にも、気づきが一杯あって、毎月、なかなか興味深いのです。

ところで、今月は、通い始めて6年になる方の保育園の活動も「絵の具」でした。こちらは担当の先生が計画を立てて、「ボディペイント」がテーマ。3~4年の付き合いの子どもたちは、自分の身体にたっぷり絵の具を塗ったあと、私の顔にも、首にも、筆で丁寧に絵の具を塗ってくれました。つきあいが長いからこその関わりだな、と思います。1年目の園の子どもたちは、私に一杯話かけてくれるけれど、ここまで遠慮のない無茶はしない。
絵の具って、厚く塗って、乾くと、ぺりぺりとはがせるんですね。木工用ボンドを乾かした時みたいです。
人も環境の一部である、というのなら、「もう長い付き合いになるアートの先生」と「最近、時々来ている、なんか面白いことをする人」では、子どもたちに与える影響も、だいぶ違う。環境としての「私」の在り方も、違っているんですよね。

子どもたちの活動は、大人の関わり方と、毎回面白い科学変化を起こすようです。それを、今のところは、私自身が一番面白がっています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?