見出し画像

【季節のおすすめ絵本】9月:やさい

この季節だからこそ、味わいたい絵本、というものがあります。
もちろん、子どもたちが、真冬に水遊びの絵本が読みたくなったり、雪だるまの絵本が好きすぎて1年中楽しんだりする姿も、それはそれで微笑ましいので、あんまり厳密に「絵本を使って季節を教えよう!」とは思わないのですが。
もっと緩やかな感覚で、〈今年も、この季節だなぁ〉とか思いながら、手に取りたい絵本があってもいいよね、という想いで、月ごとの絵本をご紹介していこうと思います。

「食欲の秋」ですね。
今年は、まだまだ夏の続きのような気候が続いていましたが、それでも、新米の季節になり、秋の果物が店先に並ぶようになり、実りの秋が近づいてきています。

食べ物の絵本は、本当に魅力的な絵本が数多くあります。子どもの生活に身近で、そして、人の営みや自然との繋がりを感じられるからだろうなぁ、と思っています。

「食べ物の絵本」というテーマにすると、ご紹介したい絵本が多くなりすぎるので、昨年は、「いただきます」というタイトルで、〈誰かが手間暇かけて用意してくれたこと〉へと思いを馳せるような絵本を選びました。

今年は、自然の恵みへの感謝の思いを込めて、畑で力強く育つ野菜たちの絵本を紹介しますね。

まずは定番の1冊から。

やさい』平山和子:作 福音館書店
畑で育つ野菜のページ、その野菜が八百屋さんで売られているページが交互に繰り返される、シンプルな絵本。きっぱりとした簡潔な文章にはリズムがあり、写実的な野菜の絵は、においや手触りまで感じられる、シンプルだけれど、どこをとっても、完璧な絵本。
ごくごく小さい赤ちゃんのうちから、何度も何度も繰り返し味わいたい絵本です。
同じ平山和子さんの絵本には、『おにぎり』『いちご』などもあり、特に『くだもの』は、子どもが自然に手を伸ばす絵本としても有名なのですが、私は、「やさいが育つ畑の風景」が描かれた、この『やさい』の絵本が大好きです。

『やさい』の絵本を読んで、そこから、どんな風に遊びが広がるのか・・・という実践例は、こちらの記事でも紹介しています。

ちょっと視点を変えた面白さを味わえる絵本。

やさいのおなか』きうちかつ:作 福音館書店
野菜を半分に切った様子が、白黒で表現されている絵本です。
いつも見慣れている野菜が、全然違って見えるので、小さなお子さんから、大人たちまで、興味津々。この本を読み終わったら、いつもの野菜を見る目が変わるかもしれませんね。
また、ご飯を作る時に、余裕があれば、「野菜切るけど、どんな〈おなか〉なのか、見てみようか」とお子さんに声をかけて、一緒に観察しても楽しいですよ。
そうそう。うっかりしていると見過ごしてしまうようなところまで、こだわっているみたいですよ。例えば・・・白黒の絵の縁取りの色などにも、注目してみてくださいね。

そして、植物としての野菜の力強さを感じる絵本です。

どんどこどん』和歌山静子:作 福音館書店
根菜たちが、畑でたくましく育つ様子が感じられる絵本。
私は、葉っぱがきっちりと描き分けられているところが好きです。にんじんの葉っぱの細かくて繊細な姿や、さといもの葉っぱが「トトロの傘みたい」な姿など、野菜によって、葉っぱの形もそれぞれ違うんだなぁ、ということが発見できる、うそのない絵なのです。
どんどこどん、という力強い言葉と、和歌山静子さんの安定感のある太い線。そして、そこで描き出される根菜の魅力を存分に味わってください。

地面の下の様子を楽しむ絵本をもう1冊。

おやさいさん』tupera tupera:作 Gakken
野菜たちの、地面の下の様子・・・という絵本としては、『どんどこどん』よりも、こちらの方が知っているよ、という人が多いかもしれませんね。
地面の下の部分だけをめくる、という仕掛けのついた絵本です。
tupera tupera,さんらしい鮮やかな色と形。地面をめくる時のドキドキ。そして、驚きや笑い。楽しい要素がぎゅぎゅっと詰まった、わくわくする絵本です。

さらに、野菜が育つ姿を楽しむ本。

はたけの絵本』いわむらかずお:作 創元社
14匹シリーズで知られるいわむらかずおさんの本です。12カ月それぞれの畑の様子が、ポップな詩で綴られています。
畑には、必ず生き物がいて、作物の姿と生き物の姿が混ざり合い、1つの情景として、調和しています。それを見守る作者の目線が本当に優しいのです。
たくさんの命がつながりあって、その先に食べ物がある、その情景の美しさが理屈抜きで伝わってきます。

いかがでしたか。
絵本をきっかけに、自分たちが食べているものへと興味が広がっていくと、すてきですね。

食欲の秋。絵本を読むことも、食べることも、存分に楽しんでくださいね。


いいなと思ったら応援しよう!