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小説「年下の男の子」-12

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第14章-1「深夜」

「2階はね、奥からお兄ちゃんの部屋、お姉ちゃんの部屋、そしてアタシの部屋になってるの。2階にもトイレがあるから、下まで降りなくていいよ」

と案内してくれているのは、朝子の妹の裕子だ。
姉妹ジャンケン対決は、妹の裕子が勝ったのだった。

裕子が勝った瞬間、姉の朝子は不機嫌な顔になり、歯を磨いてくる!と、洗面台に行った。

「実はね、洗面台も2階のトイレの横に増設したんだよ。毎朝戦争だったから。そして今日、お兄様がお泊りになられるお部屋は、一番奥のお兄ちゃんの部屋ね」

「うん、ありがとう。助かります」

「アタシが一番手前だから、一応お姉ちゃんとお兄様が逢引きされても分からぬようにはなっておりますが、そこは高校生らしく節度を保って…」

「さっきから何言ってんのよ、裕子!」

朝子が階段を駆け上がってきた。

「もうお姉ちゃんったら、耳が鬼なんだから。アタシだって少しくらい、正史くん…と遊んでもいいでしょ?」

「んもーっ、正史くんって呼んでいいのは、我が家ではアタシだけ!」

「じゃあアタシはなんて呼べばいいのよ!」

「お兄ちゃんでいいじゃない!」

「でも年齢はアタシの方が1つ上なんだよ!正史くん、基礎解析って分かる?」

「何を突然、年上ぶってんの!」

井田は姉妹の会話に耐えられず、声を上げて笑ってしまった。

「ま、正史くん、まさか引いてない…?」

「だ、大丈夫だけど、もう2人の会話が面白すぎて…ハハハハハッ!」

「アタシは、いつもはおとなしいのよ。今夜はお姉ちゃんの彼が泊まってくれるから、丁寧に案内してるだけなのに。だって今夜、正史くんが穿いてるパンツ、どんなパンツかお姉ちゃん、知ってるの?」

「ぱっ、パンツ?なんでアタシが、正史くんのパンツの柄を知ってるのよ!知るわけないでしょ!」

「ほら。先に怒るのはいつもお姉ちゃんなんだから。悪いけどアタシ、正史くんの穿いてるパンツの柄、知ってるんだから」

「なんでよ!いつの間に正史くんの着替えを覗いたの?裕子のエッチ!」

「勘違いしないでよ!アタシ、お母さんに頼まれてコンビニに正史くんの下着を買いに行ったんだよ?パジャマはまだいいけど、下着はお兄ちゃんのを貸すのはちょっと気が引けるわね~ってお母さんが言うから、じゃあアタシがコンビニで買ってくるよ、ってなっただけの話。その時お姉ちゃん、会話の場にいなかったでしょ?だからアタシが必然的に、今正史くんが穿いてるパンツはどんなパンツか分かるだけよ!」

井田は、だからシャツもパンツもまるで新品のようだと思ったんだ…と、シャワー後のことを思い出した。新品のよう、ではなく、新品そのものだったのか。
ついでに朝子のものらしきパンツにも触ってしまったことも思い出したが、それはまあ後でいいか。

「正史くんの下着を買うなら、アタシが彼女なんだから、アタシに言えばいいじゃない!もう、裕子もお母さんも!」

朝子はまだ気が収まらないようだ。

「えーっ?お姉ちゃん、お互いに下着を見せ合ったりするほどの関係にまで進んでるの?いや、妹は恐れ入りました、ハハァッ」

「誰がそんなことまで言ってるのよ。もう、裕子には敵わないわ」

井田は、まだ付き合う前に、ブラウスの隙間からブラジャーの色までは見えたことを思い出していたが、それは見せ合ったわけでは無い。さっきも朝子のパンツらしきものを触ったが、慌てて女性ものだと気付いて洗濯機に放り込んだから、色柄は覚えていない。

「ねえお姉ちゃん、アタシ明日、課題テストがあるんだよ。お姉ちゃんに付き合ってる暇はないんだよ」

「じゃあ早く勉強すればいいじゃない!正史くんをおもちゃみたいにして…まったく!」

N高校は明日、課題テストがあるという情報はなかったから、裕子は違う高校に通っているのだろう。

「裕子さんは、何高校に通ってるんですか?」

と井田は聞いてみた。

「アタシはN高校よりも1駅近い、H高校だよ」

「うわ、N高校より、偏差値がワンランク上じゃないですか。凄いなぁ」

「でもH高校は女の方が多くて、男子が少ないの。N高校にしとけば良かったなぁ」

「ちなみに何か部活は?」

「アタシは中学からずっとバレー部だよ。だから正史くんのことは、アタシもよく知ってるのだ!」

「中学校は一緒だから…。じゃあお姉ちゃんが主将だった時、2年生として俺の先輩の位置にいたってわけですね。うわー、頭が上がんないや」

「でも中学の時は、そんな目立つ選手じゃなかったし。今は人手不足?のお陰でレギュラーだけど。でも中学の男子バレー部の井田っていえば、ちょっと別格みたいな感じだったよ。アタシはそんな男子バレー部を眺めて、いい男いないかなって探してただけだし。なーんてね!じゃあおやすみ、お姉ちゃん、正史くん!」

そう言って裕子は、裕子の部屋へと入った。

井田と朝子がその場に残された。

「正史くん、あんな妹でごめんね。でも、アタシにはやっぱり可愛い妹なんだ…」

「だよね、きっと。言い争いを見てても、どこかで本気ではないというか、漫才のネタ的な言い争いというか…」

「本当にお互い腹が立ってたら、何も喋らないんだよ。無言姉妹になるの」

「へえ、それはちょっと怖いな…」

「ねえ、正史くん」

「ん?」

「まさか、もうお兄ちゃんの部屋に入って、すぐ寝ちゃったりは…」

「しないよ。せっかく泊まらせてもらったのに。お母さんと裕子さんを裏切らない程度に、もう少し夜を楽しもうよ」

「…うん、よかった!嬉しい…」

朝子は腕を絡ませて、お兄ちゃんの部屋ではなく、朝子の部屋へと井田を連れ込んだ。


第14章-2

「やっぱり女の子の部屋だね!甘ーい香りがするよ…」

「まあ、座って。今、下から何か飲み物持ってくるね」

朝子はそう言うと部屋を出て、パタパタと台所へ向かった。グルッと見回すと、体育会系な女なの、と言ってはいたものの、カーテンがピンクだったり、ベッドや布団も女の子の模様だ。壁には綺麗な制服とスカートが、ハンガーに掛けて吊るされている。雨に濡れた今日の制服は、また違うタイミングで洗濯するのであろう。

机の上もキッチリしていて、ここも女性ならではという感じだ。
ふと見たら、バレーボールでアタックを決めた瞬間の写真が、飾られていた。
思わず立ち上がって写真の入ったフォトフレームを手にしてみたら、中学3年生の時に、県大会ベスト4まで残った時の試合の写真だった。
それまでは女子バレー部は、県大会で1勝出来れば良い程度の弱小部だったのだが、朝子が主将になった途端、練習方法を見直し、話し合いを重ね、グングンとチームが強くなっていった。
今では常に県大会では優勝候補に名前が上がるほどに、朝子は女子バレー部を変えたのだ。

だからこそ、やる気満々でN高校の女子バレー部に入った時の事前の期待との落差は、悔しかったであろう。
最後にバレー部のユニフォームを盗まれ、やむなく高校の体育のブルマとセーラー服という恥ずかしい格好で公式戦に出さされて、追い出されたように退部した経験は、朝子から常に感じる、今に見ていろ、見返してやるという反骨心に繋がっているのだと、井田は思った。

朝子はその思いを常に忘れず、吹奏楽部で一生懸命頑張っているのだ。バレー部の県大会優勝に匹敵するのは、吹奏楽部では、コンクールでのゴールド金賞なのだろう。
まだ井田は吹奏楽部の年間の予定や目標を詳しく知らないため、とりあえず朝子に言われた、学園祭では文化祭の部で楽しい演奏のステージと、体育祭の部で華麗なマーチを演奏すること、これだけを目標に考えていた。

1つのフォトフレームから、ここまで発想を飛ばして見入ってしまうほど、この中3の時の朝子のアタックを決めた瞬間写真には、熱量があった。

「お待たせ~。何がいいか分からなかったから、オレンジジュースとカルピスを持ってきたよ。お菓子もクッキーを少し…って、正史くん、何見てるのー?恥ずかしいよ、中3の時の写真なんだから」

「いや、部屋を見回してたら、机の上にこのフォトフレームがあってさ。すごい熱量を感じたんだ。きっと朝子のこれまでの日々で、一番忘れられない写真?瞬間?そういうものなんじゃない?」

「恥ずかしいけど、そうなの。前の年まで精々2回戦までしか行けなかったのに、3年の時にベスト4まで残ってね。そこで力尽きちゃったけど、悔いはないんだ。頑張って頑張って、やっと辿り着いた景色、そこでアタシがアタックを決めることが出来て1本取れて…。またそんな瞬間を、プロのカメラマンが上手く撮ってるんだよね。だから、この写真は宝物なんだ。今は、夏の吹奏楽コンクールで、絶対今年こそゴールド金賞を取って、みんなで喜んでる写真が欲しいんだ」

「朝子には、最後のコンクールになるもんね。俺も必死に練習して、どんどん上手くなって、朝子を追い抜くくらいの存在になれるよう、頑張るよ!」

「そうそう!アタシが入部を希望した2年前、どの先輩が言ったか分かんないんだけど、『誰でも最初は初心者』って言葉、とてもいい言葉と思わない?だからアタシは、それまで全く畑違いだった吹奏楽の世界で、歯を食いしばって頑張れたの。この世界で、女子バレー部の連中を見返してやるんだ!ってね」

「だからこその、このフォトフレームなんだね」

「でも、ちょっと正史くんに見せるのは、恥ずかしいかな…」

「なんで?もう、しっかりと見入っちゃったけど」

「中3の時だから、髪の毛は男子か!ってくらい短いし、胸はないし、バレー部独特のユニフォーム、特にブルマが恥ずかしいし…」

「そっ、そんなこと気にしてたの?可愛いな、朝子は」

「もうっ!正史くんったら…」

朝子は井田に抱き着いてきた。お互いパジャマなので、結構薄着だから、朝子の胸が結構当たってくる。

「恥ずかしいから…キスして。ね、正史くん…」

「うん…」

床に座って抱き合ったまま、2人は唇を合わせた。だが今夜は、今までの唇を合わせるだけのキスでは止まらなかった。
朝子は少し口を開けると、井田の唇を舌先で舐めるような動きをした。

(な、なんか、テレビや映画のキスみたいな…)

井田は当惑したが、朝子が積極的なキスをしてくるのであれば…と、井田自身も唇を少し開けて、舌先で朝子の唇を突いてみた。

「あっ…ん…正史くん…」

朝子は唇をさっきよりも大胆に開くと、少し突き出ていた井田の舌に、自分の舌を絡めた。

(うわっ、大人のキスじゃん、これって…。こんなの見られたら…ヤバい…)

しかし井田も頭ではそう思っても、体は勝手で、朝子の舌と自分の舌を絡め合うような、今までとは違う、濃厚なキスを続けた。

(隣には裕子さんがいるのに。でもダメだ、体がいうことを聞かない…)

キスしながら、井田は朝子のパジャマのボタンを外そうとした。すると朝子はその井田の手を止め、自分からパジャマのボタンを外し始めた。

「ちょっと待ってね、正史くん…」

朝子はパジャマのボタンを全部外して、脱いだ。上半身はブラジャーだけの姿になった。井田はゴクリと唾を飲み込んだ。

「いいよ、正史くん。アタシはいつでも…。付き合い始めた時から、覚悟は出来てるから」

朝子はそう言いながら立ち上がると、パジャマのズボンも下げ始めた。

「ちょっ、朝子、そこまでは…」

「いいの。正史くん、アタシの下着姿、見てほしいの。だからシャワーの後、とっておきの下着にしたんだから」

完全に朝子はパジャマを脱ぎ、完全に下着だけの姿になった。白を基調とした上下お揃いの下着で、水玉模様が大きくなったり、小さくなったりして綺麗な紋様になっている。

(綺麗だ…)

素直に井田はそう思った。自分の姉の下着姿には何も感じなかったのに、朝子の下着姿を眺めていると、興奮が止まらない。パンツの部分が、男のように盛り上がっておらず、平らなのには、やはり男と女の違いを感じた。

「ね、正史くん…。アタシを抱いて。続きをしようよ」

「朝子、ちょっと待ってくれ」

「何?」

「隣…裕子さんに聞こえたらマズイだろ。俺の…というか、お兄ちゃんの部屋に移動しよう」

「そうだね…。そうしよっか」

井田がジュースとお菓子を持ち、朝子は脱いだパジャマを持って、下着姿のままでそっと廊下に出た。

シーンとしている。静寂を破らないよう、足音を殺して、お兄ちゃんの部屋に入る。

ドアをそっと開けて、2人が中に入ってからドアを静かに閉めた。驚いたことに、お兄ちゃんの部屋には鍵が付いていた。

「この部屋は鍵があるんだね」

「そうなの。お兄ちゃんが、大学受験の勉強に集中したいからって、付けたのが残ってるんだよ」

井田は初めてお邪魔したが、既にベッドの上には布団が敷いてあった。きっとお母さんが敷いて下さったのだろう。朝子が、静かに鍵を掛けた。

そしてベッドに2人は並んで腰掛けた。

「正史くん…大好き」

再び2人は抱き合い、キスをした。さっきのような、濃厚なキスだ。既に朝子は下着姿だから、ダイレクトにブラジャーに包まれた胸や、生の太ももが井田に押し付けられる。

(もしかして今夜、俺は初体験してしまうのか?朝子は経験があるのか?どうすればいいんだ?)

井田は朝子と抱き合い、濃厚なキスをしながら、頭の中では混乱していた。


<次回へ続く↓>










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ミエハル
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