見出し画像

【最近は、こんな感じ】クラフトビールと、役に立つこと。

上海で生活する女の子たちの日常って?
ファッション、メイク、食べもの、よく行くお店。あと、普段考えていること。悩んでいること。そして目標。
そんなあれこれを、同じ目線で聞いてみた。
@mie_shanghai

37 Vee

<Profile>
Vee(ヴィー)
生まれ年:1987年
出身:雲南省曲靖市
職業:ブルワリー『EGO』オーナー、カウンセラー
小紅書 @vee
Ins @vee_ego

雲南省の昆明市で、ブルワリー併設の
ビアバーを経営しているVeeさん。
彼女のクラフトビールはいま、
中国全土でファンを増やし中。
「週末、上海に行くね」というので、
会ってもらった。


――上海にはよく来るんですか?
Vee 1〜3か月に1回くらいかな。彼氏が上海にいるので(笑)。

――なるほど。上海はどんな街だと思いますか?
Vee いろんな国や地域の人がいるので包容力がある街。大好きな街です。

――Veeさんの出身地・曲靖はどんな街ですか?
Vee 気候が良くてのんびりしていて、生活するには中国でいちばんの場所。観光名所みたいなのはないけれど、農地に汚染がなく健康的な食材が採れるので、昆明の人が週末にご飯を食べに行く街でもあります。名物は発酵野菜と豚足を煮込んだ「酸菜猪脚」かな。

「酸菜猪脚」

――行ってみたい……。では、Veeさんが経営しているブルワリーについて教えてください。もともと北京の大学で心理学の勉強をしていたと聞きました。なぜクラフトビールを作ろうと?
Vee 始めたのは2016年です。きっかけは元彼でした(笑)。でもその元彼はすぐ辞めてしまって、その後は私一人で経営者としてやっています。もともと飲むのが好きだったし、昨年も国際的な賞(ワールド・ビア・アワードの銀賞)をいただけてしまったりで、そういうことがすごくうれしくて、今後もどんどんやっていきたいと思っています。

“クラフトビール業界ってそんな感じ”

――昆明に行ったとき、Veeさんのお店『EGO』で飲んだビールもすごくおいしかった。
Vee ありがとう(笑)。売りの一つは、たくさん飲んでも気分が悪くなったり頭が痛くならないこと。原料にはこだわっています。でも、ビールを作って売るってすごく大変。たとえばコーヒーだったら、豆一袋持ってくれば何杯も出せますが、ビールは20ℓ入りの樽を各地に運搬しないといけない。本当にコストがかかります。でも、損してても好きだから(笑)。クラフトビール業界の人って、おおらかで包容力があると思う。すごい赤字でも、ビアフェスタとかでみんなで集まって飲んじゃうと苦労を忘れてしまう。

――中国のクラフトビール業界ってどんな感じですか? すごく流行ってるイメージですが。
Vee 全然です。クラフトビールはまだマイナーな世界だと思います。儲けも出にくい。同じビールなのに青島に比べたら何倍も高いし、飲んでいる人も少数派ですよね。でも、業界内はみんなで助け合える雰囲気があります。あと、ブルワリーのオーナーにはいろいろな背景を持つ人、ボランティアなど公益活動に熱心な人も多い。世涛日(スタウトデー)って知ってます?

――知らないです……。
Vee デザイナーやカメラマンとしても活動しながら、国内外でさまざまな賞を受賞していたブルワー(ビール醸造者)がいたんですが、2年前に事故で亡くなってしまったんです。みんながすごく尊敬していたスタウトビールのブルワーだった。なので、その命日の6月15日を世涛日として、それぞれのブルワリーでスタウトビールの樽を一つ開ける日にしているんです。中国のクラフトビール業界って、そんな感じ。みんながお互いを想い合っている。

――Veeさんもカウンセラーとして活動していますよね。
Vee はい。昆明市内のカフェ『初星珈琲屋』で働く自閉症のバリスタの支援や職業訓練をしています。彼らのアート作品を紹介するイベントを企画したり、ご家族の相談にのったり。特に胡其文さんというバリスタの、篆刻のような表現の切り絵作品がすごくて。彼のお母さんも普段カフェにいっしょにいるんですが、明るくてすごくいい人。

『初星珈琲屋』(昆明市官渡区北京路241号)。昆明駅から北に延びる目貫通りに位置。コーヒーをテイクアウトして街を歩くのにもぴったり。

――で、LGBTのイベントも企画している。
Vee 昆明在住の外国人と共同で、『昆明PRIDE』っていう。雲南省では初だったんじゃないかな。でも、『上海PRIDE』も開催されなくなってしまったし、国内でこういうイベントを主催するのは難しくなってきてしまっているなと感じます。

“世界中の人においしいビールを”

――そして保護猫を5匹飼っている。
Vee はい。飼う人がいないというのでうちに来た猫たちです。

――それで全国各地のバーにビールを届けたり、海外のアワードに参加したり、ものすごく忙しいのでは……。
Vee 基本は、夜はバーで昼間はボランティアですけど。でも、私はいろんなことを同時にできるのかもしれません。ビールフェア(見本市)なども基本は一人で参加しています。クライアントも、チベット、ウイグル、内モンゴルまで広がってきていて。あとは、サーバーの修理とかも私がやっています。

上海市内のバー『Tap That』にて。中国全土にビール友達がいる。

――すごすぎる。
Vee でも、疲れて酔っ払ってわけわかんなくなっているときもあったりしますよ。路上で寝ているところを発見されることもよくあります(笑)。上海だと復興西路だったかな。あと、この前は連雲港のソフィテルホテルのなかで、フロア内をぐるぐる歩いていたことがあったそうです。私は記憶にないんですが(笑)。

――気をつけてください。では、今後やってみたいことはありますか?
Vee 国際的なアワードでもっと上の賞を目指したいです。エントリー費がすごく高いので、少しずつですけど。あとは、世界中の人が「おいしいよね」と言ってくれるビールを今後もずっと提供していくことです。
(取材日:2024年9月14日 撮影地:『Tap That』仙霞路店)


<彼女のお勧め>

『233商店』(上海市長寧区宣化路233号)
☆生ビールが種類豊富で安い。上海は“巻(競争が激しい)”ですぐ閉店してしまうビアバーが多いけど、ここは長く人気を得ている。

『Wine Store』(上海市徐匯区烏魯木斉南路57号)
☆ワインが安くて銘柄も豊富。オーナーのセレクトがいい。ビール、ウイスキーなども揃う。


text
萩原晶子
フリーライター。上海にて2007年頃よりガイドブック、ファッション誌、機内誌、ウェブなどの記事を手がけている。カルチャー誌『ketchup.』(上海と東京で販売)など。
ins:@hagiwara_akiko_
微博:Akiko06

photo
阿部ちづる
2006年にフォトグラファーとして独立。ファッション誌、ビューティー誌、週刊誌、写真誌等のグラビア、ポートレート写真を撮影。アイドルグループやグラビアモデルからのアーティスト写真撮影で指名されることも多く、女の子の新鮮な表情を切り取る。
佐々木希『ささきき』(集英社)、武田玲奈『Rena』(集英社)ほか多数。
ins:@chizuru0821
https://lov-able.com/photographer/chizuru-abe

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?