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偏見にとらわれず、良い人材を迎えたい。就職氷河期世代が活躍する企業の想い

「年齢を重ねてきたということは、人生経験が豊富ということですよ」。そう話すのは、松阪市で清掃用具のレンタル業などを営む谷口宗治さん。この企業では2年ほど前から、雇用対象年齢を引き上げ、40歳以上の人材も多く活躍しています。

年齢の数字が上がるほど難しくなると言われる就職活動。しかし、このように県内の企業の中には就職氷河期世代を積極的に受け入れている企業もあるのです。今回は年齢や性別、国籍等にとらわれず「良い人材」を受け入れようとする、谷口さんの考えや取り組みをお聞きしました。

幅広い層の人材を迎えることで、豊かな企業へと成長する

谷口さんの営む企業は県内に8つの事業所があり、清掃用具のレンタルだけでなく、福祉用具のレンタル・販売、家事代行サービスなどの暮らしにまつわるさまざまな事業を展開しています。大学や専門学校卒業の新卒を中心に採用していましたが、採用方法の変化をきっかけに応募が激減。改めて採用する人材について考えることになったそうです。

家庭用の清掃用具のレンタルを行っていることもあり、メインの顧客は30〜50代の主婦の方。「お客様と話の合う人を」という意図もあり、もともと事務職は40代以上の女性の方が多く働いているそう。

「10年前は女性の働き口が少なかったこともあって、面接時に『40歳過ぎてますけどいいですか』と謙遜される方もいたので『定年まで、まだ10年以上ある。ぜひ働いてください』と声をかけました。その方は定年まで勤めて卒業されましたが、『あの時社長にそう言われて、すごく勇気をもらいました』と言ってくれましたね」

ただ男性の営業については、給与や経験面などを考慮してなかなか採用できなかったそう。しかし採用環境の変化とともに、採用に踏み切ることに。

「年齢層を広げて面接を行った結果、この2年で就職氷河期世代の方に6名ほど入社していただきました。みなさん40〜50代ですが、しっかりと活躍していただいていますよ。特にある50代の方は私に会うたびに『いい会社に入社させてもらった』と言ってくれます。感謝の気持ちを持って仕事をされている方なので、私も周りの社員も気持ちよく一緒に働かせてもらっています」

その方は元々は飲食関係で働かれていたそう。「まったくちがう職種からのスタートでも大丈夫なのですか?」とお聞きすると、「仕事に対する意欲があれば大丈夫です」とのこと。

「うちでは『周囲をフォローできて一人前』と常に伝えています。成績よりも人間的に成長することが一番という考え方があるので、手を抜かず一生懸命であれば、周りもサポートしたくなる。頑張る人の成長を支える環境は自然とできているのかもしれません」

こちらの企業では、就職氷河期世代だけでなく、留学生の雇用も行っています。これも多様な人材の中から、良い人材を迎えたいという想いから。

「近辺の大学には200人ぐらい海外の留学生がいるそうですが、そのうちの1割ぐらいしか就職先がないと聞き、なんとかせんといかんと。やっぱりまだまだ外国人に対する偏見が大きいらしいんです。これからは障がいを持つ方の雇用にも取り組みたいと考えています」

さまざまなバックグラウンドを持つ方の雇用を積極的に行う理由の一つに「仕事の大切さを理解している方と働きたい」という想いがあるからだと谷口さんは言います。

「私たちもコロナ禍で『あたり前のように仕事ができる』大切さを改めて感じました。先ほどの50代の社員もそうですが、自由に仕事を選ぶことが難しい分、感謝の気持ちを持って仕事に取り組んでくれているように感じています。今ある仕事を大切に取り組む姿勢の人たちがいるだけで、会社の雰囲気はより良い方向へと変わりますから」

会社ありきではなく、人ありき

谷口さんの言葉を裏付けるように社内には、お客様からいただいた感謝の手紙やアンケートなどがいくつも壁に貼られています。「いつもありがとう」「助かっています」と書かれた言葉から、普段社員の方がお客様とどのように接しているかを感じることができます。

「私たちの行動指針のひとつに『ありがとうの言葉をたくさん集めましょう』という言葉があります。ありがとうを言われるにはどうすれば良いかと考えて行動することで仕事も充実しますし、何より感謝の言葉をいただくことでモチベーションも上がります。毎朝の朝礼でも、喜ばれた行動やいただいた言葉などをみんなで共有しています」

それは谷口さんの「会社は人ありき」だという考えから。

「私は会社のために人が働くんじゃなくて、人が活躍できるために会社があるっていう考え方です。なので私は今いる社員がどうやって輝けるのかを考える。社員のみんなは、どうやったらお客様がワクワクするか、自分が楽しく仕事をできるのかを考える。そうすれば自ずと売り上げは上がっていくものです」

自分自身も「もっと仕事を追求したい」「お客様に役立てることは何か」と意欲を持ち続け、現在はなんと、三重大学大学院の医学部に通っているという谷口さん。清掃用具のレンタルを行う中でアトピー性皮膚炎で悩むお客様にたくさん接し、もっと勉強して多くの知識を得たいと考えたそうです。

「大学院の受験をするために何十年もやっていない英語を学ぶなど、自分にとって新たな挑戦でした。出張の合間に勉強したりと本当に大変でしたが、年齢に関係なくチャレンジできることを証明したかったのかもしれません」

年齢も役職も関係なく、チャレンジし続ける。その姿勢に多くの社員の方が刺激をもらっているのかもしれません。こちらの企業のように、年齢や経歴だけではなく、その人自身の頑張りを見て、就職氷河期世代の再スタートを歓迎してくれる企業もあります。就職に対する可能性を広げるためにも、まずは就職氷河期世代のサポート機関やイベントなどに足を運んでみませんか。

▼就職氷河期世代のサポート機関・マイチャレ三重

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