『ためされた地方自治』ー原発の代理戦争にゆれた能登半島・珠洲市民の13年 を読んで
珠洲原発を止めてくれた皆さん!ありがとうございます
今年の正月に能登を襲った地震。その震源のすぐ近くの珠洲市高屋に関西電力、珠洲市寺家には中部電力が原発を作ろうとしていました。今回の地震の被害は揺れのみならず、津波、地盤隆起、流動化など様々な形での災害が起きました。また道路の崩壊なども多く発生し、孤立した集落もありました。今でもがれきの解体がなかなか進まず、復旧の遅れが指摘されています。もし珠洲原発が福島原発事故のような過酷事故を起こし、放射能が降り注いでいたらどうなっていたのか。避難どころか、被災者の救出さえままならなかったことが予想されます。
珠洲原発を反対してくれた皆さん!本当にありがとうございました。
改めてこの本で珠洲原発を反対運動で止めてくれた人たちの戦い、市長選挙の不正、選挙無効裁判とやり直し市長選挙、関電の闇の土地土地取引、それに巻き込まれ逮捕され有罪となった地元の大地主のことなどを読むと「原発=国策」のためならここまでやれるのかと呆れてしまいます。
『ためされた地方自治』 山秋真著 桂書房
この本は2007年5月30日に初版が出ました。2003年12月、珠洲原発計画の凍結を関西電力、中部電力、北陸電力の3社の社長が珠洲市長に申し入れた日から3年半経っての刊行でした。
その後、福島原発事故後の2011年8月に再販、今年正月の能登地震の後、2024年2月に再再販されました。
よみがえる珠洲原発反対運動の日々
7月2日の「能登と原発 院内集会」で山秋真さんのお話を聞き、この本を手に入れ、読み始めました。もう30年以上前の珠洲原発反対運動の日々が鮮やかに蘇ります。
(この集会のことは以下のnoteに書きました)
1993年4月 珠洲市長選 不正でやり直し
珠洲市に原発計画の話がきたのは1975年。
関電、中部電、北陸電の3社が珠洲市に計画凍結を申し入れたのは2003年12月。
1993年3月に原発反対の市長候補の選挙を応援するべく著者は珠洲市を訪れました。
4月18日の市長選挙の開票では票数が合わないという事態がおきます。投票総数が投票者数より多くなってしまったのです。食い違った票数も最初の16票から二転三転。原発反対の市民は選挙無効の裁判を提訴して、96年5月最高裁で選挙無効の判決が確定。7月にやり直し市長選挙になりました。
大地主と関電との土地闇取引が脱税事件へ
1999年10月に朝日新聞に、原発用地取得 ゼネコン介在」。1999年10月11日付の朝日新聞1面にスクープ記事が載りました。(以下のHPでこのスクープ記事を見ることができます)
横浜在住で珠洲市の大地主の医師の所得税法違反の裁判は、横浜地裁で行われました。著者はこの裁判を傍聴して、闇に潜んで表舞台には決して表れてこない関電とゼネコン、その間に介在する怪しげな土地ブローカー?の男たちの暗躍を暴き出していきます。この下りはミステリーみたいで面白いです。
医師は関電に土地を売ったと言えないから、借りたことにして、代金を申告しなかったがために「所得税法違反」に問われました。しかし違法な取引を持ちかけた怪しげなブローカーたちやゼネコン、大元の闇取引を画策した関電はなぜか罪に問われません。
「被告をこのようにさせた者の真の犯罪的行為には触れていない」
「力の強い大企業には甘く力の弱い個人には厳しいのか」
「『お上』のいうことを(中略)信じ込み(中略)自分は善い人のつもりなのに、無意識にそして結果的に巨悪に加担してしまう人間の姿。それは大多数の日本の住民に重なってみえる。その一人としての土屋勇造(*大地主の医師)だった」
上関原発の反対運動へ
この本は名作!です。お正月の能登地震がなければ、7月2日の院内集会がなければ、出会えなかったと思い、ぜひ多くのみなさんに読んでいただければと今回noteに書きました。
著者の山秋さんは、2011年3月11日には、山口県上関の田ノ浦にいたそうです。上関も長く中国電力が原発を作ろうとして反対運動が続いているところです。同じ著者の『原発をつくらせない人びと』に詳しいです。ぜひこちらもご覧ください!
奇しくも上関に、あの関電が中国電力と共同で中間貯蔵施設(使用済核燃料の置き場)を作ろうとしていることが昨年発表されました。