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『からまる毎日のほぐし方』 尾石晴|玉ねぎの皮をむいてみる

ああ、からまるからまる。

じゅうぶんに休息して栄養もしっかりとっているつもり。それなのに、肩は凝るし、頭も凝る。

この「コリ」は体の疲れ?
それとも…
頭の中で交差する、「からまり」によるもの?


そんなモヤモヤをじっくりとほぐしてくれる一冊に出逢いました。

『からまる毎日のほぐし方』
尾石晴

ミドルエイジという年代は、担っている複数の役割と、家族の都合と、加齢によるこれまでと違う自分、がミルフィーユのように重なり合って、人生を複雑にしていく。

「はじめに」より一部引用


タイトルに目が留まり、手に取ったこちらの本。

「からまる」「毎日」「ほぐす」のキーワードすべてに引き寄せられ、ページをめくる。


でも、“ミドルエイジ”向けなのかな……?

30代前半、アラサー。結婚、妊活、仕事。やりたいことも読みたい本もたくさんあるし、無理すれば夜更かしだってまだできてしまう年代。
けれど、20代に終わりを告げ、これからやってくるライフイベントのことを思うと現実的に、すこし億劫にもなる年頃でもある。


「仕事」「お金」「子ども・夫婦」「人づき合い」など、目次にはからまるエピソードがぎゅぎゅっと詰まっている。

どれもこれも気になって、レジに向かい
そのまま蔦屋書店のシェアラウンジで一気に読んだ。



30年と数年生きていると、人生において「選択」することがいかに重要かを実感する。

20代の頃のように勢いにまかせた行動はのちに痛い目を見るし、今ある時間をより深みのあるものにしようとすると、選ぶことに慎重にもなる。


一方で、「何かを選んだ」ことは「何かを選ばなかった」ことに他ならないわけで。仮にうまくいかなかったとき、「他の道を選べばどんな今があったのだろう」と、もう存在しない可能性に浸ってしまう、なんてことがある。


本書では、「選択」について

大人ほど、ポジティブに可能性を絞っていくこと、”あきらめる”が効果を発揮する年代なのだ。

「もしかしたらの可能性にからまる」より

と表現されている。



また、別のエッセイで。
著者が、いくつもの経験とキャリアをもつ50代の女性にインタビューをされた時のこと。


「どの肩書が一番自分のキャリアを表しているか」
という質問に、その女性は

「玉ねぎの皮って、むいていくとどんどん芯に近づくでしょう。キャリアってそんな感じで、歳を重ねるほど皮が増えていくのよ。それをむいていって、最後の芯に残っているものが自身が大事にしているキャリアの根源なのだと思う。…」

「何者なのかにからまる」より

と答えられた。


どんな料理にも万能な玉ねぎ。

食べられない茶色い皮をていねいにむいて、ようやく白い姿があらわれる。縦にすぱんと包丁を入れれば、中にはしっかりとした芯が見える。

たまには横にスライスしてみても面白い。断面には小さな宇宙が宿っているかのように、中心を取り巻く何枚もの層がみっちりと詰まっている。ぜんぶ無駄なんてないんだよ、と言いながら。

時を重ね、ひとつずつ経験を重ねてきたからこそ、立派な玉ねぎになる。コア(芯)の部分も、装い(皮)も含めて。すべてが自分なのだと。


つん、とする玉ねぎの香りは、人生のもどかしさを語る。

やがて、いろんな具材とからめて煮詰めて、ひとつの料理になる。

かつて”あきらめた”ことがスパイスや隠し味になったり、選択肢としてほり下げた知識が香りやコクとなり味をより濃厚なものにする。


何かをあきらめるとき
「手放しがたい」と思うのではなく、
「選択」をする前向きな行動を認めてあげること。

それがまた、
可能性を広げていくのだと、感じた。



著者 尾石さんは、いくつもの肩書きをもつ。
Voicyパーソナリティ、ヨガスタジオの経営、コスメブランドの開発、さらに16年間の外資系メーカーでの勤務経験など。

好奇心旺盛でアクティブな尾石さんのお人柄。
そして、膨大な読書量から得られた知識を、ご自身の経験に置き換えかみ砕きながら、読者にやさしく届けてくださる。


ミドルエイジはもちろん、アラサー世代にも響くヒントは盛りだくさん。

何にからまっているか分からなくてもいい。
エッセイを通して、ほぐされながら考えていくのもひとつの楽しみ方だ。



尾石さんの公式noteで、「あらすじ」が読めます♪
気になるかたはぜひ^^



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