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「ここで展示してみたい」という展示に呼ばれるための最低条件とは?

こんにちは。モンキーブレッドの翠川です。KATALOKoooという Webサービスをやっています。
実はもう一社、株式会社シロアナというのもやっていて、そちらで百貨店の売場ディレクション・展示の企画運営なんかもやっています。

突然ではありますが、この度、企画運営している展示が50回目の展示を迎えました。どこの企画かというとなんと、かの有名な世界の MUJI 。2011年10月からはじまった MUJI新宿併設 Cafe & Meal MUJI 新宿での展示を、全50回ディレクションしてきたのはかくいうこの私です。私がディレクションした作品たちは、無印良品各店で展示販売されていたりします。 …などと書くとまるで私がすごい人みたいですね。

すごいのは無印良品の株式会社良品計画と、特にセンスもない私のやる気を買って任せてくれた株式会社イデー(任せてもらった当時良品計画の子会社で、私は社員だった)と、純粋に全力で展示を展開してきてくれたアーティストの方々で、私はただ偶然そこに居合わせて、50回取り組んできたラッキーガール(一応まだ20代だったからガールと言わせて)です。偶然よありがとう。今もラッキーは続いていて、この展示については基本的に独立後も弊社シロアナを中心に進めさせてもらっています。

本当に、偶然に偶然が重なって、MUJI での展示をディレクションさせてもらえることになったのですが、ここ最近は、確実にこれまでとは違う流れを感じることが増え、驚くことがあります。

MUJI ほどの知名度のある場所で展示ともなると、展示告知をすると出展するアーティストは facebook などで話したことない元同級生とかから友達申請が来たりするそう。そして、同業の友人には、「どこで MUJI の展示企画してる人とつながったの?」「何を見て連絡が来るの?」などと聞かれるらしい。 この話ってけっこう、私にとっては衝撃的でした。

「何を見るの?」…? 作品でしょ!作品しかないだろ!

「どこでつながれるの?」…??? 展示だろ!展示しかないだろ!!!

しかも、自分もそういうところで展示したいのにと言ってくる人ほど、自分の作品発表や展示など積極的にしないタイプとのこと。「依頼されたら描けるんだけどなぁ〜」とかいうらしい。

…?つながれば何とでもなると思ってますか?
見せる作品はなくても?そんなわけないだろ!!!

取り乱してしまいました…。描けるけど描いてないって人、もったいなさすぎです。つながりがすべて、ではないですよ。何ならこの時代、もうつながってはいるかも…。

では実際どうやって、展示をしてもらえないかお声がけし、依頼をしているのでしょうか?

その答えは、実際、展示で作品を見て、です。このアーティストに展示を依頼したら、いいもの作ってきてくれるだろうか、この作品と同等以上の作品を展開してくれる、もしくはこれ以上の空間を生み出してくれるだろうか。見に来た誰かをワクワクさせられる展示を一緒に作れるかしら。そういう目で見て、会場と顧客層とあってる!いけるのでは!と思ったら声をかける、の一択です。

ギャラリーさんなどと違うのは、展示(販売)場所が店舗ないし飲食店なので、季節のモチベーションに合わせたり、その時期に多く来られるであろう客層に合わせた企画になるよう配慮してスケジュールをこちらで立て割り当てているということでしょうか(そもそもまたっく違うだろうが)。

展示をディレクションしている側からすると、実際の空間での展示は、保証のようなもの。この空間をつくれる保証がある上で、次はどうなるか、というのが一番わかりやすいです。できれば、作品はポートフォリオで見せてもらうより、ウェブサイトを教えてもらうより、展示を案内してもらって実際作品を感じさせてもらうのが一番。展示をする場所の知名度、自主企画か招待された企画かは私に至っては全く気にしないので、とにかく展示で発表している機会が重要です。やっぱり作品実物を見たい。

タイムラインを見ていて気になった展示には必ず行くので、展示の情報をSNSで発信することも積極的にすべきと思います。常にSNS上に情報があることはとても大切で、時に発信した情報をあなたのお友達がシェアしてくれて、届いて欲しい人の目に触れている、ということは頻繁に起きているかもしれません。共通の知人がシェアしていた情報が気になって展示にを見に行って、あとから声をかけたケースというのも実際これまでに多数あります。情報拡散はどう考えても必要不可欠。

すぐには展示ができない事情がある場合、SNS で気になったら次の展示で見にいってみようというリストに入るので、日々インスタなどで作品を紹介しておいてもらうのもとても助かります。「依頼されたら描ける」力をお持ちなら、描いて描いて、いつでも最新作を見せれるようにしておいてください。いい活動している人いないかなーとスカウト目的でアンテナを立てている私を含めた同業の人、わりと近くその辺にいるもの。確実に昔よりつながりやすくなっていると感じます。冒頭で、既につながっているかもと書いたのはそういう意味です。発信は大事。

でも何と言ってもその元になる展示、その根本にある渾身の作品を定期的に産み続けていることが一番重要です。

Life in Art では、フォトグラファーの展示も企画していますが、フォトグラファーはアーティストとはちょっと違って、写真自体が視点と思って作品を目にしているので、展示にかかわらず普段の作品やお仕事で撮られたものなど流れでしばらく見ていて、この人の企画見てみたいなと声をかけるタイミングを見計らっていたりもします。この場合も、とにかくアウトプットの更新がすべての肝になっています。

作品だけが、仕事も次の展示もつれてきてくれるって、既にわかってる人たちはわかっています。そういう人たちにとっては、作品を作り、発表し続けていて当たり前(私はそっち側の人とばかり常々仕事させてもらっているので、冒頭の取り乱し方になってしまいました)。作品を発表するから仕事が決まる、展示をするから展示が決まる。発表したいからするのか、次の展示を狙って発表するのかはどっちでもいい。作り続ける、生み出し続けている人は、次の何かに近づいていて、何も作っていない人は、ゼロから何も進んでいない、というだけのことです。

当たり前ですが、いいやつだから、仲良いから、とかもないですし、いい作品たち出してくれるのであれば、正直嫌なやつでもいいです(私はこういう考え方)。

政治的なつながりや、影響度、人気度、なども選考のポイントにはしません。卒業した学校も、過去の展示実績も実は見ていません(これは私の場合だけかもしれません…正式な文脈は正直わからないので…汗)。

選ぶ側として、とにかく展示だ作品だ!とわかっているのは、私も選ばれる側でもあるからです。何だろうがいい展示にならなければ、信用を失って仕事が来なくなるということと背中合わせの毎日。アウトプットが一番大事と肝に命じています。

ちゃんとアウトプットし続けている人だけが、選ばれる。とてもシンプルな理屈で成り立っています。取引より打算より、誠実にベストな選択でトライするしかない。すべてをすっ飛ばして解決してくれる魔法なんて、残念ながら今までなかった。私のディレクション作業の場合は、売上とかどれだけ話題になったかとか、そういう数字的結果も評価軸としてついてきます。

こっちだって間違ったら信頼と仕事をいつ失うかわからないわけですから、姑息な理由はおろか、自分のセンスを信じてなんとなく〜とかで選んでられないです。 そもそも私はセンスや知識は残念ながらほぼ持ち合わせておらず、売るという意味での顧客とのマッチング視点で判断できる、だけなのです。売場で得た顧客のニーズの把握力と、ある一定量を超えた作品数を見ていることが掛け合わせて企画できるようになっただけのこと。育ってくる過程でついたセンスとかないですから。ちーん。あ、でも、この作品超いい!って感動する力は持ってます。それだけでやってますね…。

ちなみに、こういう展示の企画をしていますとか、売場のディレクションをしていますというと、「(選んでもらうために)どんな作品を作ればいいですか?」という人にも出会います。

残念ながら、それには答えられないです。解を私が持ってない。何を見せたいか、何を表現したいかだけは、やはりアーティストが自分自身で見出してもらうしかないし、見出したものを判断するしかないんですよ…。

もう一つよくある質問、今描いたりつくることはじめたんだけど、(選ばれるようになるには)これからどうしたらいいですかね?というもの。

この質問も、そんな大事なことを人の意見に左右されたらいけないと思うのですが、強いて言えるなら、きちんとした学校や機関、製作所で、学びや経験を積むことしかないという考えです。学びや経験を時間をかけて重ねることで、浴びるように自然に得たセンスと並ぶものが手に入れられるかもと答える。これも、魔法なんてない。あるなら私がかかりたかった。

センスも技術もある、コネクションだけがないんだ、という方はとにかくアウトプットを見せてください。見てからなら一緒に考えることができるかもしれません。

みんな頑張ろう。頑張るよ、私も。私も良いものをもっと、多くの人に届けたい。 50回目の展示設営がおわり、明け方4時新宿でドクターペッパーを飲みながら誓いました。ディレクターというとかっこいいですけど、地道な仕事がほとんどです笑。

< MUJI 新宿の展示は、累計50回目の展示を迎えました。それを記念して、これまで参加いただいたアーティストのみなさんに協力いただいてアニバーサリー展示を企画しました。詳しくはこちら。>

最後に、
Life in Art は、もともと東日本大震災からはじまった企画です。311の震災がおきたとき、私はイデーで全社の販促担当をしていました。
元々店舗で店長をしているときに、商品の一つとしてアートが売れるのは単価も高いし売上としてありがたいと気づいた私。販売実績を積んでいき、アートの展示の話が持ち上がると積極的に手を挙げて展示の企画をするようになりました。同時に、作品が売れるということは作家にとっても売上以上の大きなバックがあると実感し、やりがいを強く感じるように。イデーはライフスタイルショップですが、「美意識のある暮らし」を提唱していたので、アートを生活に取り込んで、お客様の毎日がゆたかになるのが本当にうれしかった。その流れの中震災が起き、疲弊しているみんなの気持ちと、チャリティとして無報酬で活動するアーティストの皆さん、当時のイデーができることのことを考えたときに、オンラインショップでチャリティ企画としてアートを販売する企画を思いつきました。

被災者の方は、生活必需品すらままならない生活を送っている中でアートを売るというのは、一見矛盾していたかもしれません。でも、出来ることで前に進まなければいけないし、そういった殺伐とした環境だからこそ、アートが持つ効用をお客様に知って欲しい。アーティストにも一部チャリティで協力してもらい、アートの持つ力を発揮して欲しい。そして、それを被災者の方の支援にすることは、イデーの社会における企業としての価値を提供できると考えたのです。各所に無理を言って簡易版を立ちあげたのが2011年5月のことでした。

当時は私の周辺の作家を集めただけとも言われてましたが、「Life in Art Charity Special」という企画としてスタート。その秋に MUJI 新宿での展示を始める機会を当時良品計画とイデーの両社長でいらした金井政明さんからもらいました。その後「Life in Art」はイデーでの展示の主要テーマになっていき、今は MUJI での展示を長年企画しているディレクターということに繋がっていきました。

これは、私の願いや熱意を受け止めてくれる良品計画とイデー、一緒に展示と販売の一連のフローをこなしてくれているイデースタッフのみんな、カフェのスタッフさん、設営関係者のみんなあってのことです。

そして、私の至らないお声がけに全力で尽くしてくださってきたアーティストのみなさん、みなさんの活動に力をもらっているのは誰より私だと思います。無理な依頼や、お願いに協力してくれたり意見をくれたり、いつもありがとうございます。誰かの心を、毎日を、業界を、世界を、一緒に温めてききましょう! 

50回で8年半、いつまでこの場があるのかわからないけど、これからも引き続きよろしくお願いします。この記事を見ている、まだ出会っていないアーティストに51回目以降の展示でお会いできるように、何より楽しみにしています。

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