モノクロ画を自力で「映え」させた(当社比) 話
今でこそモノクロ画をクソほど描いているが、昔は苦手だった。
なぜなら「映え」させることが難しかったからだ。
さらにペン入れ苦手マンなので満足にペン入れができなかった。
ペンより筆の方がまだ思い通りに描けた気がする。
なので安彦良和氏に一方的に親近感を持った。
その頃は下書きよりショボいペン描きに半ば絶望しつつベタを入れたらマシになるかも?と淡い望みをかけるもまったくそんなことはなく。
ショボい絵はショボい、という現実に打ちのめされる日々だった。
どうやったら見映えする絵になるのか、憧れの絵師さんの絵を眺めても眺めてもわからない。
一体どんな秘密の描き方をしているのか。
一体何がそんなに違うのか。
今思えば特に最初はやっぱモノに対する観察眼がなかったよねーと思う。
結局、モノクロだけでそれなりに間が持つ程度に描けるようになった(あくまで当社比)のは、自分の絵に「漫画絵の法則ではない現実の陰影の法則」を適用するようになってからだった。
漫画絵だから、漫画絵の法則から手を離すのが怖かったのかもしれない。
その後少しずつだが油絵や鉛筆画のデッサンで理解した陰影の法則を、漫画絵モノクロ画にもそのまま適用するようになった。
まずは鉛筆画で漫画絵をデッサンの描き方で描いた。
それから色鉛筆のカラー画にその法則をそのまま適用してカラーの描き方も変わった。
その描き方を他のカラー画材でも適用するようになった。
その後デジタル画に移行するがペイントソフトの決定打が決まらなかった。
そして相変わらずペン入れが苦手だった。
そんなある日オンラインのブラウザ上で試せる謎のブラシエンジンのお絵描きサービスを触った。
普通じゃない線が引けた。
この時は、面白い気はするけど法則の掴めない謎のブラシエンジンがどう使えるのかすらわからないまま、ただ面白いと思った。
ただ、描けるサイズの制限やレイヤーなしなどもあり、それっきりになった。
さらにその後、無料お絵描きソフトのkritaに出会った。
kritaの多彩なブラシを端から試していたら、その中に例の謎のブラシエンジンによく似たブラシがあった。
以前のオンラインお絵描きサービスと同じく、最初はその不思議な描線がどういった法則で引けるのかが理解できていなかった。
が、いろいろ試すうちに立てた仮説に沿って描いてみたら、その仮説通りの線が引けた。
しかも、細い線から広いベタ塗りまでこの一本のブラシで効率よくできるのだ。
そこで、鉛筆のデッサン画で使用していた陰影の法則を、このkritaの謎ブラシで再現してみた。
ただしこのブラシで面塗りグラデーションはできないので、白黒二値で描く。
どのあたりの明るさを閾値にするかで陰影の大きさや形が変わる。
そしてkritaの謎ブラシをどう使えば思い通りの描線になるのか、その法則がわかってしまえば思い通りに陰影の大きさや形を変えることができる。
これは私にとってはひとつのエポックメイキングだった。
思い通りの陰影が、細い線からデカいベタ塗りまでチョーソクで描ける!
脳内ブラックボックスの劣化速度に負けずに描ける可能性が広がったのだ。
漫画絵の法則だけでは本当に間の持たないつまらない出来だったモノクロ画だが、「現実の陰影の法則」と「脳内ブラックボックスの劣化速度に追いつくほどに自分に合ったソフトウェアとブラシツール」のおかげで、前よりはマシなモノクロ画が描けるようになりましたとさ。
なので、krita開発陣には足を向けて寝られない私であった(だから、無料ソフトウェアだけど課金したんだよ!)
というわけで自分に合った道具はものすごく大事、という話。
どっとはらい。