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猿之助さんの出来事に衝撃&眞秀くん、堂々の初舞台
歌舞伎座の團菊祭、昼の部を観に行ったのは2週間ほど前。
今、振り返って記録しようと思っていたのですが、3日前の猿之助さんの自殺未遂騒動の報道は、あまりにも衝撃が大きかったのでした。
35歳のときに叔父からの依頼を受け、「猿之助」を継いだ亀治郎さん。順風満帆に見えた活躍ぶりを見せていただけに、驚きが隠せません。
一部では週刊誌報道を受けての行動だったようにも報じられていますが、死ななくてもいいのではないかと思うのです(それはご本人にしかわからないものなのでしょうが……)。その報道により、世間からの厳しい目が向けられることで70代のご両親への忍びなさからなのか、家族会議で話し合って決めたというようなことが報道されていますが……。
猿之助さんの演技力の確かさ
最近で猿之助さんを観たのは、昨年11月の市川團十郎襲名披露「勧進帳」の義経や、昨年4月の「天一坊大岡政談」の天一坊などいずれも重要な役をしっかり務めておられました。
舞台でもその存在感は大きく、これからの歌舞伎界を背負って立つ役者さんの一人であることを改めて実感させられたのは言うまでもありません。
コロナ禍で舞台が上演できなかったという経験もあり、公演中止による影響の大きさをよく知る役者であるからこそ、なぜ公演の最中にこのような選択をしてしまったのか――それだけが不思議でなりません。
「義経千本桜」の源九郎狐を演じるときのその身のこなしの軽さ。ほかの演目での女形も見事にこなし、立役と女形の両方をやってのける素晴らしい才能の持ち主だけに、いずれ舞台に復帰してほしいと願うばかりです。
眞秀くん、頑張る
初舞台となる尾上眞秀くん。
祝幕は、CHANELのサポートにより作成されたそうで、色鮮やかな円の模様が伝統的な刺繍の技法を用いて作られたのだとか。初日から1週間ほど経っているため、円の形も所々動きが出ていました。
初代尾上眞秀初舞台狂言「音菊眞秀若武者(おとにいきくまことのわかむしゃ)」では、眞秀くんは女童の格好で踊りを披露したあと、実は岩見重太郎という男子であることを明かすのでした。
闘いの場面では、それは愛嬌、頑張って舞台中を動き回ります。敵役が尾上松緑さんであるというのが、個人的にはツボです(悪役が多くないですか? 数年前、日本経済新聞のコラムを書かれていましたが普段から周囲に怖がられているとか、お顔のせいで)。
最後に、花道を豪快に引っ込み、会場は割れんばかりの拍手が起こっていました。
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2018年5月に観た「團菊祭五月大歌舞伎」の夜の部では、「弁天娘女男白波」で、寺嶋眞秀くん(当時)が丁稚役で出演したのを観ましたがあの頃から随分大きくなったものです。
團十郎「信長」はぴったり
「十二世市川團十郎十年祭」は、「若き日の信長」が上演されました。
文豪・大佛次郎が十一世市川團十郎のために書き下ろした作品で、十一世、十二世團十郎が大切にしてきた演目。父・十二世から教わったという現團十郎が信長を演じるのですが、この役は当たり役になりそうです。
当たり前とされることに対しての協調性のなさや荒々しさといった信長の「普通ではない」ところが團十郎に共通して見えます。
最も信用している平手中務政秀(中村梅玉)に理解してもらえずに死なれた悔しさと寂しさを吐露する場面は見どころです。
過去に、京都の演舞場で球を傘に載せて回す場面でうっかり落としてしまった海老蔵さん。お客さんのほうに向かって照れ笑いをしたあと、何事もなかったかのように舞台を続けていました。
團十郎襲名前の去年、最後の海老蔵で片岡仁左衛門さんとの共演した「仮名手本忠臣蔵」では、平右衛門を演じたのですが、仁左衛門さんの平右衛門を見慣れている分としてはあり得ない台詞回し。
芝居に調和せず、声も響かずといったところで、仁左衛門さんにも注意されたという記事を見たくらいですが、その記事では「これがリアル」と海老蔵さんが言ってのけたと書かれておりました。神経が太いのが今の團十郎さんの強みですね。
お世辞にも決して演技がうまいとは言えない團十郎さんだけに、今回の役柄は荒削りの若き信長という役が彼には合っている気がしました。
断然、團十郎さんに比べて何十倍も上手い猿之助さんだけに、個人的には、團十郎さんの過去の行いを思えば、猿之助さんが少しでも團十郎さんのような図太さを持っていたら、今回のようなことにはならずに済んだのではないかと思ってしまいます。