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ビートルズ初心者がマニアを黙らせるための最新ウンチク集

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『音で読み解くビートルズ史』のチェックポイント、それは全曲バイブルに書けなかった「ミックス違いから見えてくるビートルズ史」です。 ブラウザで読めば普通のマガジン、拙作アプリFo…
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2021年1月の記事一覧

18.Good Morning Good Morningでピッチ変更したのは雄鶏?雌鶏?

自分で気付いたアハ体験には感動しますが、『SGT. PEPPER』は評価の高いアルバムですので評論も多く、語り尽くされた印象があります。新発見は既に誰かも気付いているもので、多くの書評はどこかで聞いた話をまとめただけになりがちです。

とは言え、技術的に難しい分野や演奏面の話になると文字にされる事もなく、公知とはなっていないものの残っています。

そのひとつがStrawberry Fields F

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17.『SGT. PEPPER』で初めて行われたアルバム編集、ポールがそれより優先したものは?

So SGT. PEPPER took you by surprise
とジョンが歌った意図がコレだったら面白いのに、という偏見も込めてたまには緩い話題です。

1日に数曲を仕上げていたのは遥か昔、『SGT. PEPPER』はライブの予定も無くなって時間をタップリと使える様になった時期のアルバムです。
逆に1曲に数日をかける様になりますが、このために作曲者がプロデューサとなって最後まで仕上げるとい

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16.ジョンのベースにDIボックスを使った理由は?

機材、それはその分野専門のマニアもいるくらい複雑怪奇な世界です。ここでは難しい話は省略して、「良い音とは何か」という点だけ着目します。

「良い音」の対極は「ノイズ」になると思います(もちろん最後は話題をひっくり返しますが)。
ギターやベースを録音する場合、
・楽器をアンプに繋ぎ
・アンプの音をマイクで拾い
・マイクの音をコンソールに入力し
・コンソールからテープレコーダーへと経由して磁気テープに

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15.Strawberry Fields Foreverのステレオバージョンを作ったのは誰?

Living is easy with eyes closed
Misunderstanding all you see

全ての出来事は相対的なので、各自の立場で見え方は違います。遠くから眺めて誤解し合うのがネット社会と思うと妙に深い歌詞に思えてきます。

ある程度の年齢になると「実は真相はコレコレでした。」という情報が鬱陶しくなります。ジョンのファンですら平和を愛さないという不思議な叩き合う世

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14.REVOLVER にテープループを持ち込んだキッカケは?

普通でない聴き方が最も面白いのが第7作目となる『REVOLVER』です。
(以降の説明中の速度変更や逆再生はFoomon/LinerNotesがあると便利ですが一般的な音声ソフトでも加工できる処理ですので聴いてみる事をお勧めします)

ここでは様々なスタジオ技術を集結して独自のものに昇華させており、他者の追随を許さない領域へと入って行きます。
逆に言えば、コピーバンドを最も苦しめるアルバム、普通に

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13.Girl の歌詞を仕上げる時にポールが引用した映画は?

曲作りはレノン/マッカートニーと呼ばれていたこともあって、作詞はジョン、作曲はポール、という作業分担だと語られていた時代がありました。

これは登録上の誤解で、ジョンの曲、ポールの曲、が正しいと論じられる時代が来ます。

その後、二人の発言が書籍化されて真相が明らかになります。実際には完成までに二人ともが関わっている曲が多くあります。各々が曲の原形を持ち寄って一緒に仕上げることが多かったようです。

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12.ジョンがメロトロンを入手するキッカケになった曲は? & RUBBER SOUL で使われたインド楽器は(シタール以外)?

『HELP!』を機に「ビートルズのキーボーディストはジョン」という印象が強くなります(実情とは必ずしも一致しません)。2月にはThe Night BeforeでVOX社コンチネンタル・ポータブルを(映画でも披露)、6月にはI'm Downでホナー社ピアネット(こちらはライブで披露)を使った事が主因となっています。

この動機は解明されていませんが、ジョンがキーボードに目覚めた時期であるのは確かなよ

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11.ジョンの人生で最も重要なギャラリーは?

「人生で最も」と書いた通りヨーコと出会った場所であるインディカ・ギャラリーなのは自明ですが、今までのビートルズ史ではほとんど触れられませんでした。
ジョンは64年のボブ・ディランとの出会いで作風に変化が表れますが(ジョン曰く、周囲の影響を受けることカメレオンの如し)、インディカではその後の詩作に大きな影響を与える2人と出会っています。

以下は音から独自分析したものではなく、ポールに関する伝記「M

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10.ちょっと不思議なドイツ語版、何て歌ってる?ついでにマック・ショー

邦題「抱きしめたい」に違和感を持っている人は多いと思います。ビートルズは「手を繋ぎたい」って歌っているだけなのに、しかもサビでは「触れたら幸せ」となっているので飛躍し過ぎじゃない?、と思うのが自然でしょう。

日本に限らず、英語圏以外の翻訳事情は面白いものがあります。
ドイツ語版もそのひとつ、いやSie Liebt DichとKomm, Gib Mir Deine Handがあるので2つです。

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9.映画「ヘルプ!」でマーティンが外されている理由は?

映画にはレコードとは違う制約がありました。その結果生まれたのがHelp!のモノと(オリジナル)ステレオの相違でした。違いは以下を聴けば容易に理解できます。

Help!のモノ(左)とステレオ(右)
注:同期再生にはiOSアプリFoomonと2009版『MONO MASTERS』が必要です

以前は歌詞に登場する接続詞(andやbut)が違うと指摘されていましたが、本当のポイントはタンバリンの有無で

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8.ポールはボウイング奏法の先駆者になり損ねた男?

65年初頭、『HELP!』のレコーディングでジョージは「12弦ギター➕ボリュームペダル」という組み合わせでバイオリン奏法を始めています。
何故それを断言できるのかと言えばプロデューサのマーティンがこの時期の作業メモを自書『Playback』で公開しているからです。
注:前作のEight Days A Weekも怪しいですが、こちらはギター本体のボリュームコントロールと思われます。

このボリューム

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7.ポールのギターの先生は?

ポールは誰かに教えを乞うタイプではなく我流派である事を承知の上で、誰の影響が大きそうかと言えばJohn Mayall(ジョン・メイオール)になるのでしょう。
その辺りも含めた考察ですが、誰かの踏み台となるべくの情報ですので生半可な知識が含まれる点は割り引いて下さい。

先ず、ビートルズに見え隠れするクラプトンの影を感じたのはA Hard Day‘s NightやYou’re Going To Lo

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6.Can't Buy Me Loveでハイハットを足したのは誰と誰?

今から20年以上前、インターネット上にnewsグループがあった頃、モノバージョンにハイハットが足されている、と投稿したら失笑を買ってしまいました。

その後、故ジェフ・エメリック氏(以下、エメリックと記す)の回顧録によって「エンジニアだったノーマル・スミスによるハイハット追加」が公知の事実となり、その作業自体を疑う人はいなくなりました。

書籍『全曲バイブル』に提供した情報もこの時点(2009年当

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5.A Hard Day's Nightの間奏は誰のアイデア?

初の主演映画の主題歌となったA Hard Day's Nightには多くの逸話があります。ジョンが一晩で書き上げた、イントロとエンディングは映画監督リチャード・レスターのリクエスト、パーカッションはエンジニアのノーマン・スミスが演奏した等、関係者の総力戦だった様子を窺わせます。
その中でも有名なのが、間奏は録音する時にテープ速度を半分に落としたというものです。これ自体が面白い事実なので伝記作家の究

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