17.『SGT. PEPPER』で初めて行われたアルバム編集、ポールがそれより優先したものは?
So SGT. PEPPER took you by surprise
とジョンが歌った意図がコレだったら面白いのに、という偏見も込めてたまには緩い話題です。
1日に数曲を仕上げていたのは遥か昔、『SGT. PEPPER』はライブの予定も無くなって時間をタップリと使える様になった時期のアルバムです。
逆に1曲に数日をかける様になりますが、このために作曲者がプロデューサとなって最後まで仕上げるという作業分担が自然と行われるようになりました。
ジョン、ポール、ジョージが並行して自作曲の面倒をみる傍らで、最初の録音しか用のないリンゴは待ち時間にチェスを覚えたという逸話もあります。
モノは録音直後に、ステレオは後でまとめて、という方針は依然として継続していました。そのため、モノとステレオの相違が最も大きいアルバムになっています。
また、ポールがWings以降に多用するアルバムのフォーマットはこの時に完成したとも言えます。
ここで長めのおさらいです。
今までのアルバムと言えば、ジョンとポールのボーカル曲を交互に並べる事やアルバムを閉める曲がポイントになっていました。
『PLEASE PLEASE ME』のTwist And Shout
『WITH THE BEATLES』のMoney (That's What I Want)
『A HARD DAY’S NIGHT』のI'll Be Back
『BEATLES FOR SALE』のEverybody's Trying to Be My Baby
『HELP!』のDizzy Miss Lizzy
『RUBBER SOUL』のRun for Your Life
『REVOLVER』のTomorrow Never Knows
ラストナンバーとしてI'll Be Backは異質ですが本当はLong Tall Sallyを使いたかったのかも知れません。
それはさておき、これらを念頭に『SGT. PEPPER』をみてみます。
カバー曲に頼っていたラストナンバーはそれらに引けを取らない、というよりも今までに類を見ない壮大なオリジナル曲となりました。
それ以外にも、メドレー、曲間を詰める、リプリーズを使う構成、A面とB面の終わり方など、様々なアイデアが盛り込まれました。
少し補足しておきますと、Being For The Benefit Of Mr. Kite!のエンディングはモノラルでは余韻無しでカットアウトします(その意味では近年のリミックスは失敗です)。A面が突然終わってしまう訳です。
一方で、B面は終わったと思っていたらインナー溝に音が刻まれていて永遠に終わりません。CDでは再現できないアルバムなのです。
なお、リプリーズを使う構成は(意図的かどうかは別にして)『WITH THE BEATLES』で既に登場します。
Not A Second Timeのエンディングのアドリブ・ボーカルはAll I've Got To Do’のメロディーを使って"not a second time"を歌詞としたものです。
アルバムの収録順がA面2曲目にAll I've Got To Do、B面ラストの直前がNot A Second Timeとなった結果、『SGT. PEPPER』によく似た構成となっています。
これらを念頭に『ABBEY ROAD』をみてみると、
突然終わるI Want You (She's So Heavy)
B面のメドレー
You Never Give Me Your MoneyとCarry That Weightのリプリーズ構成
B面の終わりを飾るThe Endと意表を突いたオマケのHer Majesty
とミニ『SGT. PEPPER』の様相になっています。
ようやく本題です。
これだけ特徴のあるアルバム編集ですが、作業が行われたのはWithin You Without Youが完了した67/4/6〜7です。
ポールはなんとレコーディング期間が継続していた4/3〜12にアメリカに行ってしまうのです。そして4/5はジェーン・アッシャーの誕生日、という事で理由は明白です。
So SGT. PEPPER took you by surprise
最後はみんなに任せたアルバムで自身が高評価を得る、とジョンは意味していたりして???
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