
最強のカスタマーサクセスには強固な組織基盤が不可欠。CS組織づくりの第一歩
はじめに
こんにちは。顧客体験のパーソナライズを実現するマーケティングSaaS「MicoCloud」を提供する、Micoworks株式会社でカスタマーサクセスの責任者をしております、安藤と申します。
本年4月にMicoworksにジョインするまで、日系飲料メーカーにて、顧客(オフライン)のビジネス成長支援部署、直近ではAmazonにて顧客(オンライン)のビジネス成長を支援する組織の立ち上げから責任者まで、カスタマーサクセス寄りのキャリアを歩んできました。
カスタマーサクセスはご存じの通り比較的新しい概念で、解釈によってはその活動がカスタマーサポートに近い受動的なアクションに留まってしまったり、Salesでの顧客獲得時との期待値ギャップが発生しChurnが発生してしまう等の課題が発生しがちです。
今回の記事ではそもそもSaaSにおけるカスタマーサクセスがなぜ必要なのかという点に立ち返りながら、上記に挙げた課題を発生させずにCX(顧客体験)の向上にコミットするための組織づくりについて「最強のカスタマーサクセス組織には強固な土台が不可欠である」と題してお伝えしていければと思います。
そもそもカスタマーサクセスとは?
Salesforceが提唱した『The Model』型の組織が10年ほど前からSaaS含めたサブスクリプション型モデルの普及とともに日本でも浸透し始め、現在多くのSaaSベンチャーが採用していると思います。その中でSales、Marketingと分けて定義されているのが、既存顧客の支援を目的としたカスタマーサクセス組織です。
「そもそもなぜ分けているのか?分けるべきなのか?」という点に関してはサブスクモデルという点が大きなポイントであり、ただ巷で流行っているからでは決してありません。
ここにはビジネスモデルのユニークさからくるポイントが4つあります。
①月額課金等のモデルにより「いかに長期的に取引いただくか(サービスを使い続けていただくか)」が重要=CX(顧客体験)の向上
②リリース後アップデートをしながらよりよいサービスやプロダクトになっていくという特徴
③そのためにより良いアップデートをしていくための顧客ニーズを、タイムリーかつ正確に把握することが重要
④アップデートされたサービス、プロダクトをしっかりと使いこなせるように顧客を支援していき、CX向上に繋げることが重要
これらをしっかりと満たしていく上で、従来のSales組織(新規顧客に売りながら既存顧客をフォローする)ではどうしても新規獲得の比重が重くなり機能しにくいので、別で組織としてゴール設定をしていくべきだという考えから生まれたのがカスタマーサクセスです。
理想的なカスタマーサクセス組織
上記からさらにブレイクダウンしたカスタマーサクセスの役割によく上げられる4つとして①オンボーディング、②アダプション、③エクスパンション(リニューアル)、④プロダクトフィードバックがあります。

このフローがしっかり機能すればよりプロダクトは良くなっていき、常に新しい付加価値を顧客に提供できることからサービス離脱も起きず、自然と事業がスケールしていくはずです。(理論上は。)
ということはカスタマーサクセスの組織づくりにおいては、このうちどこでCX棄損が起きているのかを把握し対策を打っていくことができるようになれば、理想的な組織になっていきます。
具体的にフローの各フェーズにおいてCX棄損が起きる実例の一部としては、以下のようなものがあります。
1.オンボーディング
・会社のオンボーディングプログラムと顧客のリテラシーが合っておらず、顧客からすると「よう分からへん」の状態になっている
2.アダプション
・顧客の求めるアウトプットと提供側のKPIがずれており、提供側が思っているほど効能を感じてもらえていない
3.エクスパンション(リニューアル)
・中長期でのロードマップを握れておらず、目の前の課題にのみアプローチしているため、「使い続ける」ことのメリットを顧客に理解してもらうことができていない
4.プロダクトフィードバック
・フィードバック内容の精査ができておらずインパクトの小さいものの開発ばかりが進み、長期的に顧客のビジネス課題解決につながるプロダクト開発ができていない
それでは「どのような組織文化づくり、メカニズムづくりをしながらこれらを解消していけばいいのか?」
このテーマについて私なりに考えていること、Micoworksで取り組んでいきたいこと、すでにスタートしている取り組みを紹介していきたいと思います。
・同じゴールを見据える
まず最初に必要だと感じるのはメンバーのマインドセットです。上記に挙げたことを各々が理解し、CS組織としての目指すべき姿を共有することでそれぞれの業務の意味を解釈することが最初のステップだと思っています。
当社ではオフラインでの方針説明とブレスト形式のディスカッションを通じて意識醸成や再確認を行いました。「同じゴールを見据える」ことが第一歩だと思っています。
また、うまくいっているのかの指標として従業員NPSを用いて、会社方針や組織課題の理解度を定量目標化しチェックする仕組みを3Qに走らせる予定をしています。
また、ここでのポイントは「いかにメッセージをSimplifyしておくか」です。伝えたいこと、組織課題はたくさんあると思いますが、抽象度と具体度のバランスを取って受け手に伝わりやすいメッセージングを意識すべきと思っています。


・課題を定量化する
顧客ニーズを正確にとらえ、そこにコミットしたサービスとプロダクトアップデートを提供し続けることで顧客にビジネス課題がある限りCXはいくらでも上げられることができます。そしてその結果としてリニューアル時のアップセルやクロスセルに至り、ARPAを上げていくことにつながります。
ARPAの上昇はSaaSビジネスの共通課題であるかと思いますが、現場レベルに落とし込んだ際のポイントとして留意しなければいけない点は「ARPAは結果としてのアウトプットである」という点です。この意識なく無理やり価格を上げてもお客様が離反していくだけですし、顧客の満足度にはマイナスしかありません。ARPAが一時的に上げられたとしても瞬間風速が上がるだけです。
この取り組みにおいて目指さなければいけないのは、上述の4つのCS活動を通じてCXを高めることで「自然とARPAが上がっていく」状態を作ることです。そしてそのためには顧客ニーズを属人性や定性情報に頼らずフラットに定量的に捉える仕組みが必要です。現在当社ではNPSのブラッシュアップを行い、仕組み化への取り組みを開始しています。
定量化された顧客ニーズは、
①エンゲージメント指標
②パフォーマンス指標
③エクスパンション指標
の大きく3つに分け定量化していく必要があると考えております。
①では現状のプロダクトを「使い倒す」上で障壁になっているものや業種業界の特殊性によるリミテーションが存在するのかを可視化し、②ではそもそも顧客の期待に届くパフォーマンスが出せているのかの確認及びパフォーマンス最大化のためのブロッカーを特定、③では現状では手が届いていない顧客のペインポイントや、サービス利用の長さなどにより、新たに出てきた顧客課題をキャッチできると考えています。
これにより現状のCS活動、プロダクトの課題を定量的に洗い出すことができ、よりメカニズム化された改善アクションに繋げられるようになることを目指しています。
・大きな石を入れる(重要課題に対してのアプローチを優先する)
「7つの習慣」の一つとして有名ではありますが、自身のタスクや週間の予定に目先の業務を先に入れてしまうと、本質的に必要な改善や成長機会の優先度が下がってしまい、いつまでたっても組織強化がなされない状況に陥ってしまいます。
CX改善に向けた本質的な取り組みを優先度を上げて実行していくために、現状は3Qの組織改善(上述スライドのCS大方針)に向けリーダー陣を中心に現状業務の棚卸及びそれらを、
①やめられないか
②効率化できないか
③誰かに引き継げないか
の3点で整理し、大きな石を入れるスペースづくりから取り組んでいます。
上記を習慣化した上で、部署会議や業務改善プロジェクトの中で「今入れるべき大きな石は何なのか?」という観点で定量化された顧客ニーズを元にアラインを取っていければ、おのずとより良いCS組織になるアクションが前に進んでいくことになります。
この取り組みを組織全体に今後広げていくことで、作業面の効率化や顧客提供価値の平準化を実現し、それにより確保されたリソースでCSメンバーがより深く顧客のニーズに踏み込み専門性を高められるようになります。
最終的にはメンバー自身の成長と組織の成長、そして顧客の成功という「Win-Win-Win」が実現できる環境を作っていきたいと考えています。
・全員が相互に学びあい続ける
上述した「Win-Win-Win」を作っていくには環境づくりはもちろんのこと、顧客ニーズに踏み込み課題解決をしていく能力開発が非常に重要になります。そしてそのネタは常に現場にあります。ビジネスの正解は無限にありますし、マネージャー、リーダーがそれを常に隣にいて教えていくことは現実的ではありません(そもそも間違っているかもしれない)。
その上で組織としてCSメンバーの能力開発をしていくには組織内で学びあいの文化形成をし、自律型でスキルアップを促していく必要があります。
多くの組織や企業で事例共有、勉強会などを実施しているかと思いますが、ここで意識したいのはアウトプットです。ふむふむいい話を聞いて分かった気になっている状態と、実際に手や頭を動かして成果が見れる状態でフィードバックをもらうとでは、学びに雲泥の差があります。
現在当社でも事例共有の機会創出を行っていますが、よりアウトプットにフォーカスした取り組みに変更し、インプット→アウトプット→フィードバック→アウトプットの流れを継続的に発生させ続ける仕組みを組織として作っていこうとしています。
終わりに
Micoworksのカスタマーサクセス組織もまだまだよちよち歩きの状態ですがメンバー各々がCSの魅力である「正面から顧客のビジネス課題に向き合いながら、成長していけること」を体現できる組織でありたいと考えています。
これからも土台が揺らいでいないかのチェックとともに、城造りのフェーズに移っていけるよう、一丸となって取り組んでいきたいと思っています。
今回は「土台づくり」にフォーカスして記事を書かせていただきましたが、次回はこれらの結果を踏まえ成功失敗共にシェアしていけるよう歩みを止めずによりよい組織をつくっていきます。
注目されている業務であるカスタマーサクセス、そして強い成長を遂げ続けている会社で自身を成長させていきたい方がこの記事を通じ、Micoworksでの仕事に関心を持っていただけたのであれば幸いです。
次のキャリアを考えている、または「まず話だけでも聞いてみたいよ」と思った方は、ぜひ一緒にお話しましょう。
共に成長し共に成功しましょう!