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星も色気も短冊も

 色気に欠いた七夕である。昨日と変わらずほぼ1日中文章を書く。集中力が途切れてきたら、食料の買い足しを兼ねて散歩に出る。

 通りすがりにある幼稚園ではついこの前まで笹の枝葉を配っていた。年少さんから年長さんまで、各クラスに割り当てた後の残りだろうか。
 せっかくなのでもらおうかと思ってやめたが、こんなに色気のない七夕になるくらいなら、たとえ緑1色だけでも添えておけば幾分マシだったのかもしれない。

 コンビニであまり暑苦しくなさそうにみえる菓子パンを買う。帰ったらさて何を書こうか。
 七夕といえば星空である。星をモチーフにした創作「星に願いを」シリーズ、できれば更新したかったのだが、あいにく今日はそれほど気力が残っていない。

 結果、わたしは “気怠げな男子高校生” を自分の中に憑依させ、こんな惰性に満ちたナニカを綴るにいたる。


 織姫と彦星が逢うのはどっちの夜のことだろう。7月7日の0時を過ぎた真夜中か、7月7日の24時に近づいたほうの真夜中か。

 そういや昨晩、わたしは珍しく前向きな夜更かしをした。何時に寝ても6時のアラーム5分前に目が覚めるほど朝には強いが、夜には弱い。だけど昨日(というより今日)は2時あたりまで起きていた。

純金製の欠乏感を左の耳にぶら下げて
芳香性の憂鬱感を纏ったら
抗菌性の停滞感を両手の爪に散りばめて
どうせ何も起きることのないこの夜に

「帝国少女」をずっとおともに聴きながら、もう七夕だな、と時折何となく思った。

 わたしも昔、保育園で先生にもらった短冊に願いを書いたことがある。何を夢見たか覚えていないが、たぶん幼少期特有の壮大な願いだったと思う。

 今だって別に願い事がないわけじゃない。ただその願いを叶えるために自ら行動できるくらいに、無力と無知をなくしてしまっただけだった。

「文章が上手くなりますように」と両の手指を重ねる前に、“文章 書き方 コツ” を調べてしまうから。
 パン屋さんになりたかったらまずはパン屋で働けば良いと知っているから。警察官になるにはとにかく公務員の試験を受けると分かっているから。

 ゆえにロマンチックに星に託せるほどの願いは、あいにく持ち合わせていない。


 レースのカーテン、窓のガラスの向こうに見える1羽のカラス。なぜだかいつも定点にとまる無彩な鳥が、年がら年中位置を変えない北極星のようだと思った。

 まったくもって、色気に欠いた七夕である。


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