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4月施行の「プラスチック資源循環促進法」について考えてみよう!【日経新聞2022.2.28朝刊より】

今日の日経新聞の中で、4月に施行される「プラスチック資源循環促進法」に絡め、「プラごみ削減 どう実現」という意見を専門家から聞いた記事が掲載されていましたので、共有したいと思います。

4人の専門家とは、スターバックスのCMO(最高マーケティング責任者)、全国スーパーマーケット協会副会長、廃棄物処理業社の社長、大学教授で、いろいろな観点の意見を知ることができました。


1.そもそも「プラスチック資源循環促進法」とは

1-1)この法律が作られた背景・目的

この法律が作られるに当たり、巡り巡って海へ流出した海洋プラスチック問題(マイクロプラスチックによる海洋生物の健康被害)、プラスチック製品の製造過程や廃棄焼却時に発生するCO2による気候変動の環境問題があります。

この法律の目的は、プラスチック製品の製造から廃棄までの資源循環を促し、廃棄量削減に向けての取り組みを推進することです。

1-2)法律の概要

年間250トン以上プラスチック廃棄物を排出する事業者に対し、どれくらいの量を減らすのか、再利用についての取り組みを目標として制定するように義務付けています。

また、削減対象となる12品目の特定プラスチック製品を年間5トン以上扱うコンビニやホテル等の事業者に対し、削減に向けた目標の制定と対策を講じることを義務付けています。

1-3)対象12品目

コンビニ等で使われる「1. フォーク」「2. スプーン」「3. ナイフ」「4. マドラー」「5. ストロー」の5品目。

ホテル等で使われる「6. 歯ブラシ」「7. シャワーキャップ」「8. くし」「9. ヘアブラシ」「10. カミソリ」の5品目。

その他、「11. ハンガー」「12. 衣類カバー」の2品目の計12品目が対象。

この法律施行により、2020年7月の容器包装リサイクル法の省令改正によるレジ袋有料化の導入で、私たちがマイバックを使うようになったのと同じように、私たちの暮らしにも変化が訪れると思われます。


2.日本経済新聞の「複眼」で専門家は、何を語ったのか

2-1)プラごみ削減 どう実現 消費者の「共感」が不可欠 スターバックスコーヒージャパンCMO 森井久恵氏【日本経済新聞(2022.1.18朝刊)】

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スターバックスは、環境施策に対する消費者からの「共感」を得ることを重要視しています。

「おいしい、楽しい、環境にもいい」と消費者に思ってもらい、一緒に環境への取り組みを進めることを勧めているそうです。

概要は、以下の通りです。

❶ビジネスの中核である農産物のコーヒーを持続的に供給するため、環境問題への対応は必至。

❷施策の一つとして、2030年までにCO2や廃棄物排出量を2019年の半減にする目標を設定。

❸施策として、「全ストローを紙製に切り替え」、「ストロー不要なカップ提供」、「繰り返し利用できる持ち帰りカップ販売」等を実施しプラスチック削減を推進。

❹一方的に「マグカップやタンブラーを使ってください」では消費者に伝わらないため、消費者からの共感を得る施策を合わせて実施。

❺例えば、飲み物の表面にいちごのチョコで満開の桜を表現した商品を2月に発売。蓋付き使い捨てカップではなく、模様の見えるマグカップで注文する人が増えることでプラスチック削減。

【コメント】
❺のお客様が意識することなく、プラスチックを削減する施策は、本当にいいなと思いました。

私もそうですが、プラスチック削減をしなければいけないと頭では思っていても、便利さに負けて、ついついプラスチックスプーン等を使い捨てしまいがちです。

私も前職の食品メーカーでも瓶製品に袋製品に切り替えることにより、パッケージのCO2削減を図りました。

その際には、お客様へのメリットもしっかり伝える広告を出しました。

瓶から袋にすることで、「買い物が軽くなる」「ゴミが少なくなる」等をアピールすることで、お客様に便利さを実感してもらいました。

実は、この環境対策でシェアを10%伸ばすことができました。

2-2)生活者目線で削減を説明 全国スーパーマーケット協会副会長 増井徳太郎氏【日本経済新聞(2022.1.18朝刊)】

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スーパーマーケットでは、お客様に何のために使い捨てスプーンやストローを減らすのかを伝えきれていないことに不安を感じているようです。

概要は、以下の通りです。

❶協会会員への調査では、1カ月後の新法への対応が決まっているのは半分ほど。その多くは大手。

❷生分解性や木製など代替素材に切り替えるとコスト高になるため対応が困難。

❸丼物に付けて提供するスプーンやセルフレジ横で取ってもらっている使い捨てプラの取り扱いに懸念を感じている。

❹外した時に、顧客からのクレームに対応するパート社員は精神的な苦痛。

❺何のために使い捨てスプーンやストローを減らすのか、新法の趣旨が消費者に十分に伝わっていない。

❻国にはもっと暮らしに引きつけて新法の趣旨(気候変動の問題と私たちの日々の買い物の関係)を説明してもらいたい。

❼顧客の理解のないまま取り組んでも環境への意識は高まらない。

【コメント】
❼の顧客の理解のないままでは、環境への意識は高まらないというのは納得しますが、国の努力だけでなく、スーパーでの努力も必要かなと感じました。

パート・アルバイト採用難による時給上昇、原油・原材料高による食料品の値上げへの対応に加え、使い捨てプラスチック削減への対応を行わなければならない事情は分かります。

しかしながら、こういう状況でも環境問題に真摯な姿勢で取り組むスーパーマーケットが、今後、生き残っていくのではないかと思いました。

2-3)廃棄物情報の見える化を ナカダイ社長 中台澄之氏【日本経済新聞(2022.1.18朝刊)】

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本記事の中では、廃棄物処理業者 ナカダイ社長の「分ければ資源、混ぜればごみ。情報がサーキュラーエコノミーを実現する上でいかに重要かを示したい」という言葉は非常に重いと感じました。

概要は以下の通りです。

❶新法はプラごみ削減に向けた機運を高め、「ごみは無料で捨て放題という時代は終わり」というメッセージも込められている。

❷サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行に必要なのは「地球環境との共存」と「ビジネスの成長」の両立。

❸優れた技術と分別で日本式の循環システムを作り上げ、海外へ横展開するため、業界の枠を超えた連携が必要。

❹連携のため欠かせないのが廃棄物情報。同じポリプロピレンだと分かれば自動車のバンパーと日用品の容器を合わせ、バケツではなく、もっと高度な資源化が可能。

❺今は企業が製品の情報が漏れるのを恐れ、情報がなく分別すらできない。

❻そこで情報公開に理解を示してくれる企業を集めて循環ビジネス構築のプロジェクトを立ち上げた。

【コメント】
新法が施行されるに際し、新たなビジネスを考えて進めているところが凄いと思いました。

記事でも書かれている通り、リサイクルするためには、分別が大前提です。分別さえできれば、リサイクルが可能なものはいっぱいあります。

例えば、ヨーロッパではプラスチックを「ポリプロピレン」「PET」「高密度ポリエチレン」「低密度ポリエチレン」等に分別して廃棄しています。

イギリスでは、「ポリプロピレン」のリサイクル容器を使った食品が出回っていました。

その辺りは、まだまだ日本は遅れていると感じます。

是非、このナカダイの活動が、新たな技術を生み、海外に輸出するまでになることを期待したいと思いました。

2-4)リサイクルより使わない 東京農工大学教授 高田秀重氏【日本経済新聞(2022.1.18朝刊)】

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概要は、以下の通りです。

❶新法では、スプーンやヘアブラシ等が規制を受けるが、効果は限られ、スケープゴートにされているのでは。

❷ペットボトルもリサイクルを推進するだけでは、大量に使い続けるのは変わらず不十分。

❸砕かれて微細な粒子状になったマイクロプラスチックの人体への影響も懸念。使わない方向が望ましい。

❹カーボン・ニュートラルの点からも、エネルギー消費を伴うリサイクルには問題あり。ペットボトル1本をリサイクルして使うのに、ルームエアコン1台を30分運転した場合と同程度のCO2が発生。

❺代替策としてバイオマス由来プラスチックへの転換があるが、大規模な森林伐採につながらないよう、植林などの投資とセットで考えるべき。

❻生分解性プラスチックも、廃棄され海に出れば酸素が少ない海底などに分解されずに残ってしまう。

❼洗剤などは液体での流通が増え、環境に優しいからと詰め替えパックを使う人が多いが、それにもプラスチックは使われる。

❽物流も根本的に見直す必要があり、地域単位でモノを回せば簡素化でき、温暖化ガス排出も減らせる。

❾プラスチックの効果的な削減には、生産の仕組みから流通、社会のありようまで変えていかなければならない。

【コメント】
ひとことで言うと、「プラスチック」はライフサイクル全体を考えた場合、何かしら環境に害を与えるから、使用しない方がいいということです。

大学教授ならではの正論だと思いますが、是非❾の「生産の仕組み」「流通」「社会のありよう」を如何に変えていくかをもっと深掘りして欲しいと思いました。


3.まとめ

今回の「プラスチック資源循環促進法」の施行で、専門家が意見を述べることは、非常に重要だと思います。

その意見に対して、今後、どのように私たち自身、メーカー、外食産業、廃棄物業者等が、変化するかが必要だと思いました。

そのためには、ナカダイ社長が言われている通り、

「❸サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行に必要なのは「地球環境との共存」と「ビジネスの成長」の両立」

であると思います。

これは、私がいつも述べているCSV(共通価値の創造)に通じており、非常に頼もしく感じました。

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