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なぜ、電気自動車だとカーボンニュートラルになるのか?

最近、環境に関する投稿を行うようになって来ましたが、環境問題への対応は、刻刻と変化しており、私自身も素朴な疑問が数多く出てきています。

そういった素朴な疑問に関して、なぜ、そうなのかと言うことを自分なりに納得して、そのことを発信していきたいと考えました。

その第一弾が、カーボンニュートラルに関する素朴な疑問です。


1. 素朴な疑問

前回の投稿では、カーボンニュートラルとは、何かについてまとめ、説明しました(↓前回の投稿参照)。

ひとことで言うと、「カーボンニュートラル」とは、二酸化炭素等の「温室効果ガス」の排出量と吸収量を実質ゼロにすることを目指した取組みである。

そして、昨年、日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を掲げ、脱炭素の取り組みを産業界に求めています。

そんな中、最近、新聞紙上でも特に話題になっている電気自動車について考えてみました。

最近の論調では、ガソリン車がCO2排出に関しては、悪者扱いにされ、電気自動車がカーボンニュ―トラルの救世主的扱いを受けている印象がありますが、本当にそうだろうか。


2.自動車のライフサイクル

下の図は、自動車のライフサイクルの概要です。

簡単に説明すると「原料掘る」→「原料運ぶ」→「作る」→「運ぶ」→「使う」→「捨てる・リサイクル」ということになります。

そのライフサイクルの各プロセスで、CO2を排出しています。

この中で、ガソリン自動車と電気自動車のCO2排出は、実は「使う」部分だけだということです。

このライフサイクルの中では、「作る」のCO2発生量は、かなりの割合をしめていると思います。

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3.「使う」以外のCO2排出量

先程説明したライフサイクル(「原料掘る」→「原料運ぶ」→「作る」→「運ぶ」→「使う」→「捨てる・リサイクル」)でのCO2排出負荷を評価することを、ライフサイクルアセスメント(LCA=Life Cycle Assessment)と言います。

まだまだ、LCAの試算法が確立されていないようですが、電気自動車に搭載されるバッテリーは「作る」と「捨てる」でガソリン車よりも、多くのエネルギーを使うため、「使う」以外では、CO2排出量がどうやら多くなるようです。


4.「使う」のCO2排出量は、ガソリン車と電気自動車でどう違うのか

ガソリン車のガソリンは、石油から製造されるので、「使う」過程で、CO2が大量に発生するのは分かると思います。

一方、電気自動車の電気は、本当にカーボンニュートラルなのでしょうか。

それは、各国で使用している電気がどのように作られているかによって変わって来ます。

以前の投稿で使用したヨーロッパの電源構成に関する下のグラフを見て下さい。

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例えば、EU27カ国の電源は、CO2を排出する「石炭」「天然ガス」「石油」の合計が38%です。

それと比較すると、日本の場合、「石炭」「天然ガス」「石油」の合計が80%近くあります。

これは、どういうことを意味しているのでしょうか。

2019年の電源構成で考えると、日本はEUと比較して、電気自動車の場合、2倍近いCO2が排出されることになります。

即ち、電気自動車だとしても、その国の電源構成が「再生エネルギー」や「原子力」100%でないと、「使う」場合でも、カーボンニュートラルは達成できないということです。

特に日本は、EUと比較して、再生可能エネルギーの比率がまだまだ低いため、電気自動車にしたとしても、電源構成を大転換させない限り、カーボンニュートラルには、ほど遠い状況です。

さらには、工場で「作る」際にも電気を使用しますから、その段階にも電源構成が効いてきます。


5.豊田章男社長の苦悩

ここまで、電気自動車の外部環境が分って来て、初めて、昨年12月10日の文春オンラインの豊田章男社長の記事の意味が、よく理解できます。

トヨタはカーボンニュートラルへの対応として、EV(電気自動車)、ハイブリッド、FCV(水素と酸素で発電する燃料自動車)等も手掛けるフルラインナップメーカーとしての戦略を取っていました。

その前提には、
❶国内の全乗用車をEV(電気自動車)化した場合の必要電力量は、電力ピーク時での発電能力でもまかなえないという試算があること

❷EV(電気自動車)で使用する蓄電池の生産には多くの電力が必要で、その電力が今の日本のように火力発電由来の場合、生産時にかなりの二酸化炭素を排出すること

❸そのため、自動車を完全EV化すると、クリーンな電力の量も少なく、コストも高い日本での生産は難しく、必然的に海外に生産拠点を移すことになるとのこと

こういう状況の中で、12月14日に、トヨタは、レクサスを全タイプEV化目指すという一大発表がなされました。


6.まとめ

❶CO2排出に関して、ガソリン車が悪者扱いにされ、電気自動車がカーボンニュ―トラルの救世主的扱いを受けている印象がありますが、本当にそうだろうかという素朴な疑問を持ちました。

❷自動車のライフサイクルを考えると、ガソリン車と電気自動車では、「使う」部分では、確かに電気自動車はCO2排出量が少ないが、他のライフサイクルでは一概にそうとは言えないことが分りました。

❸また、電気自動車の「使う」部分をカーボンニュートラルにするには、各国の電源構成を「再生エネルギー」や「原子力」にシフトする必要があり、現時点の日本は、その点、EUに大幅に遅れを取っている。

❹トヨタは、完全EV化の弊害が大きいと見て、EV、ハイブリッド、FCV(水素と酸素で発電する燃料自動車)等も手掛けるフルラインナップメーカーとしての戦略を取っていましたが、自動車産業の状況を鑑み、レクサスを全タイプEV化目指す等の新たな戦略を打ち出しました。

今回の投稿では、カーボンニュートラルに関する素朴な疑問を掘り下げて行くと、日本の構造的問題が浮き出て来ました。

今後も環境問題を中心に素朴な疑問について、深掘りし、その結果を皆さんにお伝えしたいと考えています。




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