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駅そば(蕎麦)を外国の人に説明する

~日本ビジネスマンのお気に入りの軽食~
都会で働く日本人、特に男性がよく食べるものの一つに「駅そば」があります。駅そばとは、駅の小さな食堂で出される麺類のことです。また、食堂そのものを指すこともあります。一般的には「立ち食いそば」と呼ばれることが多いです。もともとは、長距離列車の停車時間や乗り換えの待ち時間を利用して駅の近くで出された麺類が駅そばとして食べられていました。やがて通勤客が駅で駅舎内のスタンドで蕎麦やうどんの簡単な朝食や昼食をとるようになったのが現在ある形での駅そばの起源です。

駅そばのスタンドでは、まず入り口近くの自動販売機で食券を購入します。もちろん、何を買うか(何を食べるか)はその時に決めます。売られているのは基本的に蕎麦かうどんです。これが基本的なメニューです。
この蕎麦やうどんに何も入っていない場合は、かけそば、かけうどんと呼ばれます。生卵やかき揚げ(細かく切った野菜などの具材にころもをつけて揚げたもの)などのトッピングもあります。かき揚げなどの天ぷらをのせたそばやうどんは、天ぷらそばや天ぷらうどんと呼ばれます。また、生卵をのせたそばやうどんは、月見そば、月見うどんと呼ばれます。生卵の黄身の部分をお月様に見立ててこのように呼ぶのです。
さて、食券を買ったらカウンターの空いている場所を探し見つかり次第そこに行き身体を押し込んであなたの場所を確保します。そして、おもむろに食券をカウンターに置きます。店員があなたの前に水の入ったコップを置いて、チケットを受け取ります。(カウンターにコップがいくつか入ったバスケットが置いてある場合もあり、その場合は自分でコップを取ってカウンターに置いてあるウォーターサーバーから水を入れます)二、三分するとあなたの目の前にカウンター内の料理人が勢いよくどんぶりに入った蕎麦を置いてくれます。同じくカウンターにたばで置いてある箸をとって、どんぶりを持ち上げて蕎麦をすすり、つゆを飲みましょう。いたって簡単でしよ。食べ終ったら「ごちそうさま」と一声かけてその場をささっと去りましょう。長居はしないように。

安い簡単な食べ物であると駅そばを侮ることなかれ。大抵はとても美味しいです。私の仕事の先輩であり昔から親しく付き合っている大塚氏は蕎麦について一家言あるそば通として職場の人に知られています。どこのそば屋が美味しいのかを尋ねると幾つか有名な老舗のそば屋を教えてくれます。彼自身もそういったそば屋をたびたび訪れるようです。
ある日、大塚氏と夜連れだって、仕事帰りにそば屋に行こうということになりました。そして大塚氏は私を街中の歴史を感じさせる立派なつくりのそば屋に案内してくれました。店に入りテーブルに着くと彼はおもむろにお酒の熱燗と畳いわしを二人分注文しました。畳いわしを肴に一時間ほど世間話をした後、いよいよこれから蕎麦を注文するのかなと思いきや、彼は伝票を取り上げて席を立ちレジで勘定をすませました。そして「ここは俺が払うから」と言いました。私は「あれ、蕎麦は食べないんですか」と尋ねると大塚氏は無言でにやっとして店の外に出てどんどん駅の方に向かいました。どっか途中に美味しいそば屋があるのかなと思いつつ後をついて行くとそういうことはなく駅に着きました。私は「ここからまた電車に乗って蕎麦を食べにいくのですか」と言うと大塚氏はまたにやっとして目で駅舎の横に出来ている人の列の方を示しました。そこは先日テレビでも紹介されていた家族三代に亘って切り盛りする駅そばの店でした。大塚氏曰く「ここで出来たての蕎麦にねぎを乗せ放題で食べるとそこそこ美味いよ。さっきの店ももちろん蕎麦は美味いけど、値段は5倍くらいだからな。ここは自分で払うしかないしね」
うーんなるほど。とにかく、温かいえき蕎麦を気楽に食べましょう。

(この文は日本の事物紹介web Picture Book of Japanに英文で掲載した内容を日本語訳し加筆訂正したものです)
参考:Picture book of Japan: The Picture Book of Japan - No.7 Ekisoba

そば屋のメニューを英語化したもの


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