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学級経営力 ~担任はどうやって子どもたちを統率しているのか~
日本という国は、どうやって国民を統一しているか分かりますか。統率の仕方には2種類あって、それが現代社会には混在しています。
まず一つは、法律などによる「外部の制度」です。法律を守らなかったら警察に捕まりますよね。だから法治国家に生きるぼくら日本人は、きちんと法律を守って過ごしています。
もう一つは、道徳や倫理といった「内部の制度」です。良いことをしたら称賛されるし、悪いことをしたら仲間外れにされてしまう。だからぼくたちは、法律を意識せずとも正しい言動を心がけるようになります。
歴史上の多くの国は、王政などの独裁国家が中心でした。そのころは、「外部の制度」からの圧力で国民を統一していました。しかしそこに民主主義の波がやってきて「内部の制度」の割合が増してきた。という時代の流れがあります。
ではこれを、学校・教室に置き換えて考えていきましょう。
前述した外部の制度は、ここでは「校則」や「クラスのきまり」に当たります。もしこれに違反したら先生から注意されるので、子どもたちは守ろうとする圧力がかかっていると言えるわけです。しかしながら、それは国で言うところの独裁国家と同じなので、それだけで統率している状態は好ましくないわけです。
そこで必要になってくるのが、子どもたちの道徳心や倫理観といった「内部の制度」を育むという教育です。実はここが民主主義の根幹であり、かつ学級経営における最重要ポイントだと個人的には思っています。
それと同時に、こうした子どもたちの道徳心や倫理観といった部分を育てることをおざなりにしている先生も一部いらっしゃるのではないか、と危惧しています。なぜなら、基本的には、校則やきまりといった外部の制度だけで子どもたちを統率した方がラクだからです。つまり「きまりだから守りなさい」だけで推し進めようとし、実際にそれでもクラスは回ることが多いのです。なぜなら、学校文化として「先生の言うことは絶対」という風潮がいまだにあって、それが子どもたちの「内部の制度」になっているのです。言い換えると「先生の言うことを聞くのが当たり前だよね」という道徳心や倫理観みたいなものが、教室の中で勝手に育ってくるのです。
ここまでの論を整理すると、国とか組織とか集団をまとめるためには「外部の制度」と「内部の制度」が2つとも必要で、教室に置き換えるとそれは以下のようになっています。
・外部の制度:校則やクラスのきまり
・内部の制度:道徳心や倫理観(※先生の言うことは絶対)
子どもたちの道徳心や倫理観を育てることはマストですが、それは決して「先生の言うことは絶対」ということではありません。言わずもがな、それは「自分たちにとって正しいか、正しくないか」や「自分たちにとって必要か、必要でないか」のように、主語が『自分』であるべきです。もし前述したような、主語が『先生』とか『学校』のような道徳心・倫理観のままでは、いつまで経っても自律的な学級には育たないでしょう。
最後に「じゃああんたはどうやってんのよ?」と言われそうなので、ぼく自身の実践を少しだけご紹介します。ぼくが子どもたちの道徳心や倫理観を育てるために意識していることは、『選択肢を与える』です。
授業であれば、今日の学習内容に対してどうアプローチするかをなるべく子どもたち自身に決めさせています。例えば「一人で静かに」やってもいいし「友だちと相談しながら」でもいいし、もちろん「先生に聞きに来る」でもいい。また、使うものも「教科書とノート」という基本的なものはもちろん、「プリント」が必要ならそれも準備して渡しますし、「タブレット端末」の使用もなるべく認めるようにしています。
このようにすると、最初はもうやりたい放題ですw 教室は騒がしくなるし、タブレットの音が気になるし、一斉指導ではないので、子どもたちは「なんでもやっていいんだ」と勘違いして、勉強に関係のないおしゃべりまで始めます。しかし、その都度ぼくは「それって、今の時間に本当に必要かな?」とか「このやり方で勉強して本当に分かったか、ちょっと説明してみて」のように、常に子どもたちの言動に対してフィードバックするよう心掛けます。すると、子どもたちも少しずつ分かってきて、集団の中で学ぶための規範意識が育ってくるのです。
最初から先生が「静かに勉強しなさい」というのと、子どもたちが自ら「静かに勉強しなきゃ」と思うのとでは、同じように静かに勉強しているように見えても、その中に育っている道徳心や倫理観は全然ちがいます。ぼくの肌感覚では最低でも1か月はかかりますが、学級経営ではとても必要なことだと思っており、意識して実践しているところです。
最後に補足をすると(#2回目の最後w)、ぼくは決して「校則やクラスのきまりのような外部の制度が不必要だ」と言っているのではありません。むしろそれは、集団をまとめるために必要不可欠なものであると考えています。ただし、そこに傾倒しすぎて内部の制度=子どもたちの道徳心や倫理観を育てるのを忘れてはダメだよね、と主張しているのです。要は、バランスの問題なんです。そして、学校やクラスの実態に応じてそのバランスは変わってくると思います。ぜひ先生方も、ご自身の学校・学級に置き換えて、どのようなバランスでいけばいいかを考えるきっかけにしてみてください。