残業代支給は「働き方改革」なのか?
2024.11.3に、このようなニュースが報道されていました。
SNSでは、この案に賛成をしている方が多い印象です。しかし、個人的には反対です。以下にその理由を整理してみたいと思います。
1.残業代支給=残業を認めること!?
現行の「教職調整額」とは、残業代ではありません。簡単に説明すると「教職員は残業は存在しないけど、その仕事の特殊性からたまーーに時間外労働(※超勤4項目)が発生するから、その部分も包括的に評価して、基本給に上乗せしとこうね」というものです。
(ちなみに文科省は、教職員の処遇改善のため基本給月額の4%から13%へ引き上げる方針を固めています)
ここから分かるように、現行法で「残業は存在しない」のです。
しかし、この制度が変わってしまうと「残業が存在する」ことになります。
むしろ、残業代が出ることで残業する理由ができたとさえ言えるでしょう。これは、働き方改革とは逆行しているのではないでしょうか??
また、残業代が発生することで「残業代が出てるんだから、5時過ぎても対応してよ」という社会的要求も少なからず出てくると予想されます。今は、現行法に基づいて残業は(超勤4項目以外では)存在しないので断ることができます。しかし、もし制度改正されればその論理も破綻していくことになり、なし崩し的に残業が発生する可能性があります。むしろ、残業代支給=残業を認めるという制度によって、管理職から残業を命令されることすらあり得るのです。これは、非常に危険だと考えています。
2.仕事ができる人ほど給与が低くなる
これはみなさんご承知の通りだと思いますが、仕事ができる人というのは「効率よく業務を進めることができる人」です。
Aさん:1時間で1つの仕事をこなせる会社員
Bさん:1時間で10の仕事をこなせる会社員
仮に上記のような会社員がいたとします。では、どちらが優秀ですか?もちろん「Bさん」です。だって、短時間でより多くの仕事をこなしているわけですから、それだけ仕事の効率や会社への貢献度が高いわけです。これは、共感してもらえることと思います。
A先生:1時間で1つの仕事をこなせる先生
B先生:1時間で10の仕事をこなせる先生
では、この場合はどうでしょう?
明らかに、パフォーマンス的にはB先生の方が優秀です。しかし、給与面に関して言えばA先生の方が評価されてしまうでしょう。なぜなら、効率が悪い分、A先生の方が残業が多い=残業代が支給される(給与が増える)からです。
残業代に関して言えば、一般企業もこのような体系がほとんどでしょう。しかし一般企業では、めっちゃ残業してるのに成果を出せないやつは、金食い虫なのですぐクビになります。今や日本トップ企業の『TOYOTA』ですら、2019年には「終身雇用は難しい」と言及しているくらいですから。なので、一般企業で仕事を効率よくこなす動機は、給与面以外にも存在しているのです。
一方、教職員は地方公務員なので、基本的にクビというのはありません。また、他業種のように成果を数値で評価するというのはほぼ不可能です。そのため、仕事の効率性を求めるという動機はむしろ減ります。
ぼくはほぼ毎日定時退勤していますが、それは効率よく仕事をこなしているからです。にもかかわらず、ぼくよりもダラダラと仕事している先生(残業が多い方)が給与が上がるわけですから、ちょっとバカらしくなりませんか?
3.管理職の動機とかないんじゃない?
この記事の中で「勤務時間を反映した賃金体系へ変え、管理職に過重労働を抑える動機が働くようにする狙い」という記述があります。が、これも疑問です。そもそも、この残業代は管理職の給与から天引きとかではないはずです。であれば、過重労働を抑える動機は、お金ではなく制度面になってくるはず。つまり「安全配慮義務」が課せられている中で、適切に働かせるということだと考えられます。そして、それは今も昔も変わっていません。もちろん、今回の改正でそれが変わることもあり得ません。よって、管理職の動機が残業代支給によって働くというのは、個人的には「ん?」となっています。
さいごに
働き方改革の目的とは「残業代支給」ではなく、「教職員が楽しく、正しく働ける職場環境の実現」です。
そもそも論ですが、こうした働き方改革の文脈で言われる上で、多くの方は「残業=悪」と考えているフシがあります。が、それは違います。語弊を恐れず個人的見解を言わせてもらうと、たとえ残業が月100時間あったとしても楽しく働けていれば働き方改革が実現していると言えます。逆に残業時間0でも、働くのが苦しかったら、それは働き方改革を実現したとは言えないのです。
この問題には、賛否両論あることは承知しています。ぜひ、批判も踏まえ、建設的なご意見をください。ぼくも学んでいきたいと思います。