『時間外勤務の回復措置』について
はじめに
ぼくたち教職公務員は、基本的に残業は認められていません。しかし、例外もあります。今回の記事では、法的根拠を踏まえて、残業が認められる場合と、その残業が発生した時の対応についてまとめています。ぜひご覧ください。
超勤4項目とは?
ぼくら教員は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」もとで、原則として時間外勤務を命じられることはないとされています。しかし、例外があります。それが超勤4項目です。以下、少し長いですが大事な法令なのでお読みください。
また、教員はこのように時間外勤務は原則認められていないにも関わらず、時間外勤務が発生することがあるため、その部分も包括的に評価するために『教職調整額』というものがあり、基本給に4%の上乗せがあります(※この学を引き上げるという議論もありますが、それは別の話題なので割愛します)。これを、残業代が支給されない代わりにしているという解釈でだいたい合っています。
教職調整額=残業OK、ではない!
さて、ここからが今日の本題です。
こうした法令をまちがって解釈する先生は非常に多いです。ぼくも勘違いされている先生をけっこう見るので、その際は「それは違いますよ」と説明することにしています。
よくあるのが「教職調整額(残業代のかわり)があるから、超勤4項目の場合は時間外勤務させてもしょうがいよね」とか「教職調整額があるから、時間外勤務の振替はしなくても問題ないよね」というな法的解釈です。
ただ、この解釈は全く違います。
カギとなるのは『時間外勤務の回復措置』というものです。そこで、まずは以下の文科省HPをご覧ください。
ここを読むと、まず「原則として、時間外勤務は命じないものとした上で~」とあります。つまり、教職調整額とか残業代の有無にかかわらず、時間外勤務を命じることは基本的にNGだということがはっきりと示されているのです。ここは絶対に押さえておいてください。もし仮に、管理職から「これは超勤4項目に該当するから、職務命令だよ」という超レアなお言葉をいただいたとしても、それは本当に緊急なのか、やむを得ない場合だったのかを検討することは、非常に意義のある事です。
そしてもう一つ。仮にやむを得ない場合だったとしても、原則禁止のはずの時間外勤務を命じて、その後の措置はどうするのか問題があります。それに対して「教職調整額があるから、そこで補填している」というのは、アウトとは言わないまでも、かなりグレーだと個人的には考えています。その根拠となるのが「時間外勤務の回復措置」という通達です。
上記を見ると、例えば「1、長時間の時間外勤務はさせないようにし、やむを得ず長時間の時間外勤務をさせた場合は、適切な配慮をするようにすること」とあります。これをどう解釈するのか、という問題です。
これをお読みの先生方は『長時間』というのはどのくらいの時間を指していると思いますか?30分くらいならセーフ?1時間以上からが長時間?おそらく、個人によって解釈に幅があると思います。そして、それでかまいません。要するに、数値が示されていない以上、これは「読み手の解釈に委ねている」と考えるのが自然です。この措置を講じる権限があるのは、市町村教育委員会だと思います。市教委がOKとすれば、ここから一律に「〇時間は回復措置を取ってね」や「学校裁量で取らせてね」という判断ができます。このあたりは自治体によって変わる可能性があるので、校長先生を通じて委員会に確認が必要だと思います。
しかし、いずれにしても権限のある方が「30分でも長時間だから回復措置を講じよう」と解釈してもいいし「1時間くらいなら短時間だから回復措置なんていらないでしょ」と解釈するのもアリだと思います。
ただし、その場合においても「3.時間外勤務を命ずる場合は(中略)その意向を十分尊重して行うようにすること」とあることから、管理職は関係職員に対して、上記のような解釈と回復措置の講じ方についてはしっかりと説明し、理解を得られるよう努力すべきだと考えます。
さいごに
まとめると、まず教育公務員は時間外勤務(残業)は基本的にNGで、例外的に超勤4項目に該当する場合での時間外勤務を命じる場合においても、管理職はその回復措置について適切な配慮や説明責任があるよ、ということです。
ただし、あくまでも上記したことは、法律をもとにぼく個人が解釈したことです。もしかしたら、どこかに穴があったり、間違ったりしているかもしれません。その際は、ぜひご指摘ください。ただ、こうした法律の知識と言うのは、間違いなくぼくら学校教員を守るための武器になります。
また、ぼくはこうした法律の知識を提供したり、個人・そしきでの働き方改革を推進したりするコミュニティ『定時退勤がちサロン』というものを運営しています。もし、こうした内容に興味があれば、ぜひぼくのXアカウント(こちら)までご連絡ください。