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シロツメクサが見たくなる

備忘録のような、短い読書感想文を投稿します。

大崎梢『クローバー・レイン』

※冒頭部分のネタバレを含みます。
これから読みそうな方はご留意ください。


主人公は大手出版社の文芸編集担当3年目(男性)。

物語は喫茶店でのワンシーンから始まります。
そこで相対すは、四十を過ぎた男性作家。三十代半ばに小説大賞を受賞したものの、その後にヒット作は出ていない。
彼より一回り近く年若い主人公は、「読んでほしい」と頼まれた原稿についてボツを言うために、彼と会っていました。

丁寧に作品の感想を述べ、残念ながら…という話をする。「手直しできれば手直ししたい」という作家の要望にも応えられない、出版できるレベルまで帆走できないと判断したのです。

一通り話し合った後、作家が述べたこの一言。

「雨は降らないけど、日は暮れたね」(p.8)

この表現に、物語の世界へ一気に引き込まれました。


◇◆◇

綺麗事だけではない、でも綺麗な物語。
心情を空模様にたとえたり、重ねたり。雨の表現が印象的な作品です。
シロツメクサの咲く、春が待ち遠しく感じました。


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