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落選46回の作家が投稿者の悩みに答える

 今回、ご縁ありまして、お友達の滝沢晴先生にヘルプを仰せつかりましたので、こちらのマシュマロに回答させていただきます。遅くなりまして申し訳ありません。


 まず、マロ主さんにとっては「お前だれやねん」状態かと思うので、北のプロフィールからお伝えします。

ペンネーム:北ミチノ
2012年くらいからBL小説の投稿を始める
2018年に小説投稿サイト主催の新人賞で大賞受賞、翌年2019年に書籍デビュー
その後、著書数冊刊行

 投稿していた期間は6年ほどで、その間、46回落選しています。ハッハッハ、すごいな。あとにも書きましたが、よく生き残ったな自分……という思いでいっぱいです。
 まあ、このように、古傷まみれの歴戦兵のような投稿歴を持つ北ですが、そこを見込んでくれた滝沢先生から、適任だろうということでヘルプの声がかかったわけです。しかしながら、かつての自分を思い返しながら書き綴ったせいか、回答がめちゃくちゃに長くなってしまいました。
 あくまで一個人の経験や観測にもとづく回答ですので、参考になりそうな部分だけ取り入れてくだされば幸いです。
 では、いくつかのブロックに分けてお答えしていきます。


◆書くのが楽しくない時は

 まず、楽しさを感じなくなっているなら、楽しくないことをいったん全部やめてみたらいいと思います。
 やめる、というか、少しお休みする、くらいの気持ちで、気軽にスリープモードに入ってもいいんじゃないでしょうか。投稿生活は長距離運転みたいなものなので、休息時間を設けないと、大事故に繋がってしまいますよ。
 勉強のため、と自分に言い聞かせて読書するのは、そりゃ疲れますよ。楽しくないことはどう頑張っても続かないし、楽しいと思って取り組まなければ、本当の意味で自分の血肉になることはないと思います。
 北は読書は娯楽として行うものだと思っておりますので、「今日はあまり本が読みたい気分じゃないんだよなあ」という時は、他のことをしています。映画やドラマやアニメを観たり、音楽を聴いたり、デザインの勉強をしたり(同人誌の表紙は自分でデザインしているので)、エアロバイクを漕いだり、家じゅうのカップを漂白したりしてスッキリしています(何だそれは)。意識してBLから離れることも、時には必要だと思います。
 たぶんいろいろ考えすぎて疲れているだけだと思うので、何か、自分が心からリラックスできることをしてみてください。そうしたらまた、「BL書いてみよっかな~」という気分も生まれてくると思います。


◆創作の動機や、エネルギーになるもの

 BLに限らず、プロの小説家の皆様も「実は漫画家になりたかった」という人は多いようなので、作家を目指したきっかけ云々はあまり気にしなくていいと思います。というか、個人的には、BLが好きならそれだけでいいじゃないか……という気持ちです。
 自分の中にある「好きなんだ」というささやかな気持ちを大切に育てることが、創作では大事になってくると思います。ぶっちゃけ、好きでなければやってられませんから。
 北などは「寄宿学校BLが好きなんだよ」という気持ちだけをブチ込んで書いた話がデビュー作になりましたので。まあ、大きく育てすぎて24万字もの長編になったわけですけども……。(普通の文庫本は11〜13万字)
 なので、「BLが好き」という気持ちがあれば、創作はできると思います。
 できれば、そこからもう一歩踏み込んで、どんなBLが好きなのか、どんなものに自分は萌えるのかを分析してみてほしいです。そしたら今度は、それを最大出力で表現するにはどうしたらいいか? 自分の萌えをどうやって書き表せば一番伝わるのか? を考えてみてください。
 たぶんマロ主さんには、小説を読む筋力、小説を書くための筋力が、まだ備わっていないんだと思います。だから、何をやっても苦痛なだけで、そのせいでいろいろつまらなくなっているだけのような気がします。
 なので今は、好きなものだけを目に入れておいてください。
 ファンタジーが好きならファンタジーを、歳下攻が好きなら歳下攻を、気の強いツンデレ美人受が好きなら気の強いツンデレ美人受を(これは北の好みですけども)、別にマンガでも全然いいので、とにかく片っ端から読みまくってください。そして読みながら、どこがどう面白かったのかメモしてみてください。どんなところで自分が萌えたのか、自分がぐっと惹き付けられたのはどこか、読んだあとで、その理由を考えて分析してみてください。「たくさん読む」のもいいんですが、「深く読む」「何度も読む」のも勉強になると思います。
 しかしおそらく、いろいろ読んでいくうちに「小説を書きたいのならたくさん小説を読まないとダメだ」と気づく日がくると思います。その時は観念して(?)小説を読んでみればいいので、今はとにかく、創作物にいろいろ触れてみることが第一歩かと思います。


◆アドバイスの取り入れ方

 アドバイスや批評が妙に頭に引っかかってしまって書き進められない問題は、皆さんけっこう経験していると思います。
 なので、アドバイスや批評は、書く前or書いている途中ではなく、書き終わって見直す時に思い出すといいです。
 これはあくまで北の場合なのですが、アドバイスや批評が本当の意味で実感できるのは、自分で一本仕上げたあとなんです。
 実際に身体を動かして書かない限りは、「ああ、こういうことだったのか」と、真の意味で実感することはないような気がしています。
 書く前からあれこれ書き方を取り入れようとしても、結局は頭でっかちになって終わるだけではないでしょうか。夕飯のメニューが決まっていないのにとりあえず目についた食材を買っても、使えなくてムダにしてしまうだけなのと同じで。
 なので、何か変だな? 上手くいかないな? と思った時にこそ、アドバイスを参考にしてみてください。
 また、アドバイスはまるっとそのまま参考にするのではなくて、ある程度取捨選択して取り入れた方がいいです。
 でないと、まとまってはいるけれど勢いがない、無難な一作に成り下がってしまうと思うので。


◆他人と比べてしまう問題

 もしかしたらこれが一番投稿者を悩ませているかもしれない問題ですよね、「他人の活躍と比べてモヤモヤ」。
 これについては……比べるな、のひと言に尽きるんですが、まあ、気になりますよね、周囲の華々しい活躍は。
 北は特に、6年間という長きにわたって投稿を続けていたので、その間ずっと、投稿仲間の皆様の好成績やデビューの報告を、指をくわえて端っこから眺めているだけでした。どうして自分は上に行けないんだろうと、結果発表のたびに冴えない自分の成績と比べて落ち込んでいました。
 ですが、そうやって結果を出している皆様と同じくらい、あっけなく消えていった皆様の姿もおおぜい目にしてきました。
 初投稿で受賞したものの、それがプレッシャーになってしまって次が続かなかった方。
 上位に入賞して担当編集者がついたのに、その方と合わなくて筆を折ってしまった方。
 せっかくデビューできたのにレーベルが潰れてしまった方。
 一、二冊本を出しただけで消息不明になった方。
 レビューで酷評されてメンタルを崩してしまった方。
「仕事が忙しくなったのでいったん創作をお休みします」と言って、そのまま帰って来なかった方。
 書きたいものがなくなった、モチベーションが保てなくなったと、創作力が枯渇してしまった方。
 または、一次創作より二次創作の方が面白くなってそっちに行ってしまった方や、親の介護、家族や自分の病気、出産・育児、ペットロス等の理由で創作から離れた方、あるいは、単純に飽きて辞めてしまった方、理由は分からないものの、ふと気づいた時にはお名前を見かけなくなってしまった方……。
 こうして振り返ってみると、今も活躍を続けている方よりも、まぼろしのように儚くかき消えてしまった方のほうが、ずっとずっと多いです。
 こうなると、なぜ北などが生き残ってデビューに漕ぎ着けられたのか不思議なくらいです。あの人も、あの人も、あれだけ面白いBL小説を書いていたのに、いったいどこに行ってしまったんだろう……と、茫漠たる荒野に独り取り残された気持ちでいます。
 皆様、今はどこでどうしていらっしゃいますでしょうか。元気でおられるのなら、それだけで充分なのですが。
 えーと……要するに何が言いたいかといいますと、栄光を得るのも挫折するのも紙一重というか、一寸先は闇というか、スポットライトが当たってもそれは一瞬だけのことだった――ということも充分あり得ると言いたかったのです。これはまあ、投稿者界隈に限らず、世の中でもよくある話ですけど。
 なので、マロ主さんが今、「いいなあ」と羨んでいる誰かが、今後もずっと同じペースで活躍を続けられるかは、本人にも誰にも分からないわけです。そもそも、マロ主さんだって電子書籍はリリースしているわけですから、もしかしたら、誰かから羨望の目で見られているかもしれませんよ。投稿者のことは投稿者が一番チェックしていますからね……(怖)
 とにかく、他人も周りも、状況は大きく変わっていくものです。その変化は、誰にも予測できません。
 だったら、周囲に振り回されることなく、マイペースに創作を続けていった方がずっといいと思いませんか?
 小説投稿はオリンピックと違って表彰台やメダルの数が限られているわけではないので、変に焦ることはないと思います。早くデビューした人が勝ちってものでもないし。
 いい作品を出せば必ず、誰かの目に止まる時がきます。これは本当です。目の前ですいっとあっちに行ってしまったスポットライトが、ある日いきなり自分の方を照らし始めた――というのは、ままあることです。
 大切なのは、書き続けること、です。
 そのための環境作りとメンタルケアに励むことが、一番力を注ぐべきところではないでしょうか。
 メンタルケアの方法については、最初に書いたとおりです。休むのって大事ですよ。
 今回、この文章を書くに当たって、投稿時代に付き合いがあった皆様のお顔や、結果発表ページでよく見かけていた方々のお名前が、北の眼裏に浮かんでは消えていきました。
 皆様が創作を辞めてしまったのは、仕方がないとはいえ、北にとっては寂しく、悔しく、やりきれないものでした。そして、自分もいつか〈そっち側〉に転落していくのではないかと、焦りや恐怖も感じていました。
〈そっち側〉に行かずにかろうじて踏みとどまれたのは……そうですね、自分でも必死で踏ん張っていたからというのもありますが、ただ、運や環境がよかっただけのような気もします。
 なので、投稿成績がふるわなくてメンタルがぐらついている方を見ると、「まずは自分の心を守ってほしい」と思います。人の心って、ダメになる時は本当に一瞬でぺしゃんこになりますので。そうなったあとで後悔しても、遅いです。創作意欲よりも大事なものを失うよりは、ましではありませんか?
 そして、恐ろしいことを言いますと……周囲と比べてモヤモヤしてしまうのは、デビューしてからも延々と続いていきます。
 映画化、ドラマ化、シリーズ化、コミカライズ、コラボカフェ、グッズ発売、サイン会、重版と、創作者の心を乱すタネはいくらでも存在する世の中です。知らない作家が美味そうなもん食ってたり旅行行ってたりするのをSNSで見ただけでも「チクショウ売れてやがる!」とか思い込むようになりますからね。滑稽ですよね、こうして文章で書くと。
 話が逸れました。そんなわけですので、周囲と自分を比べるのはほどほどにしましょう。
 周囲と比べて落ち込むのは、たぶんやめられないと思うので、ほどほど、というところで留めておいた方がいいです。絶対。
 周囲の活躍を見て「なにくそ!」と心を燃やせるのならいいのですが、異臭を放つ黒煙を吐き散らかすようになってはおしまいですので。
 繰り返しになりますが、書き続けていれば、ある時ふと、チャンスが飛び込んでくる日が訪れます。それは、マロ主さんが踏ん張り続けたからこそ、手の中に届けられたチャンスなんです。
 いつその日がきてもいいよう、どうか、自分のメンタルを整えながら創作に励んでください。
 周囲と自分を比べすぎることなく、黙々と自分の創作に集中していれば、きっといいものが書けるはずです。そうなれば、自分の夢を掴んだも同じだと思います。


 最後になりましたが、北はマロ主さんや、マロ主さん以外のすべての投稿者の創作活動を応援しています。疲れたらメシ食って湯船に浸かって寝てくださいね。北も頑張ります。

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