思想の尻尾~批評と誉め言葉~
「あなたを誇りに思う」「素晴らしい仕事をしてくれた」
上司からの言葉に勇気づけられたと隣人が喜んでいる。
多くの場合誉め言葉は元気をくれる。
言葉をかけてくれたのが大事な人であれば喜びもひとしおだ。
信頼関係が深まり、働く意欲も高まる。
いいことづくめのようだが
「素直に受け取ってよいのか」「下心があるのでは」
「媚びを売っているのかも」疑いが頭をもたげる。
どんな心から出た言葉か?
出自が肝心という訳だ。
上辺だけ「歯の浮くようなお世辞」という言い方もある。
心が籠っていないと信用されない。
ただ褒めるにはボーっとしていては出来ないだろう。
人の変化や美点を敏感に汲み取る努力が必要だ。
人間をよく観察し、相手の立場に立たないと
心に響くような誉め言葉を投げかけることが出来ない。
好きな物、愛情を持っている対象には
関心が強まり、自然と讃える言葉があふれる。
映画やドラマの考察をする『無限まやかし』というポッドキャストからは
取り上げる作品への愛や思い入れ、つくった人の
こんな点が凄いという気づきが溢れてくる。
ホストが作家クリエイターだから
同業者の苦労も違いも分かるのだろう。
心からの誉め言葉を聞いていると気持ちがよくなる。
小林秀雄さんが批評について書いていたことを思いだした。
批評家としての心得を後進に尋ねられ仕事を振り返った時
「批評文としてよく書かれているものは、皆他人への讃辞であって、
他人への悪口で文を成したものは無い事に、はっきり気付く」
「批評とは人をほめる特殊の技術だ」(『考えるヒント1』参照)
批難中傷の刃で幸せになる人はない。
俗な表現になってしまうけど愛を伝える言葉で溢れた世界は
どんなに晴れ晴れと生きやすいだろうと妄想した。
まず今日隣にいる人に讃辞を送ってみよう。
2024年9月5日 捕まえた尻尾