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名取 道治 Michihari NATORI
2021年3月26日 21:05
幸福というものはたわいなくっていいものだ ――草野心平 暮れ方に、山の音。 蛙はうすめをひらき、風にたなびく水田をうつし、「……おれは風かもしれない。ちょっと、周りを揺すって、それでおしまい……。なあんの意味もない。そうさ、そうさ、おれは風だ。ああ、おれは風なんだ」 ふわあっと、蛙は大きな口をあけました。緑いろの顔に、青いろの隈。すいみん不足でした。きのう、月にみとれていたのです。蛙