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『プラーナーヤーマと瞑想』
●プラーナーヤーマ(pranayama)という言葉の語源と意味
プラーナーヤーマ(pranayama)は、サンスクリット語のプラーナ(prana)とアーヤーマ(ayama)という二つの言葉からできている。
【プラーナ(prana)の言葉の意味】
生命エネルギー。
プラーナは素のエネルギーであり、すべての知識の源、すべての活動の原動力。宇宙全体とその引力はプラーナに従って作用しており、又、プラーナは宇宙の基礎を構成していて、熱、光、重力、磁気、活力、力、活力、電気、生命と精神など、宇宙で振動するものは全てプラーナの形態であり、プラーナは生命に浸透し、太陽、月、雲、風、雨、地球、そして物質のすべての形態を創造し、精神的、肉体的、性的、知的、あらゆるタイプのエネルギーの基本となるものでもあると言われ、”生命力" "エネルギー" "生命原理" などを包括した意味を持っている。
【アーヤーマ(ayama)の言葉の意味】
拡張する、留める、停止、という意味。
【プラーナーヤーマ(pranayama)の意味】
したがって直訳すると、プラーナーヤーマ(pranayama)は「生命エネルギーを拡張する」という言葉の意味を持っているといえる。
●プラーナーヤーマとはどういう練習なのか?
現代においては複数の視点からプラーナーヤーマについて考察ができます。細かい説明は省略しますが、例えば『ヨーガ・スートラ』(2元論的な考え方を持つサーンキャ哲学がバックグラウンドにある)、『ハタ・ヨガ・プラディーピカー』(1元論的な考え方を持つタントラがバックグラウンドにある)、現代の西洋医学的な視点、これらバックグラウンドの異なる3つの視点から見てわかることは、
プラーナーヤーマとは単に呼吸の仕方を学ぶことではなく、
・プラーナという生命エネルギーを体に蓄え、活用する方法
・心を落ち着かせニュートラルにする方法
・自律神経、脳、内臓、体液などの働きのバランスを整える方法
を、呼吸を通して複合的に学ぶこと言えます。
●プラーナーヤーマで心がけてほしいこと
呼吸をコントロールし、練習の質感を大事にする事がとても大事になってきます。
1.心地良さを大事にする。
「心地良さ」を大事にして、自分にあった強度に練習を調整する。
息が苦しい、心が辛いといった状態を感じたら我慢しすぎないようにする。
2.呼吸へ向けた意識の継続性
吸い始めから吸い切るところまで意識を届ける。
吐き始めから吐き切るところまで意識を届ける。
つまり、呼吸へ意識を届け続ける。
3. 呼吸は繊細に取り扱う。
呼吸が荒くなりすぎないように優しく取り扱う。敢えて音を出していくプラーナーヤーマもあるが基本的に呼吸音は出来るだけ小さくしていく。
●プラーナーヤーマの練習が終わった後の確認
・頭がクラクラしたりしていないか
・呼吸の心拍数が早くなり過ぎていないか
・心がハイテンションになりすぎたり、反対に気持ちが落ち込む感覚になったり、ザワザワした状態になっていないか
もしこれらのような状態を感じていたら、「●プラーナーヤーマで心がけてほしいこと」で挙げた3点のどれかが抜けている可能性があるので、次回練習する際は少し弱めてやっていくようにする。
●プラーナーヤーマと瞑想の両方で心がけてほしいこと
1.心地良く安定した座位を確保し、背骨がしっかりと体の中心で立つようにする。努力なしで長時間可能なのであればパドマーサナなどの座位で座る事が理想ではあるが、座ることに対して努力した状態にならないよう(足の痺れなどに意識を奪われてしまうため)、必要であればヨガブロック、ブランケット、ボルスターなどのプロップスを使用し、長時間座っても可能な限り心地良くいられる座位を確保し、プラーナーヤーマと瞑想の練習に集中できるようにする。
2.練習に入ったら、可能な限り無駄な動きを入れないようにする。
練習に必要なもの以外の体の動きを入れると、そこにエネルギーや心が持っていかれてしまい、プラーナーヤーマや瞑想の練習が一度そこで途切れてしまい、練習の質というものが変わってしまうので、練習に入ったら可能な限り無駄な動きを入れないようにする。
●おすすめ
・練習後にノートを書く。
目を閉じた練習の中で感じていることは写真を撮ったりする事ができませんし、すぐに忘れてしまうので、後で鮮明に振り返ることが難しいです。練習をした内容、練習中に気づいたこと、練習中の感覚など、目を閉じて練習をするなかで感じたことを、写真を撮って記録するように、実際に言葉で書いて目に見える形で記録しておくと、後で見返したときに気づきや学びや発見があります。
・アーサナとプラーナーヤーマと瞑想の継続した練習をする。
心地良く安定した座位を維持することはプラーナーヤーマや瞑想の練習でとても大切です。もともとプラーナーヤーマの練習は、ヨーガ・スートラもハタ・ヨガ・プラディーピカーといった古典でも、「アーサナ(ポーズ)が安定して快適にできるようになったらプラーナーヤーマを行う」という風に記述があるように、アーサナの練習がプラーナーヤーマの練習を支えてくれます。また逆も然りで、現代のヨガの視点からは、プラーナーヤーマの練習がアーサナの練習を支えてくれるともいえ、そしてそれらはプラティヤハーラ、ダラナ、ディアナといった練習とも同様な補完関係にあるといえるでしょう。