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25年程UXやった人間が考えるUXデザインってなんだろう?という話(UXデザイナーを目指す人向け)
※元記事は2020年投稿したものですが2024年になり改めて内容を修正しています
はじめに
UX(User Experience, 顧客体験) または UXデザインって言葉をこの10年15年で非常に良く聞くようになった。約25年前、西暦2000年前後にソニーで働いていた時に「UX」という言葉を聞いて、興味を持ち勉強しはじめたのがUXとの出会いである。西暦2000年前後というとゲームコンソールではPS2の時代、WebはFLASH全盛期な頃である。25年以上前からソニーではUXデザインに注目していたのだから、まさに最先端いってたわけだ。だからといってWalkman は Apple iPod などに業界トップをとられたりとUXだけではビジネスで独占は難しいわけではあるが…
20年以上UX(顧客体験デザイン)に携わる人と「UXデザインってなんぞや」という壁打ちしたときのポイントを Twitter に連投したのでそれをベースに私の思う「UXデザイン」を補足する。
UXデザインとはなんだ
高尚な定義はともかく、私の思う「UXデザイン」は、
ユーザーに限らずに関係する人々の体験を創り、体験価値を向上させるための行為・意匠・設計
と思っている。Twitter ではこう書いた。
体験創り(UXデザイン)は、クリエィティブな作業でもあり、評価手法やスキームなどはツールの一部分にすぎない。ましてや Web やネットサービスに限定するものでもない。続く)#UXデザイン #UX #UXD
— Michinari -michi- Kohno (@michi_neoma) November 22, 2020
デザイン(Design) という言葉を広義に捉える。あえて私は「UXデザイン」とは書かずに「体験創り」とかくこともある(創造の創るを使う)。
これまで25年以上、UXをやってきたが、ほとんどが新しい商品やサービスを使った新しい体験の創出が多く、そこには今のような評価手法もスキームもなかった時代である。当時体験創りには、企画屋やデザイナーやエンジニアなど様々な業界の人間が入り乱れて、「我々が新しいカルチャーと体験をつくり出すんだ」とやっきになっていた。まさにクリエイティブな仕事だったのだ。
もちろん、視点を狭めていくと、そこには新しいインタラクションやUIが存在し、その為のユーザビリティなども最適化していく必要もある。また、楽しい、嬉しい、面白いといった体験価値を数値化なり評価する手法がないと良いか悪いかの判断が難しいから私も認知科学や評価手法を学んだ。
D.A. ノーマンの「誰のためのデザイン」がUXの元祖的にとらえらえているけれど、S社時代に携わった人はそれは認知科学ベースの、UIの延長的なUXで狭義のUXと捉えていて、私もその考え方に賛同。ノーマンも1部に過ぎない。#UXデザイン #UXdesign
— Michinari -michi- Kohno (@michi_neoma) November 22, 2020
日本においての「UXデザイナー」という職を目指す場合に、ペルソナやCSJなどのスキームや評価手法などばかりが目に入ることが多く、それが UXデザイナーの本業とおもわれがちだけれど、本来は「体験をデザインする」ことであること(広義)#UXdesign #UXD
— Michinari -michi- Kohno (@michi_neoma) November 22, 2020
ネットで「UXデザイン」を検索すると、語りやすいからなのか、どうしても評価手法やスキームなどが嫌ってほど出てくる。数学でいうと、公式と定理ばかりが目に入ってくるイメージだ。もちろん公式、定理は重要だけれどそれだけでは体験を創るのは難しいのが私の経験則だ。
私はコンセプトやビジョンを創り、シナリオストーリーなどからユースケースなど体験を創っていく。そのときに、既存のツールを使う時もあれば、都度、新しい手法を自分で編み出そうとする。これは、アーティスティックではあるが、数字で評価しにくい「体験価値」を作る上では大事なことだと思っている
— Michinari -michi- Kohno (@michi_neoma) November 22, 2020
UXデザイナーが企画をして戦略を建ててデザインもしつつ、上流設計をしても別に良いとすら思う。全部はさすがにできないだろうけど、ディレクションは出来ると良いだろう。実際、今の私のポジションと専門は、まさになんでもディレクションをしてしまう、UXディレクターである。そして、体験自体を創りだす、体験クリエイターでありプロデューサーでもある。
UXは「ユーザー」という言葉があるが、これにも20年前から違和感を感じていた。もともとソニーでは、モノづくりやサービスをつくるときに必ずソニーのブランド意識を考えさせられた。ユーザーさえよければいいのか、ということまでグローバルカンパニーだからではあるが、それもいまでは、BX (Brand Experience) と言う言葉になっている。
弊社でも Brand Experience (BX) という言葉を使うようになったけれど、思えば20年前にUXに出会った時に、すでに、その思想には BX や CX も含まれていて、なんで「ユーザー」限定な文言なんだろう、とおもっていたことを思い出した。
— Michinari -michi- Kohno (@michi_neoma) November 22, 2020
広すぎるUXデザイン
最後に、UXデザインは本当に領域が広い。
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まずビジネスと技術とデザインの3つの領域にまたいで描かれる。そして、その関連する学問においても、2008年の時点でこのようにマップ化されてもいる(是非はあるだろうけど)。
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2008年の時点で、ライティング、マーケティングそして空間や建築までも関連領域にいれている。今見てもかなり先見的なマップである。
こうなると「UXデザイナーになりたいのですが何を勉強すればいいですか?」の答えは1つではない。D.A. ノーマンを代表とする、よくあるUXデザイン関連の書籍をあげたところで、それもピンポイント、One of them である。
「ソニーにはUXデザイン部門はありません。それは、どんな職種、職場でも体験価値は考える必要があるので、UX横断プラットフォームはあるとき消えました(想像含む)」といったことがあるのだけど、先輩と話をしてあながちこれは間違いではなかったと核心をした#UX #UXdesign
— Michinari -michi- Kohno (@michi_neoma) November 22, 2020
これは私の邪推も含めた発言だが、もはやどの職種においても「UX」はあたりまえのスキルなのかもしれない。まだまだそれが定着してないだけで。
そんなわけで、これからUXデザイナーを目指す人は、大海すぎるので、まず自分はどの業界がいいのか、どの領域がマッチングいいのか、そういう視点で「探す」旅からスタートしても良いのではないかとおもう。また、その着地点が間違いであっても、きっとそれまで学んだ「UXデザイン」は生かされるはずである。臆することはない。私もまだ自分の描く「UXデザインとは」の旅の最中である...
2024年追記:
最近はIT以外でのサービスでUXデザインされている事例を凄く見るようになってきた。UXを学ぶ人や職業にしている人がかなり増えているのは良い傾向である。
一方で、サービス対象となるユーザーの体験だけ良ければ良い、というサービスも見受けられるようになってきた。ビジネスとして「儲けること」は重要だけれど、企業・法人として社会に対するミッションとして、社会に対する体験(Social Experience) や従業員や社員の体験 (Employee Experience) も考えるべきという風潮が欧米では兼ねてからある。日本の企業も早くそこに気がついて欲しいと思う、UX老人会の戯言です…
UXデザインできていても社会的体験価値(SX) ができてないサービスが増えてきてる感じがある
— Michinari -michi- Kohno (体験ハンター) (@michi_neoma) May 10, 2024
穿った見方をするとUXが認知されてビジネスで活用されてきているともとれるので、どんどんその勢いでCX->EX->SXと上流や周囲の体験価値デザインも良くしていこうね!