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[万葉]like the roar of a tiger (巻2.199)

大和歌を英訳で読むマガジン(5) の第3回は万葉集巻2の199番の歌です。

……整ふる 鼓の音は 雷の 声と聞くまで 吹き鳴せる 小角の音も 敵見たる 虎か吼ゆると 諸人の おびゆるまでに 指挙たる 旗の靡きは 冬ごもり 春去り来れば 野ごとに つきてある火の 風のむた 靡かふごとく 取り持てる 弓弭の騒き み雪降る 冬の林に つむじかも い巻き渡ると 思ふまで……

……軍の隊伍を整える鼓の音は、雷の音と聞こえるほど、吹き響かせている小角の音も、敵を目にした虎が吠えているのかと人びとがおびえるほど、高く捧げた旗がなびくのは、冬が終わり春になると、あらゆる野につけられた野火が風とともになびくように、手に持つ弓の弭の騒がしい音は、雪の降る冬の林につむじ風が吹き巻いて渡ると思うほど…… (英語万葉集)

「和歌のエベレスト」といわれる199番は、人麿の真作とされる歌の一つです。どれほどの高みなのでしょうか。壬申の乱で挙兵した大海人皇子(のちの天武天皇)の皇子 高市皇子(654-696)の薨去を悼む挽歌です。リービ英雄氏の英訳などを通してこの歌をながめてみます。

※ 壬申の乱(672):天智天皇(626-672)の崩御後、天智の子 大友皇子(弘文天皇、648-672)に対して、天智の弟 大海人皇子(のちの天武天皇、?-686)が起こした内乱。[天武天皇の生年は『日本書紀』に記述がない。『ブリタニカ国際大百科事典』は「舒明3 (631) 年説が有力」と記す。]

目次
読み下し文(注付き)
英訳(注付き)
解釈
 リービ氏の視点 
 戦場を描く
 日本学術振興会訳
 窪田空穂

【マガジンの案内】
名称:大和歌を英語で読む(5)
内容:大和歌を英訳で読んでゆく。最初は万葉集
分量:1マガジンあたり最低5本を収録(予定)
価格:1マガジンが1,000円。個別の記事の分売もします
方法:詩学(poetics)的関心から、日英の詩のことばを比較
既刊:大和歌を英語で読む(1) 大和歌を英語で読む(2) 大和歌を英語で読む(3) 大和歌を英語で読む(4)

参考文献 ([]内は本稿での略称)

[万葉集注釈等]
・山田孝雄『万葉集講義』、宝文館、1928-37[講義]
・窪田空穂『万葉集評釈』、東京堂、1943-52[窪田評釈]
・高木・五味・大野『日本古典文學大系 萬葉集』、岩波書店、1957[古典大系]
・青木・井手・伊藤・清水・橋本『新潮日本古典集成〈新装版〉萬葉集』、新潮社、1976[古典集成]
・伊藤博『萬葉集釋注』、集英社文庫、2005[釋注]
・伊藤博『新版 万葉集』、角川学芸出版、2009[新版万葉集]
・中西進『万葉集 全訳注原文付』、講談社、1983[全訳注]
・中西進『万葉集事典』、講談社、1985[事典]
・中西進『古代史で楽しむ万葉集』、角川学芸出版、2010[古代史]

[古語辞典]
・大野・佐竹・前田『岩波古語辞典 補訂版』、岩波書店、1990[岩波古語]
・秋山・渡辺『詳説古語辞典』、三省堂、2000 [詳説古語]
・中村幸弘『ベネッセ 全訳古語辞典 改訂版』、ベネッセコーポレーション、2007 [ベネッセ]
・大野晋『古典基礎語辞典』、角川学芸出版、2011[基礎語]
・宮腰・石井・小田 『旺文社 全訳古語辞典 第四版』、旺文社、2011 [旺文社]

[万葉関連書等]
・坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野 晋校注『日本古典文学大系新装版日本書紀 下』(岩波書店、1994)
・島津忠夫『新版 百人一首』、角川書店、1999 [新版百人一首]
・リービ英雄『英語で読む万葉集』、岩波新書、2004[英語万葉集]
・万葉神事語辞典 、國學院大學、2009
・ピーター・J. マクミラン『英語で読む百人一首』、文藝春秋、2017

[英文著作]
・Kenneth Rexroth, 'One Hundred Poems from the Japanese', 1955
・Nippon Gakujutsu Shinkokai, 'The Manyoshu', Columbia UP, 1965
・Ian Hideo Levy, 'Hitomaro and the Birth of Japanese Lyricism', Princeton UP, 1984
・Janine Beichman, 『対訳・折々のうた』(大岡 信・著) (講談社インターナショナル、2002) [as cited at Oriori no Uta: Poems for All Seasons]
・Geoffrey Bownas, 'The Penguin Book of Japanese Verse', Penguin Classics, 2009
・Anne Commons, 'Hitomaro: Poet as God', Brill, 2009
・T. E. McAuley, 'An Anthology of Classical Japanese Poetry', www.wakapoetry.net, 2016

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