大豆たん白のはなし
少し前にたんぱく質系の物質をいくつか紹介しましたが、一つ漏れていましたので、今回はそれを紹介します。
大豆たん白はその名前が示す通り「大豆に含まれるたんぱく質」のことなのですが、日本では古くから「畑の肉」といった表現がされてきました。それほどたんぱく質として優秀だったんですね。
たんぱく質はアミノ酸が連なって構成されていますが、そのアミノ酸は20種類が知られています。そのうちの11種類は自分の体内で合成が出来るのですが、残りの9種類については合成することが出来ず、食事から取り入れなければなりません。この9種類をまとめて「必須アミノ酸」と呼びます。そして必須アミノ酸が含まれている度合いによって栄養価が変わってくるために、それを「アミノ酸スコア」と表現しています。数値で示すのですが、その範囲は0~100になっています。その評価は100に近い数値を示すたんぱく質ほど良質であるということになるんですね。
大豆たん白はアミノ酸スコアが100で、これは牛肉などと同じくらい良質であることを示しています。そんな大豆のたんぱく質を使った食品では、豆腐や納豆が知られていますが、熱を加えると固まったりする性質がある事でソーセージやかまぼこなどの材料になったりもします。
大豆が原料としてのたんぱく質として、ソイプロテインというそのままの名称のものがあるんですが、ご存じですか。ソイとは大豆の事、大豆を原料にプロテインという物質を作ったという事ですね。本来、プロテインとはたんぱく質の意味ですが、この場合は商品名と考えればよいでしょう。普通のプロテインは牛乳から作られますので、ソイプロテインのように植物性というだけでもヘルシーな感じがしませんか。
実際に、大豆に含まれるたんぱく質を調べてみると非常に良質で吸収もよいことが分かっています。そして、体を構成する要素としてとても優秀です。また、100gあたりに含まれる脂質の割合は肉類に比べると低くなっていて、カロリーも控えめという優れた特徴があります。加工や調理の方法によって摂取できる栄養価は変わってきますが、油や調味料の使用を控えめにすれば、ダイエットにも強い味方になれる食材なんです。
肉類の場合はアミノ酸スコアは優秀でほぼ100という数値なのですが、その一方で飽和脂肪酸や油脂(例えばコレステロールなど)を豊富に含むという点には注意が必要です。この辺りの成分は摂取し過ぎると生活習慣病のリスクを高めてしまいます。だからこそ、脂質成分が少ない大豆たん白が、余計に注目されるわけですね。
最近の健康志向の傾向に対して、大豆たん白は十分応えることが出来る、そんな存在感を高めてきています。特に、大豆のたん白質が健康に及ぼす効果科学的にも証明されてきています。そのため、多くの食品メーカーが大豆たん白がもつ健康効果を取り入れた商品を新たに開発したり、販売したりすることに力を入れています。
例えば、「コレステロールが高めの人の食生活の改善」、あるいは「血中コレステロール値の低減」といった効果を前面に押し出した表現なども用いられています。こういった効果に対して、アメリカの食品医薬品局(FDA)が大豆たん白質の「心臓病予防効果」を正式に認める発表をするなど、さなざまな研究の成果が後押しをしている状況です。
こういった研究の成果によって、最近では大豆たん白を一定量以上含む食品に対して、その効果を表示することができるようになっているとのことです。特に肥満大国でもあるアメリカでは、大手食品会社が大豆たん白を利用した新製品が歓迎されて、次々と市場に投入しています。
日本も今後ますます高齢化が進む状況です。その一方で消費者のニーズも変化してきています。高齢者用の食品、乳児用の食品、病者用の食品、スポーツ栄養食品やサプリメントなど、大豆たん白はますます幅広い用途が期待されていくでしょう。