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【思考実験】オーストラリアを覇権国にしてみた

はじめに

 地政学関連の話題をしばらくやってなかったので、今回はオーストラリアについての思考実験です。

 現在、米国が世界の覇権国であることは誰も疑いません。では、米国と似たユーラシア大陸から離れた大きな領土かつ、主要な海上交通路へのアクセスが可能で、海岸線が広い国と言えば、オーストラリアがあります。ならば、オーストラリアを世界の覇権国にしてみるにはどのような条件が必要か見てみたいと思います。

地理的条件

 まず、ユーラシア大陸から離れた大きな領土かつ、主要な海上交通路へのアクセスが可能で、海岸線が広い国であるオーストリアの位置を確認します。マッカーサーの世界地図を見てみましょう。

オーストラリア

マッカーサーの世界地図

 この地図を選んだ理由として、オーストリアの配置が中国をけん制できる場所にあることが確認できる為です。オーストリアの課題の一つとして、中国からサイレント・インベージョンを受けていることが挙げられるので、なぜ中国がオーストリアを抑えようとしているかを確認する必要があります。これはマッカーサーの世界地図を見れば、一目瞭然でオーストリアの位置が中国をけん制可能な位置にあることがわかります。よって、オーストリアを覇権国化させることで、日本としては、中国をけん制する心強い仲間としてオーストリアは機能することになります。

 では、オーストリアの地理的な現状を見ていこう。

グーグルオーストラリア

Googleマップから見たオーストラリア

 国土のほとんどが荒野地帯のオーストラリアは海岸線を除いて、人が住める地域が限られることがわかります。人口分布は以下の地図の通りです。

オーストラリア人口分布

オーストラリアの人口分布図

 海岸線に人口が集中しており、人が住んでいない(uninhabitable:非居住地域)地域も大きいことがわかります。非居住地域の原因として、土の養分が乏しく、塩分濃度が高く、雨もほとんど降らないこと等が挙げられます。
しかし、オーストラリア全土は標高が低いのもまた特徴としてあります。この為、山を削る等といった無茶ぶりはしなくてもことになります。では、荒野を人が住める地域に緑化するにはどうすれば、いいかみていこう。

砂漠の緑化方法

答え:人口的に河川を砂漠に作る

 オーストラリアは言わずと知れた鉱物採掘大国であり、器具と人員は揃っている為、やろうと思えば、競争入札方式で安価な契約内容で河川を作ることが可能です。

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河川の配置イメージ図

 河川を作ることで、周辺は次第に緑化されます。費用の見積もりとして、パナマ運河建設(建設費用のみ:3.75億ドル)を参考にすると、3000キロの河川を作ると、パナマ運河37.5個分になるので、140億ドル相当で作れます。日本円に直すと、1.4京円で作れてしまえます。人口を分散させことが可能な予算にしては安いです。イメージとしては、運河建設に近いかもしれません。セオリーとしては、河川を通る形で交易のショートカットをする形でも役に立ちます。

オセアニア地域経済圏の可能性

 東南アジアと距離的に近く、東アジア、南アフリカ、南アメリカとも距離は遠くはない為、交易で大きな可能性をもっています。先述した河川作りを行えば、オーストラリアの中心を通って、東南アジアへ行き来が可能になります。加えて、東アジアとの距離も縮まります。これと、既存の南半球配置で南アフリカと南アメリカとの空路も活用が可能。いずれにしても、人口が多い地域との接続が容易である為、米国型の民主主義を唱える移民国家の形成が可能です。人が住める地域が増えることにより、オーストラリアはオセアニア版米国になりれます。移民国家特有の「智の集約」に加え、東南アジア等の比較的安価な製造拠点が確保可能なオーストラリアの配置は大いに可能性を感じさせます。ただ、産業が発展するまでは少し時間が掛かるかもしれません。

産業の課題

 産業の課題として、採掘技術はあっても、製造技術がいまいち軌道に乗らなかった歴史があります。例として、過去に車の製造をしていた会社があったのですが、競争で安価かつ高性能の車にやられることがありました。加えて、採掘と観光産業に偏重しているため、産業改革が必要になります。しかしながら、採掘関連会社は有力政治家に献金したり、観光は環境保全団体が自発的に行動している為、これらを動かすのはかなり難しい。今回は、思考実験なので、これらの課題を越えた前提でいきましょう。

オーストラリアが覇権国化した時の日豪関係

 公共投資で河川を通し、無事に人が住める地域を拡大し、米国型の民主主義を唱える移民国家にオーストラリアは変貌したとして、日本との関係はどうなるか見てみましょう。

 経済的にオーストラリアは鉱物資源輸出国なので、これまで通り、交易で共存関係が望めます。生産拠点の多くは東南アジアに集約されることになる為、両国にて、製造業ではなく、商業ベースの経済圏になります。

 次に、地政学的に膨張する中国の封じ込め政策(containment)が可能になる為、安全保障面でも、日本との連携に期待ができます。加えて、思想面でも民主主義国としての御旗を掲げることが可能なので、米国の掲げる世界秩序維持戦略に貢献も可能です。

 人の交流については、「智の集約」により、オーストラリアは魅力的な教育機関が多く登場することになり、魅力的な海外留学先にもなります。観光もこれまで通り、海岸線地域で行うことも可能です。

オーストラリアの覇権国への道を閉ざす存在

 オーストラリアが覇権国になる素質があるが、それができないようにしている存在が二つあります。一つは、政治家と密接な関係がある採掘業者。もう一つは、環境活動家による生態系保全の動きです。採掘する際、環境の影響を受ける可能性があるので、おそらく、採掘業者は反対するでしょう。採掘業者から献金を貰っている議員から反対がくることも用意に想像が可能です。次に、環境活動家が生態系の破壊を理由とした反対キャンペーンが展開される可能性が大いにある点です。シーシェパード等のような過激派による抗議活動も展開されるでしょう。

 これら二つの障害を越えるのは、中々難しいです。

まとめ

 オーストラリアは、地理的な配置でも、技術力でも、経済的意義でも、覇権国になる素質がありますし、日本との良好関係な関係も期待できる上、防諜する中国の封じ込めが可能なポテンシャルを秘めた国であることがわかります。しかし、採掘既得権と環境活動家によって、それらの可能性が封じられてる為、覇権国になることができない結論になりました。

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