経路依存性の怖さ
挨拶
突然ですが、経路依存性という言葉を聞いたことありますか?意味としては一度決めた経路から外れないようにすることですが、政治や会社組織とあらゆる組織にも通ずる部分のある話ですので、改めて見てみたいと思います。
経路依存性の良さと悪さ
一度決めた経路から外れないこと自体は悪いことではありません。強固な意思表示として一貫性のある行動をとっていることを証明できる点では良い部分もあります。しかし、一度決めたことというのは後で変えようとする時に苦労するというものです。日本企業の場合、年功序列型の給与システムで正社員を雇っているところでは経路依存性の悪い部分が目立つように思われます。最初に実績ではなく、勤務年数で給与体系を決めてしまうことで何十年もの間、組織人材の能力向上意欲や組織の軽量化(生産性向上で10人以上かけてやっていた仕事を5人未満でこなせるツールの導入などで生じる過剰人員のカット)の失敗にも繋がっています。政治の世界では消費税導入後、増やす経路依存性からいまだに脱却ができておらず、消費増税の度に景気を悪化させにくる悪循環が出来てしまったのです。
経路依存性から脱却できない理由
「ダメなら変えればいい」この発言は多くみられるが当事者からしたら、自身で決めたこと、自分を支えた組織の仲間の意向を無視し、いきなり、「昨日までは蕎麦屋だったけど、今日からラーメン屋にする」と言わんばかりの急変した意見を示すことになります。外からみたら、「ただの麺ではないか?何をそんなゴタついてるの?」と思われるのと同じことです。しかし、当事者からした大ごとです。それまでサービス提供するのにあたって使っていた既存の構築システムを全て調整しなければならず、莫大な費用が掛かります。一度消えた時間と費用を考慮すると、基本的に変わろうとしません。そして、一番大きな理由として、それまでの主張との一貫性が取れなくなることです。それまで主張していたことと180度違うことを言うと一般的には、不信感を買います。時系列的に考えると、これからの未来をよくしようという意思表示ですが、関係者には時系列の感覚はなく、支持するどころか責め立てたりし始めます。
経路依存性から脱却する方法
これを解決する方法はシンプルでトップを変えることです。しかし、方法の実行が一番の課題です。周囲は一貫性を求め、変化をそれほど望んでいない。しかし、相手とする人(政治なら国民、会社なら取引先や消費者)が望んでいることをやらない訳にもいかないのです。もし、相手とする人の希望を聞き入れないと、相手にされなくなります。会社であれば、商品やサービスで的はずればかり出すと倒産し、政治なら内閣辞職や解散になったりします。そこで重要となるのが、意思決定者の決心や覚悟です。「覚悟?昭和かな?」と思う人もいると思いますが、最終的に動く者を見ていくと彼らは決心を決めた者達でした。英語では決心をdeterminationと言いますが、強い意思表示を示す時に使われます。実際、意思決定者のトップの座にいる者は、リスクを回避したくなる心理は分かりますが、決心をみせたトップで成功を収めてる人が多いのも事実です。そこで重要になるのは、意思決定者の決心や覚悟という訳です。
意思決定者が腹をくくらない場合
意思決定者の仕事は決めることですが、変化が必要な時に決められない場合の対処もシンプルで、意思決定者を変えることです。これも、方法の実行が課題ですが、大抵の場合、変化が必要とされる中で動かなければ、悪影響を及ぼし、不満があちこちで蓄積し、その不満が意思決定者に帰って来ることになります。そこで、不満が蓄積されたところで変化に対応できる人をトップに据えて、再スタートすればよいのです。会社であれば、経営者の入れ替えをすればいいですし、政治なら新首相や新大臣を置くことができますし、最悪の場合、解散して野党にチャンスを与える手もあります。
注:野党投票のリスクは民主党政権の際に発生し、多くの国民が政権交代に賛同的ではないと思いますが、本来は野党が与党になる時は様々な既得権益に踏み込むチャンスです。当時の民主党はそのチャンスをうまく活用できなかっただけで、政権交代自体が悪い訳ではありません。その点、変化が必要な時期に民主党最後の野田首相が解散を決意することのできた意思決定者として、もっと評価されるべきではないでしょうか?
まとめ
経路依存性の好循環もあれば、悪循環もあり、その悪循環の経路依存性から脱却するには、意思決定者の強い決心を表明した上、時系列の理解が追い付いていない人達に進む道筋を説明することが大事です。そして、意思決定者が意思決定ができない場合、その意思決定者を決める者達でよりふさわしい人物を据えることで、再スタートを切るべきという話でした。
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