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『性的モノ化-ヌスバウムの視点から-』

 私は本レポートで、性的モノ化についての問題を、ヌスバムウムの理論の立場から論ずる。まず、ヌスバウムが論じた理論とヌスバウムが提唱する悪い性的モノ化をとりあげる。次の段落では、現実で性的モノ化として問題になる事例をとりあげる。さらに次の段落で、ヌスバウムの理論から全段落で述べた事例を分析し、考えを述べる。最後に、自分の意見をまとめる。

 ヌスバウムは性的モノ化を、問題となりうるのは、文脈によって変わり、モノ化する人とモノ化される人の関係性によって道徳的に悪い性的モノ化と、悪くない性的モノ化が存在すると論じている。まず、ヌスバウムはモノ化を、道具扱い、自律性の否定、不活性化、交換可能化、侵襲可能化、所有物化、主観性の否定に区別している。ヌスバウムはこの上で特に、道具扱いに焦点を当てており、道具扱いを中心要素であると考えている。その中で、ヌスバウムが考える道徳的に悪い性的モノ化とは、「同意と、対称性、相互性、親密性という問題が背景として成り立っていないなかで、人をモノ化する行為が道徳的に問題である」1とあるように、親密な関係の中では、性的モノ化が問題では無く、親密ではない関係性の中でのモノ化が性道徳の上で悪い性的モノ化となる。つまり、性的モノ化とは、同意、対等性、相互性、親密性が成り立った文脈及び関係などであれば性的モノ化は悪いものではないという見解である。
 性的モノ化として問題になりうる現実の事例として、職場でのドレスコードの強制が挙げられる。ある企業が、女性従業員に対して特定の制服や服装(例えば、タイトなスカートやハイヒール)の着用を義務付けている。このドレスコードは顧客に対する「見栄えの良さ」を理由に導入されている。
 ヌスバウムの理論をもとに、職場でのドレスコードの強制の事例を分析すると、文脈としては、職場環境と雇用契約という文脈において、企業が女性従業員に特定の服装を強制することは、しばしば女性の身体を企業の利益のために利用する行為と見なされる。次に、親密性の欠如として、この場合は、雇用者と被雇用者の関係に親密性はなく、一方的な命令と服従の関係が存在するため、女性従業員の自己決定権が侵害がある。モノ化の要素としては、女性従業員が会社の利益のための道具として扱われ、その身体的特徴が商品化されていることが挙げられる。以上、道具扱いや所有物化、自律性の否定が認められる。そのため、ヌスバウムの論じた悪い性的モノ化にあたると考えられる。
 最後に、以上で私が論じたことを簡単にまとめる。ヌスバウムの立場では、性的モノ化を判断する際には、関係性の親密性、行為の意図、そして文脈が重要な要素となる。これらの要素が欠如し、他者の身体や性的存在が一方的に道具化される場合に、性的モノ化が発生し、悪い問題となる。また、ヌスバウムの理論では、他者を物として扱うことが人間の尊厳を侵害し、特に女性が社会やメディアによってしばしば性的にモノ化されることで、深刻な社会的・個人的影響を受けることを強調しているのである。

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