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ITで保育職員の環境を変革!VCと歩むスタートアップのいま:㈱カタグルマ_後編

■はじめに

こんにちは、ベンチャーキャピタルMICの有賀です。モバイル・インターネットキャピタル株式会社(以下MIC)は、1999年の創業時からデジタルテック領域において、リード投資を基本とし、シリーズAを中心とするオールステージにてスタートアップへ投資支援活動を行う独立系のベンチャーキャピタルです。投資先のスタートアップへの支援の一環として、事業会社との事業連携等オープンイノベーションにも注力中です。

本記事は、弊社が毎週火曜日に配信している公式Podcas「起業家のキモチ」を文字で読むことができる「読むPodcastシリーズ」です。投資先の起業家へのインタビューを通じて、事業内容や起業までのストーリー、今後の展開になどについてお聞きしています。音源を元にまとめていますので、空き時間でさくっと読みたい方にお勧めです✨

前編・中編に引き続き、ゲストは株式会社カタグルマの代表取締役・大嶽広展さん。カタグルマが挑むSaaS×保育の可能性とは?創業時に苦労したこととは?3本立ての最終章、後編となる本記事では、資金調達やVCとの連携に焦点を当てていきます。

👉前編中編はこちら👈


■最初に資金調達へ踏み切った経緯

MIC有賀:
 ここからは、弊社の担当キャピタリスト稲垣へバトンを渡して進行して参ります。稲垣さんはカタグルマさんの担当をしています。稲垣さん、よろしくお願いいたします。
 
MIC稲垣:
モバイル・インターネットキャピタル(以下MIC)の稲垣です。どうぞよろしくお願いします。
 
早速ですが、カタグルマさんは創業から直近のシリーズAラウンドまで含めると、総額2億円強の調達をされておりますよね。2020年の10月に設立されて2021年の8月頃ですかね、約1年後ぐらいにシードで初めて資金調達されていますが、このタイミングで資金調達しようと思ったきっかけや、理由について伺いたいなと思います、いかがでしょう?
 
カタグルマ大嶽さん:
そうですね。正直申しますと、そのタイミングでなきゃいけなかったわけではなかったんです。もちろん余裕があったわけではないんですが、実はもう少し後でも良かったかなと思っていました。ただ、遅かれ早かれエクイティでの調達はしていきたいという思いはありました
当時、我々からファイナンス活動をしてVCさんに会いに行くということはなくて、急遽、何の面識もなく、ガゼルキャピタルさんから連絡があったんです。そこで石橋さんから「ぜひ出資をさせてほしい」という熱い思いをいただきました。そこで「以前からこの保育の分野・子どもの分野での出資というものをしたかった」という思いを伺い、グッと惹かれたんです。メリット・デメリットはあると考えていましたが、今後のエクイティファイナンスを中心としたファイナンス活動において、ここで出資をいただくということは非常にメリットが大きいとも思い、決断しました。
 
MIC稲垣:
ありがとうございます。ではもし、石橋さんから連絡がなかったら、もう少し事業を進めてから調達しようかなって感じだったんですね。結果的にタイミングは良かったですか

カタグルマ大嶽さん:
はい、良かったと思います。それまではファイナンスの経験がなかったのですが、ここで出資いただいたことで、その次のラウンドまで長期的にエクイティファイナンスを考えられました。これが、もしもう半年遅かったら、世界観が全く変わったと思っています。結果としてはちょうど良いタイミングだったかなと思います。

■ベンチャーキャピタルMICと組むことを決めた理由 

MIC稲垣:
ありがとうございます。その後、弊社MICとしてはプレシリーズAラウンドから参画させていただいて、投資実行まで数ヶ月にわたって大嶽さんともディスカッションさせていただきました。我々としてはとても嬉しいことに、最終的にご一緒できることになりましたが、今回のラウンドで弊社をお選びいただいた理由もぜひ聞いてみたいと思うのですが、いかがでしょう?
 
カタグルマ大嶽さん:
そうですね、去年の11月に初めて弊社からピッチをさせていただき、もう少しで1年近く経つんだと思うと、あっという間だなと思います。今回のラウンドで初めてお会いしたVCさんが、MICさんだったと思います。前回のラウンドは、いわゆるファイナンス活動をして調達という経緯ではなかったので、実質的には初めてに近いファイナンス活動だったんです。その1社目というところなので、非常に緊張してました。
その時に、MICの元木さん、稲垣さんのお2人とお話をさせていただいたんですが、元木さんが私のピッチの後に「大嶽さん、もっと自然体でピッチしてもいいんじゃない?」と一言。完全に見透かされたといいますか、私が緊張していたことも、VC向けに話してるというのも伝わったんだろうなと思いました。「もっと、本当に大嶽さんがやりたいと、目指したいと思う姿を伝えていただいていいんですよ」というお言葉をいただいたのが、今でも残っています。

しばらくは、メッセンジャーでコミュニケーションをとっていましたが、またお会いする機会が増えて、稲垣さんがこまめにコミュニケーションを取って寄り添ってくれました。まだリードが決まらないなど、あまり上手くいっていない時でも、実は結構心理的に支えてもらっていました。「リードが見つかったらすぐに連絡ください」などと声掛けいただいていたので、すごく有難かったです。
 
MIC稲垣:
ありがとうございます。我々としてはリードを張れるバジェットを持ってなかった中で、でもとても素敵な会社だということは早々に感じていました。シード1号ファンドからの出資ということで、大嶽さんに「リードが決まったらすぐにやらせていただきます」という意思表明はさせていただいていたことを、思い出しました。

■カタグルマへの投資の決め手

カタグルマ大嶽さん:
ありがとうございます。今度は私から、弊社への投資の決め手になった部分や期待いただいていることがあれば、ぜひ教えていただきたいなと思います。いかがでしょうか?
 
MIC稲垣:
これまさに先ほど話に出ていましたが、「大嶽さんって本当は何がやりたいんですか?」とディスカッションをしながら深掘りをさせていただく中で、この業界の課題を誰よりも深く捉えていること、その課題を本気で解決したいといういう思いを強く感じたんです。
「大嶽さんだったらこの業界を本気で変えてくれる、変えるまでやりきってくれるだろうな」と、勝手に信頼させていただいたんです。その信頼の総量は、ディスカッションする度にどんどん大きくなりました。大前提として、そこが期待している、信じているポイントです。

その前提があるうえで、期待している点は2点あります。
1点目はプロダクトのポジショニングが、非常にユニークだということです。他の業界で色々なICTツールを提供されているプレイヤーさんもいますが、彼らのプロダクトはどちらかというと、「施設と保護者のコミュニケーションをより円滑にする」というCRM的な観点のものが多いんです。一方で大嶽さんが作るカタグルマのプロダクトは、どちらかと言うと、「施設と職員という施設内の環境改善に寄与するソリューション」という形になっていて、機能が違うんですよね。ただ「機能が違う」と言うと、なんだかすごくつまらなく聞こえるかもしれませんが、これを私なりに整理をしていくと、思想が根本的に違うんです。プロダクトを作るときの思想が全く異なるので、最終的なアウトプットの機能も違ってくるんだと理解しています。

組織論に「ハーズバーグの二要因論」というのがあるんですが、「人が働くときのモチベーションをどう形成するか」と考えたとき、大きく2つの要因に分けられるんです。1つ目が「衛生要因」、2つ目が「動機付け要因」です。「衛生要因」はどちらかというと「働く環境をいかに整えるか」という観点です。給料や労働環境を適正に持っていく、そうするとモチベーションが上がるよね、ということですね。一方で、ピラミッドの上にある「動機付け要因」というのは、「働きがいをいかに調整していくか」というところの、モチベーションを形成するための働きかけになるんです。

どちらかというとこの業界のCRMツールは、この二要因論のピラミッドでいう下、土台になる部分の「衛生要因や労働環境をいかに適正に持っていくか」という思想なんだと思っています。ただ、大嶽さんが作ろうとしているカタグルマのソリューションは、ピラミッドの上の部分である「動機付け要因」、つまり働きがいで起用する人材マネジメント関連の切り口のソリューションになるので、「職員の方の働きがいをいかに調整していくか」という思想の下で作られているんじゃないか、と。こう整理したらスッと腹落ちしたんです。

そこで「これってホワイトワーカーの業界も同じ変遷をたどってるよな」と気付きました。タレントマネジメントシステムなどが出て、ホワイトワーカー向けに起こった業界変革みたいなものが、エッセンシャルワーカーの領域でも当然起こるべきとも思っています。そういう意味で、御社のプロダクトは非常にユニークなポジショニングと思っています。

2つ目は、単なるSaaSソリューションではなく、大嶽さんの中には第2、第3の矢のソリューション構想というものがあって、そこからの複層的な事業展開も十分に期待できると思った点です。この2点から、ぜひカタグルマさんを応援させていただきたいと思い、投資させていただきました。
 
カタグルマ大嶽さん:
ありがとうございます。私以上に熱く熱量を持って話されていて、本当にありがたいです。良い意味で、業界に入り込んでいる人間とは異なる別の視点で捉えていただいているので、すごく学びになります。ありがたいです。 

■今後の事業展開

MIC稲垣:
ありがとうございます。最後にズバリ、御社の未来を語っていただければと思います。どういう世界観をカタグルマの事業を通じて作っていきたいか、その点をぜひ教えていただけると嬉しいです。
 
カタグルマ大嶽さん:
人材不足の解消と労働環境の変革のために、デジタル化が大きく出遅れている業界でもあります。まずはいま、HR SaaSのこの業界で最優先にシェアを高めていきたいなと思っています。
一方で我々が着手しているのは、その中でも人材育成の領域の一部と人事評価のみだったりしますので、今後は採用、配置、定着、離職防止。ほかにも、ヘルスケアや健康管理など領域は様々ありますので、広げていきたいと思っています。
ここで様々な個人的なデータや施設運営のデータなど、我々しか持っていない情報を保有できる強みが、今後ますます出てくると思いますので、データドリブンな人材のマッチング事業や、それ以外にも新しいHR事業の開発を検討していきたいと思っています。

ただ、これらの話は経営資源でいったら人の部分なんです。もちろん、人の部分はこの業界の核なので、当然そこの解決も急ぐんですが、やはりモノ・カネの部分においても課題はたくさんあります。ですので、そこの課題解決というのも次なる領域としては考えています。
さらに中長期的に捉えると、保育施設といういわゆる法人やBtoBの領域だけではありません。私たちの理念「子どもと関わるすべての人に新たな景色を。」にあるように、BtoCの保護者の方々にも直接届けられるような、そんな事業展開もしたいと考えています。

■起業家という生き方

MIC有賀:
お2人ともありがとうございます。最後に、起業を志して一歩踏み出そうとしているリスナーの方々に向けて、起業家というキャリアの魅力についてお伝えいただけますか?
 
カタグルマ大嶽さん:
はい。私も起業してまだ4年弱なので、人に何か物を言えるような立場じゃないんですけれども。私は16年間サラリーマンとして過ごして、比較的起業家になったタイミングとしては遅い位置づけの人間だと思うんですね。さらに、そのタイミングで小さな子どもも2人いる、そういった中での起業でした。
ここで起業の決断ができた最後の一押というのは、「自分の子どもたちに誇れる仕事をして、大人としての夢や希望を子どもたちに持たせてあげたい」という思いでした。「子どもがいるからちょっと難しいな」とか、「家庭を守らなきゃいけないから今の仕事を辞めれないな」ということを超えて、冷静になった時に立ち上がれるかどうかが大事だと思っています。もちろんハードシングスも多いですし、経営コンサルタントとして長年キャリアを積んできたとしても、いざ経営してみると分からないことがたくさんありました。日々悩んでいますし、失敗もたくさんあります。
ただ私には、強くて熱いミッションとビジョンがあるので、一つ一つのプロセスにおいて、何か必ず突破口が見つかってくるんじゃないかなと思っています。いま、国もスタートアップを後押ししてくれていますし、資金調達の選択肢も色々な形で増えていたりするので、思い切ってぜひチャレンジしていただければと思います。
 
MIC有賀:
ありがとうございます。まだまだお話を聞きたいところではあったんですが、残念ながらお時間が来てしまいました。またステージが変わった際に、再度お話を伺えることを楽しみにしています。

改めて本日は、株式会社カタグルマより代表取締役CEOの大嶽広展さんを、弊社キャピタリスト稲垣と共にお迎えしました。大嶽さん稲垣さんありがとうございました。
 
カタグルマ大嶽さん、MIC稲垣:
ありがとうございました。


▶Podcast最新話はこちら🎧✨

MICでは投資先企業を紹介する公式Podcast番組「起業家のキモチ~シーズン4~」を毎週火曜日に更新中。カタグルマ大嶽さんにご出演いただいたPodcastもSpotify、Apple Podcastなど各種プラットフォームからご視聴いただけます。
カタグルマ大嶽さんご出演の回:起業家のキモチシーズン4_EP37~EP39


▶モバイルインターネットキャピタル株式会社概要

モバイル・インターネットキャピタル株式会社(以下MIC)は、1999年の創業時からデジタルテック領域において、リード投資を基本とし、シリーズAを中心とするオールステージにてスタートアップへ投資支援活動を行う独立系のベンチャーキャピタルです。投資先のスタートアップへの支援の一環として、事業会社との事業連携等オープンイノベーションにも注力中。


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