笑顔でハァハァ言う犬

え？空き巣？留守中に誰か家に入った？

買い物から帰ると部屋の様子がおかしい。

夫が不在の時は外出時とほぼ同じ状態の景色が出迎えてくれるはずなのに、何かが違う、おかしい。

入り口を入って前方リビングの床にクッションが散らかっている。

来客がない時はドアを開けっぱなしにしている左手の寝室の方に目を向けると掛け布団が引っ剥がされて、無造作にそして完全に床に落とされている。ベッドに乗せてあった枕も全て床に散乱しているのを見て思わず息をのんだ。

ま、まさか！ど、ろ、ぼ、う？

泥棒？？！！

建物の壁面には昨年末から外装修繕のために足組が掛けられている。地上階でなくても簡単に侵入経路が確保できる状況だ。

でもなぜウチに。。。

いや、でも、窓が開いている気配はない。

ん？気配？

寝室の奥にある風呂場の暗がりから怪しい息が聞こえてくる。

ハァハァハァ、ハァ、ハァハァ、クチャクチャ、ハァハァ。。。

ドキッ

心臓が止まる！と思ったその瞬間、カチャカチャカチャと聞き慣れた音が聞こえてきた。

風呂場の闇からカチャカチャと爪音を鳴らして出てきたのは、ミアちゃん！

フローリングの床を歩くとカチャカチャと音がする爪長柴女子のミアちゃん

ハァハァ鼻息が荒く、口角がギュインと上がって満面の笑みだ。

口角爆上がりでめっちゃ笑ってる柴犬ミアちゃん

ど、どうした？なんなん？どないしたん？

７歳柴女子ミアちゃんは、普段家ではゴロゴロしている。

ベッドでゴロゴロ、床でゴロゴロ、カーペットの隅っこでゴロゴロ、冷蔵庫の前でゴロゴロ、ゴロゴロゴロゴロ。

ゴロゴロする犬

仔犬の時期は留守中に束ねて置いてあった書類や雑誌をグチャグチャに噛みまくったりしていたけれど、１歳を過ぎるあたりからは家で一人の時は特に何事もなく平穏に過ごしていた。

なのに今更急に、どうした？

めっちゃハァハァゆーて、なんなん？

めっちゃエキサイティングしてるやん？

もしかして発情期？

子供が欲しいと思っていたので避妊手術を受けていないミアちゃんは、年に１～２回ヒート（生理）がある。ヒート中は普段はサクランボくらいの局部が腫れあがって大き目のアプリコット大になるからすぐにわかるのだが、目視の範囲で腫れの兆候は見られない。

ハァハァと興奮冷めやらぬ犬はじっとこちらを見つめている。

私も入り口のところで立ち止まったままじっと見つめ返す。

泥棒だと思っていた部屋を散らかした犯人の正体がウチの犬って。。。

何だか釈然としないわぁ～。

だって今まで全然そんなことせぇへんかったやん！急にそんなイタズラみたいなことされてもなぁ～、と私の心も整理のつかないまま乱されていた。

ねぇ、なんなん？何で急に？

そう眼力で問いかけたのと同時に、犬はクシュンッとクシャミ（咳払い？）をして目をそらし、何事もなかったかのように尻尾を振って近寄ってきた？かと思ったら、私の足元をスルーしてそのままリビングの方へと去って行った。

え？無視？無視かよっ！オイっ！！

小柄な柴犬が体長の何倍もある掛布団を引っぺがす姿を想像してみた。

エライ体力だ。

ソファーやベッドに乗せてあったクッションや枕を振り落とす姿を想像すると、そのエネルギーの大きさに驚愕する。

結局ヒートではなく単にイラついていた（欲求不満か思春期？）ようで、１週間ぶりに夫が帰ってきたら普段の大人しい犬に戻っていた。

そこはやっぱり『男』の存在で解決するのね。。。と少し寂しい気持ちになり、女である自分になんだかやるせない気持ちをぶつけてみたくもなったけど、それはそれで暖簾に腕押し。

なんだかなぁ。