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週末の海岸とユニクロTシャツ
南仏に戻ってきた。
曇っていても暖かいし、何よりも明るい。
空を覆う雲の灰色はパステル調で暗く陰気な気配を漂わせることをしない。
晴れている時は眩しいばかりの太陽光がポカポカと体を温める。
この時期の南仏の海岸線は、花粉の大量飛来を除けば最高の場所だ。
あと数週間もすると海水浴客で賑わうこの場所を昼間のうちに散歩できるのも今のうち。
日陰のないプロムナードは犬には暑過ぎる。
そんなことをぼーっと考えながら、プロムナードの縁に座って海岸を眺めていた。
犬は今年8歳になる。
ワチャワチャと落ち着きのなかった子供時代はとっくに過ぎ、散歩の途中で休憩を挟みたがるようになったのはいつの頃からだろう。
扉の開いた店の前を通れば入りたがり、カフェの前を通れば勝手にテラス席を選び出す。
街の方へ行くとそんな調子だ。
だから今の時期、程よい気候の間は海岸へ降りるプロムナードの縁に座ってのんびりと過ごすのが定番。まあそのせいで私は夏前にはすでにしっかりと日焼けして、すっかり南国ネイティブ風に仕上がってしまう。
日焼け止めを塗って塗って塗りたくっても焼けるのだから仕方がない。
体質なのだ。
昨日もそうやってプロムナードの縁に座って海岸を眺めていたら、公共のゴミ箱で使われている大きくて頑丈な緑色で半透明のゴミ袋を抱えた2〜3人のグループがあちらこちらでゴミ拾いをしている姿が目についた。
みんなお揃いのTシャツを着ている。
黒のTシャツで肩と背中にいくつかのロゴが入っているのが遠目にも見える。
近くを通りかかった際に目を凝らしてよく見てみると3つのロゴがプリントされていた。
真ん中がニース市のもの、下はよく知らないロゴ。
一番上には馴染み深い赤くて四角いロゴがドドーンとプリントされていた。
ユニクロ
おぉ!ユニクロさん!!
パリではもう普通にあちこちで見かけるあのロゴが、ついにニースの市街地にも出没した。
フランスの都市はどこもそうなのだが、移り変わる生活スタイルと環境問題に適応するために都市の再開発を進めていて、ニースではその一環として駅横に奇抜な形状のエコビルを建設している。
有名高級ホテルが入ると噂されるそのビルにはオフィスや店舗等も入る予定で、その店舗の一つがユニクロさんなのだ。
それまでは車でしか行けないような隣町のそのまた奥地にあるショッピングモールにしかなかったあのユニクロが、万を期して街中へ進出してきたのだ。
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そして市の恒例イベント、海岸清掃にユニクロTシャツが使われていた。
さっすがっユニクロさん、ただのリテイルではございませんよ。ちゃんと社会貢献もするし、ブランドアピールも欠かさない。
TOYOTAやSONYで日本を誇らしく思っていたのはもう随分と昔の話。
今やユニクロ。しかもカタカナ。
時代の移り変わりを感じるわ〜。
ポカポカと暖かい週末、キラキラと光る凪の地中海を眺めながら日本を思い出す瞬間。
隣では犬がウトウトと船を漕いでいる。
幸せだなぁ。