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アートは「真実」。嘘をつかないもの。 - アートコレクター インタビュー Episode.1

現在開催中の、Miaki’s Selection展 「OK TO NOT BE AN ARTOHOLIC YET.」では、1990年代にYBAs(Young British Artists)を見出し、コンセプチュアルアートを牽引したスーパーコレクター、チャールズ・サーチの「MY NAME IS CHARLES SEAATCH AND I AM AN ARTOHOLIC」という本から引用した、Q&Aを展示しています。

アートシーンにおけるコレクターとは、また、そのコレクションとは、一体どのような存在なのか。チャールズ・サーチが答えたものと全く同じ質問を、現代のコレクターに問いかけてみました。

コレクタープロフィール
50代 中国生まれ
会社経営者・女性

Q1- What's the point of art?
Q1- アートの目的は何ですか?

たぶん、アートは「真実」。嘘をつかないものだと思うんですね。社会生活をしていると、みんな大なり小なり、自分自身に嘘をつきながら…。要はわがままには生きられないですよね。いろんな我慢をしたり、合わせたり、繕いながらやっていて、その結果、AさんもBさんもCさんも大体一緒になって、足並みは揃っていくけど、それだと救われないじゃないですか。

本物のアートって、嘘をつけない何かが出ている。絵を描いている人や、作っている人が、感じたり見たりしているものを、素直に、偽りなく出しているからだと思うんです。そういうものと対峙すると、感じられるんですよ。嘘をつかないってこういうことなんだ、と。日々、自分の素直な欲求に嘘をついている私が、救われるんです。

Q2- What keeps you going?
Q2- どうしてあなたは続けているのですか?

一目惚れの作品とか、どうしても手元に置きたいもの、っていうのはあります。自分が持っていれば、その作品がなくなることはないから、20年、30年経ったときに、「ほら、いい作家さんがいるでしょう」って、言えるように持っておきたい。

あとは、コレクションすることによって、好きな作家さんを金銭面から応援できますよね。これからも続けてもらえるように、やっぱり支えられるものだったら、支えておきたいという気持ちがあって、好きな作家さんの作品は、どうしても集めてしまう。

Q3- How do you choose what to buy?
Q3- 購入する作品はどうやって選んでいますか?

絵を買い始めて、3、4年目くらいなので、たぶんまだ「コレクション」と呼べるものは形成していないと思うんですけど。ただ、自分が何をコレクションしていきたいのかは、だんだんわかってきたんですね。そう、たぶんこれから、私はもっと女性作家さん、ストレートに女性というものに向き合っている作家さんの作品を、集めるようになるんだろうな、って思っています。

最初は、あまり感じていなかったんですけど、女性コレクターとしてこの業界にいるのは、珍しいことだと気づいたんですよね。つまり、アート作品を、自分の経済力で集められる女性が少ない。ジェンダーの格差は、こんなところにも出てるんだと思ったし、それは作家さんも同じで、美大を出た後、結婚や出産を経て、キャリアを続けられる人は、やっぱり少ないんです。

そういう中で、自分のジェンダーというか、属性と向き合い、素直になっていく作家さんは、作品はもちろん、成長していく姿も面白いなと思います。気になっているのは、木村佳代子さん、濱元祐佳さん、あとは、森天飛さん。綺麗で可愛らしいだけではなく、少し毒がありますよね。

Q4- What do you look for when buying a work of art?
Q4- アート作品を購入する際、何を重視しますか?

飽きずにずっと持てるかどうか、ですよね。これから先も、ずっと手元に置きたいと感じられるもの。作品が多くなると、全てを壁にかけることは、実際はできなくなっちゃうんですけど、そこにあるって想像するだけで安心感があるもの、それだけは持ちたいと思う。

Q5- What is the most honest thing you can say about yourself?
Q5- 自分自身について、最も正直なことは何ですか?

私、基本的に、あんまり正直な人間じゃないと思うんですよ。それがわかってるのが、正直かもしれない。
やらなきゃいけないからやる。「マスト」っていうのが、たぶん私の中の、一番プライオリティが高いことなんですよね。寝るときは、翌日のタスクのことを考えてしまうし、夢の中でも「あ!あれやり忘れたかも」とか。それをずっとやってるので、そう考えると、ずっと、自分に正直ではない人生だと思う。

Q6-What is the one thing you now really wish you could buy?
Q6-今、本当に買いたいと思うものは何ですか?

自由ですかね。開放、うん。素直になって、本当に自分が好きなことをやれるような自分。やらなきゃいけないことをやるんじゃなくて、私って本当は何が好きなのかを素直に考えて、素直に一つずつ試してみたいんですよね。


Q7- Which artists do you display in your own home? Are you constantly changing the works you have there? Is there a core of favourites which stay there?
Q7- 家で飾っているアーティストはだれですか?定期的に入れ替えたりしますか?またその時の基準は?

森天飛さんと…、あと、鴨居玲さんの小さいドローイングを一作品、ずっと持ってるんです。今、壁には木原千春さんと栗木義夫さんを飾ってるし、梅原義幸さんは実はすごい好きで、フェイスシリーズを3枚くらい持っています。
これまでは、全然余裕がなかったので、あんまり掛け替えたりはできていないんだけど、徐々にやっていきたいなと思ってますね。


写真 / 上と右 堀本達矢作品

Q8- Who are the artists you are most pleased with discovering?
Q8- 最初に見た時に、一番喜んだ作家は誰ですか?

今、壁にかけている、堀本達矢さんですね。彼の作品を最初に見た時、すごいびっくりして、作品を見るために大阪まで行ったこともあります。
私たちって、例えば今の肩書きだったり、社会的な属性、洋服とか、全部取っちゃったら、堀本さんがつくる「ケモノ」のようなものなんだって、感じたんですよね。実はみんなビクビクしてるし、すごい不安。でも、素直になるとこれなんだって思った。


Q9- If you could wish any work of art in the world into your collection what would it be?
Q9- もしどんな作品でもコレクションに加えられるとしたら、誰のどの作品が良いですか?

鴨居玲さんです。自分の頭をボコンって、お腹の辺りに抱えている…。真っ赤なお洋服を着た、ドでかい作品も好きです。


Q10- What did you collect as a child?
Q10- 子供の頃にコレクションしていたものはありますか?

ないです。
私は、70年代生まれなので、小さい頃の中国は、まだ物が溢れるような豊かさはなく、必要なものだけがある生活でした。日本に来た後も、最初は留学生だったので、物を集めたり、たくさん持つことはほとんどなかったです。


Interview and article by Yae Kawano