〆はラーメン!をやってみたい
さっきから深夜ラーメンをする妄想をしている。一度でいいから飲み会の後に「〆はラーメン!」というのをやってみたい人生だった。気の合う何人かの職場の同僚と共に屋台の椅子に座ってラーメンを頼み、味玉も追加。メンマは多めだといいな。みんなで「やっぱり酒の後のラーメンは最高だ」と何度も頷きながら味わうのだ。
そして次の日は二日酔いというところまでがセット。私はそういった飲み会に行けるような職業に就いたことがないので余計に憧れがあるのだと思う。よくドラマで見かけるそんなシーンがたまらなく羨ましい。癖がある飲み方をする人とはご遠慮願いたいが、楽しく飲み会を過ごせる人とならばやってみたいと思ってしまう。
一度だけそういった集団での飲み会に参加したことがあるのだが、私は初めての飲み会にただただ緊張した。こんな時には料理を取り分けるんだっけ…? ととにかく混乱して、頼んだお酒にどんどん思考を奪われた。単なるサワーで度数はぐっと低かったのにもかかわらず、だ。
また隣の席がちょっと気になっていた人だったことも私の酔いを加速させた。結局具合が悪くなりそうになったので適当に「終電があるので」と言って帰ることにした。みんなで盛り上がって「二次会行くぞー!」なんていうノリを心の中で楽しみにしていたというのに、実際の私は逃亡することしかできなかったことがひたすらに情けなかった。憧れだったお酒を楽しく飲むという夢はあえなく散っていった。
仕方がないのでこの深夜にカップラーメンをひとりで食べることにしようと思い、台所でカップヌードルシーフード味を拝借してみる。
袋を破ろうとしてふと手を止めた。そういえば冷蔵庫には生ラーメンがあったはずだと思い出したからだ。カップラーメンを食べるよりも生ラーメンをゆでて具材をトッピングして食べる方が何だか深夜の屋台ラーメンのようだし面白そうじゃないか。
ぐらぐらと沸騰したお湯の中でラーメンを強火でゆでていく。ラーメンのスープは必ずお湯で温めてから溶かすこと。なるともチャーシューも我が家のこだわりの逸品が用意してある。そして運よくゆでたまごまで見つけることができた。思ったよりも楽しく自分の好みのラーメンができそうだと感じてにやりとしてしまう。
「あっつ!」
ふーふーと息を吹きかけながら食べ進めていく。猫舌には苦労させられるが、これくらい熱く作らないと私の食べたいラーメンではないのだ。はふはふ言いつつ食べた深夜のラーメンは、罪作りなくらいなおいしさだった。
いつだったか父に連れられて行った東京の荻窪にある「春木屋」というラーメン店を思い出す。本当においしいラーメンだった。冷蔵の生ラーメンでも展開していたことがあるが、やっぱりお店と同じ味を求めてしまうのはしょうがなかった。父とはどうにも折り合いが悪かったが、機嫌が良い時にはおいしいものを食べに行こうと連れて行かれたこともあった。
優しい魚系のだしの匂いが立ち込める店内を思い出してみる。私が心にイメージしているのは「春木屋」のラーメンのようなおいしいものを飲み会の後に〆として食べたいという欲求なのかもしれない。
あれからお酒を飲むことはなくなってしまった。職場の飲み会の後に「〆はラーメン!」という私の夢はきっと叶わないで消えていってしまうのだろう。だけどラーメンを食べ続けることはできる。うちでは生ラーメンをよく買うので、いろんな名店のラーメンを食べ比べることを楽しんでいけばいい。
ちなみに私の推しは北海道にある「すみれ」の塩ラーメンだ。味噌の方が有名だが自分としては塩だ。だけど味噌味もいい。うーん…どっちの方がおすすめなのかはノーコメントということにしておこう。