秋の連続投稿チャレンジ―【小説感想】リアルの私はどこにいる?/森博嗣
積み放題になっていた……というより、買ってさえいなかったWWシリーズをまとめ買いした。で、少しずつ読んでいる。ようやく1冊読み終わったところ。読むスピードは前より低下しているような気がする。
前作の感想はこちら。
さて、本作品は、ヴァーチャルという仮想空間で、国が勃興するという話です。この物語の世界では、仮想空間であるヴァーチャルが発展していて、もはやリアルの空間と大差ない事になっている。人格も存在するし、ホビーとして様々なデバイスがあったりするし、観光地として中世の宮殿やらがコンピュータ上に再現されている。人間もその中で生活することが出来る。生活基盤をヴァーチャルの中に移し、仕事もヴァーチャル内で完結させることもでき、実際にそのようにしている人もいる。そういう世界。
で、本作品の最初は、ヴァーチャルに本質的には移住した人が、実際のリアルのボディが失われてしまったということで、その捜査をしてほしい、という依頼から始まります。それを調べていると、なんだか大きな話になっていく……という。その中で、ヴァーチャル国家が独立を宣言する。
結構このシリーズ長いのに、ヴァーチャルの描写ってあまりなかったよな、と思う。ここ数作で急に出てきたイメージ。作中では80年前ほどから発達したものらしいが。よくSFラノベに出てくるフルダイブのネットゲーみたいなのがもっと大規模になったような感じか。人の思考とか感覚が電子信号的に解釈されればそういう未来もありそうだけどな。
このシリーズって遠い未来の話で、割と現実と地続きの話をしているような感じなので(帯にも人類の未来を予測するとか書いてあるし)、そういうことも有り得そうだよねって思えそうなのがすごい。
ところでこのシリーズに限らず時々バイオレンスなシーンが入るよなー。必要性がありそうに思えないが、盛り上がりに必要なんだろうか。
物事が進化して、ヴァーチャルみたいな技術が発達したりウォーカロンのような物ができてきたりしても、結局人はなにか象徴的なものを求めてしまったり、ノスタルジックなものに回帰してしまったりと、そういうところに現実味を感じる。悪とされていることが、実際には悪意がなくて単なる物事の合理的な到達点だったり。そういうこともあるかもしれない。今の時代だって、合理的なものを目指そうとしているようで、そうでないことのほうがすごく多い。インターネットが出てきたとき、きっとすごいことが世界中で起きるだろうと思ったけれども、現実的には、そうたいしてすごいことは起きなかった、みたいな感じ。
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