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<1冊目>月まで三キロ・伊与原新 著

今回はフォロワー様からおすすめしていただいた本「月まで三キロ」の感想を書いていきます。
普段の私でしたら、読むことのないジャンルだったのでいい経験になりました!
初めての試みですが、精一杯書いていくので、温かい目でご覧ください♪
ネタバレもありますので、ご了承下さい。

・あらすじ

「この先にね、月に一番近い場所があるんですよ」。死に場所を探す男とタクシー運転手の、一夜のドラマを描く表題作。
食事会の別れ際、「クリスマスまで持っていて」と渡された黒い傘。不意の出来事に、閉じた心が揺れる「星六花」。
真面目な主婦が、一眼レフを手に家出した理由とは(「山を刻む」)など、ままならない人生を、月や雪が温かく照らしだす感涙の傑作六編。

「月まで三キロ」

このあらすじは背表紙に書かれていることを引用しました。

・感想

私が読んで受けた印象としては「理科」「ターニングポイント」です。
これだけ聞くと「難しい話なの??」ってなりそうですが、そんなことはないです。

短編集となっており、それぞれに題名がついています。表題作の「月まで三キロ」のほかに「星六花」「アンモナイトの探し方」など理科系の名前が使われています。なので第一印象は「理科」でした。
私自身、理系が好きだったので「どんな話だろう?知識的な話がでるのかな??」とわくわくしていました。
実際に「星六花」では天候、「アンモナイトの探し方」では化石の話しが出てきます。

「ノジュール?」
(中略)
「正しくは石灰質ノジュール。大きさは数センチから数十センチ。炭酸カルシウムが二次的に濃集して固結したもので、大抵は球状やレンズ状をしている。生物の死骸が分解されるとき、水中の炭素カルシウムが死骸をおおうように沈殿して、ノジュールを形成することがある」
「えっと・・・つまり、中に化石が閉じ込められてるってことですか?カプセルみたいに」
科学用語はともかく、イメージはなんとなくできる。

「月まで三キロ」”アンモナイトの探し方”より

普通に生きているだけでは聞くことのない言葉がでてきます。それらは後からわかりやすい言葉で物語に出てきます。想像できやすい言葉をチョイスされているので「専門用語はネットで調べないとわからん!」ということはありません。
「説明するときは小学生に通じる言葉で」と聞くことがありますが、そのような感じで説明されています。
浅くもない深く過ぎることもないちょうどいい塩梅で読みやすかったです。
本の最後、参考文献などをみるとたくさんの下調べをしたうえでの作品だとわかります。
こういう本、もっと出してほしいな・・・
専門書は敷居が高いけど、作品を通して伝えてくれるのは親しみがあって手が届きやすいです。

それぞれの短編は繋がってなく、独立した話となっております。登場人物も違っており、理科的題名はそれぞれの人生にも重なってきます。
「アンモナイトの探し方」で登場する少年は家庭の事情に振り回され、疲れてしまいます。療養として母親の実家でお世話になり、その近くで化石が掘れることを知ります。
そこで出会った男、化石の話を聞きながらも頭の中では少年のしんどかった経緯が浮き彫りになります。
それはまるで泥の中にいるアンモナイトのようだと、少年は考えることになります。ですが、男とアンモナイトに出会ったことにより、少年は少しずつ前へ進んでいきます。

このように短編ごとには登場人物たちの「ターニングポイント」が描かれています。年齢性別、老若男女いろんな方の人生です。どこか自分に当てはまることもでてくるのは?
ミステリー作品は「次何が起こるんだ?」ですが、この作品は「わかる、こういう気持ちになるよね・・・」と現実味があり、入り込んでしまいます。
おかげさまでリハビリがてらゆっくり読もうと思ってしましたが、一瞬で終わりました(笑)。

・月まで三キロ

今回、短編の中で「アンモナイトの探し方」を中心に話しました。
「なんで表題作を話さないの?」と思われた方もいると思います。個人的に6つの短編の中で一番「人生の話」という感じがしました。何より感じ方が人それぞれだと思います。老若男女、おそらく印象が違うと思います。
私は「悲しい出来事ってどうやってのりこえるのだろう」と考えてしまうお話でした。
気になる方はぜひ、読んでみてください♪



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