見出し画像

「西洸人がアイドルである」という勝算

西くんがDJをする姿を観に行った。

金曜夜、歌舞伎町のクラブ。
アイドルのファンをしていて滅多に立ち入ることのなさそうな場所で、
滅多に対峙することのなさそうな怖いお兄さんのIDチェックを通過して、
大量に積み上がった仕事を無理やり切り上げて、
他メン推しだらけの縁のない場所へ行くほんのちょっとの勇気を振り絞って、
そこまでしても観ておきたかった。

ショッキングピンクに染まった床。
ピンクとリボンで装飾された「キラキラ」の具現化みたいなフォトブース。
それらをすり抜け、階段で地下に降りていく。

「どんな服で出るんだろうね」「サングラスはきっと必須だよね」「一瞬でもお顔見れたらいいなあ」「ピンクの髪見せてくれるかなあ」「まあ、お顔も髪も隠れてたとしても、好きなことして楽しそうな姿が見れれば満足だよね!」なんて一緒に行ってくれた西MINIさんたちと話しながらフロアへ足を踏み入れた。

アイドルの現場ではあり得ないほど近いステージ。
中央に置かれたDJブース。
その光景に、「西洸人がDJをする」ことへの現実味が帯びてくる。

今日はアイドルとしてじゃなくDJとしてステージに立つんだろうなあ。なんてこの時の私はまだ思っていて、
どんな姿でも好きなことに挑戦する姿を見届けるのが楽しみだなあ、なんて淡々とDJブースに立つ西くんを想像しながら呑気に考えていた。

それなのに、
モニターロゴが点滅し、ステージに現れた西くんは、めちゃくちゃアイドルだった。

DJブースに立ち、手元で準備をしながら、名前を呼ぶオタクの声に顔を上げてにやりと口角を上げて笑う。登場してたった数十秒でオタクを沸かせた西くんは紛れもなくアイドルで、曲が始まってからも何度もフロアに目を向け、笑ったり「暑いね」などとジェスチャーをしてオタクとコミュニケーションを取る。

DJをしている間もずっと、オタクに向ける視線は優しくて、何度も自分のオタクに手を振り、愛嬌を振り撒き、フロアが沸くたびに嬉しそうに笑う。
あまりにも表情管理や仕草が完璧で、それも彼のスタイルの一部として音と混ざり合う。

そこに立つ西くんは、どうしようもないほど骨の髄までアイドルで、
「アイドルではなくDJとしての姿を…」なんて思っていた私の頭を思いっきり殴りたくなるほど、私たちが見たのは「アイドル・INIの西洸人」のDJだった。

パフォーマンスが終盤に差し掛かると、LEGIT、DROPと彼が制作に携わった曲のRemixが流れ、フロアの熱もどんどん上がっていく。

フロアを沸かせながら、
西くんは屈託のない笑顔でステージ袖に何度も手を振っていて、手を振った先に「来いよ」と声をかける。
誰がいるんだろう、仲のいいDJ仲間かな、すごく大切な人なんだろうな、などと思っていたら、登場したのはメンバーだった。

メンバーをステージに上げ、「INIの西洸人でした」と言いながら最後に流したのはFANFARE。
オタクの掛け声を聞いて驚いたような顔をして幸せそうに笑い、
メンバーに「出ようか」と声をかけ客席ギリギリまで前に出てたくさん手を振りファンサをしてステージを去った西くん。

個人として呼ばれたはずの場所でINIのロゴを背負い続け、
どんな曲よりも嬉しそうに自分たちの曲を流し、
誰に向けるよりも大切そうな笑顔をメンバーたちに向ける。

そんな西くんは、アイドルという枠を超えた仕事をしながらどうしようもなくアイドルで、どうしようもなくINIだった。

「アイドルに興味がない人も気になってしまうようなアイドルになりたい」と言いながらデビューを勝ち取った彼。
華やかなキャリアを捨て、「もうダンサーじゃない」と力を込めて歌ったあの頃から、彼が目指すものが何一つ変わっていないことが、あの1時間で手に取るようにわかる。

そんな西くんがINIにいることを、私は「勝算」だと思った。

たくさんのアイドルグループが乱立し、少しでもアイドルに興味がある人はそれぞれの推しがいるこの近年。
国民的と呼ばれるようなグループになるのが一昔前よりかなり大変になり、市場は飽和状態なのではないかと思う。

その中でアイドルグループが頭ひとつ抜け、誰もが知っているようなグループになるには「攻め」の存在が必要なのではないだろうか。

例えば嵐。
国民的と呼ばれるようになった彼らには、「櫻井翔」という人間がいる。
彼はアイドル界にHIP HOPの文化を持ち込み、「HIP POP」と名付けながらそれまでのアイドル市場になかった楽曲性を提示。
さらに、当時は珍しかった大卒アイドルという肩書きで、ニュースキャスターというアイドルの枠を超えた活動で知名度を獲得した。

もちろん花より男子をきっかけとした大ブレイクや、バラエティを通したお茶の間からの好感度、アカデミー賞受賞など、それぞれのメンバーのそれぞれの活動すべてが重なり合って彼らは国民的になったと思うが、それでも私には、櫻井翔による「攻め」の功績は大きく、嵐を唯一無にしていたように思える。

そして西洸人は、INIの「攻め」なのではないかと思う。
アイドルであることに誇りを持ちながら、まだアイドルが参入していない場所に攻め込み、新たなアイドル像を作っていく。
好きを仕事にすることで他の誰かによって作られた「王道」の概念を壊し、自らが新たな「王道」になっていく。

色とりどりに光り輝く個性を持ったメンバーが集まるINIの中でもより、西くんはその「攻め」の可能性を強く持っていて、彼自身もその可能性を信じているように感じる。

私は藤牧くんのオタクだが、INIを好きになってから何度も「西洸人がいる限り、INIは絶対勝てる」と強く思った。

そして、それぞれの「好き」を強みに新たな仕事へ挑戦できるグループに推しが所属しているのだと実感し、安心と嬉しさが込み上げる。

誰かに操られるのではなく、自分たちで道を切り拓いてアイドルをし続ける彼らが、この先どうなっていくのか楽しみで仕方がない。

彼らのなりたいアイドル像がいつか王道になる日まで、その軌跡を見守っていたいと思う。

だってアイドルって、なんでもできる肩書きだと思うから。

きっと今は、彼らによる革命の序章。
11人の好きが集まって輝いて、たくさんの人に愛され続けますように。

p.s. 
NYLON JAPANさん、20周年おめでとうございます。楽しいイベントをありがとうございました🎀

西くん、あたらしい世界へ連れて行ってくれてありがとう。慣れない空間だったけど、日常的にDJイベントに行きたいと思うほど最高に楽しい時間だったよ!


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集