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物理で群論はこう使う〜結局なに?〜これから物理で群論を学ぶ人への入門書
(先生)「これ、群って言います。(以上)」
(私)「で、群は何であり、どのように使えるのか?」
この疑問を解消してくれるシーンはその後ないかもしれない。
群論を物理・工学専攻で学ぼうとしても、頼りになる指導者は近くにいない。闇雲に本を漁り、どの本も少し分かって、大半がわからない。時は過ぎ、手にした本と出費を振り返っても、理解のビフォーアフターに変わりがない。
とほほ。これは備忘録。
※ わたしはアマゾンレビュア 雑学家さんではありません。
この記事での対象となる方
下記の方を対象にしています。
非 旧帝 レベル
物理・工学・情報系向け
少なくとも数学科ではない
博士後期課程には進まない
プロにはならない
学生、社会人を含む独学者
講義を受けている方も
"これ物群"なリスト(これから物理で群論を学ぶ人への入門書)
物理の人による、物理向けの親しみやすい入門~大学院をリストアップ。
群論(物理学向け)の書籍は、それほど多くありません。数年に一冊のペースでの出版です。参考文献に挙がる本の多くは数十年前の書籍であり、その書籍に書かれる参考文献は、さらに数十年を遡ります。
その中から物理・工学ユースでの群論の入門書を挙げました。学部〜院(修士)での素養目的であれば、このレベルで十分です。
※ 後編"数学な群論"に手を出すな !
勝藤拓郎『基礎から学ぶ強相関電子系,量子力学から固体物理、場の量子論まで(物質・材料テキストシリーズ)』内田老鶴圃,2017
第8章対称性に、(物性)物理学として必要な群論知識がまとめられている。28ページと読み通しやすいボリューム。
窪田高弘,SGCライブラリ『物理のための リー群とリー代数』サイエンス社,2008
物理での(連続)群の使い所が明示されている。
素粒子論 向き。著者 窪田高弘先生は素粒子専門です。
この本だけの所有で大丈夫です。
物理対象に学ぶべき群論の論点が網羅されている。ToDoとして目次を眺めるだけでもいい。
難点は電子版(出版元サイエンス社)でしか手に入らないこと。
修士レベル群論は、この本のわからない箇所を埋める、で十分です。他の本を参考にしたり、素粒子の先生にヒントをもらいましょう。
藤永茂,成田進『化学や物理のための やさしい群論入門』岩波書店,2001
非数学の理工系の人への群論1冊目にもっとも読みやすい和専門書。
量子化学向けの内容 (離散群(分子・結晶構造)、群論と量子力学)
藤永茂先生は物理出身の物理化学(量子化学)研究者。名著『分子軌道法』(岩波書店)も書かれています。
分子軌道法は原子・分子構造を量子力学の近似法を用いて算出する分野。
物理の人にもイメージしやすい内容。
副読本として数日~1週間程度で読める。
量子化学(量子力学感たっぷりな化学)は
梁成吉 『キーポイントシリーズ 行列と変換群』岩波書店,1996
回転・空間操作からスピノールへいたる秘伝書。
「理工系数学のキーポイント」 シリーズの珠玉の一冊。
線形代数を未修でも読める。むしろ線形代数が見通しがついて、線形代数チカラが底上げされる。
力学や量子力学で現れる特殊な行列(直交行列,ユニタリ行列,エルミート行列)が苦手な人にも救いの本になりえます。
巻末の参考文献に豊富に書かれているが、1996年の「古いリスト」であることに注意。
吉川圭二『群と表現』理工系の基礎数学 新装版 9,岩波書店,2022
吉川圭二は素粒子(超弦理論)専門の先生です。
巻末の参考文献に豊富に書かれているが、1996年の「古いリスト」であることに注意。
物理の人にとって、この本以上の群論はオーバーワーク。
数学の人による本(下記『線形代数と群の表現』は例外)を読んでも、理解が深まることはありません。この『群と表現』で留めましょう。
平井 武『線形代数と群の表現2』,すうがくぶっくす 21,朝倉書店,2001
数学者による群論(表現論)の本。
非数学者むけ応用例が豊富。しかもわかりやすい。
数学者による群論はこの本までに留めておいたほうがいい。
平井 武『表現論入門セミナー[新装版]第1巻』もありますが、非数学者は保留でいい。
A. Zee "Group Theory in a Nutshell for Physicists",Princeton University Press,2016
場の理論のNutshellで有名なジー先生による、完全なる物理むけ群論。
不親切(天才気質?)なジョージアイ比べると、一般的な学生向き。
大学ならどこかに一冊はあるはず。
渡辺悠樹『量子多体系の対称性とトポロジー: 統一的な理解を目指して』SGCライブラリ,2022
物性に現れる対称性を群論とトポロジー(位相幾何学)で整理する、現代的かつ野心的な内容。
非常にハイレベル。(著者もあとがきでそのように語っています)
類書
続編あります。
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