医療の質・安全学会で講演してきました
11/26-27日に神戸国際展示場で医療の質・安全学会学術集会があり,二日目の夕方に講演をしてきました.別の学会とバッティングしたためになるべく遅い時間をリクエストして,結果として最後が私(招待講演4),その直前が石井遼介さん(招待講演3)でした.
会場風景の写真は撮り忘れたのですが,こんなに大勢の医療関係者が集まって(参加者千数百人とうかがいました)医療の安全と質について議論していると知って驚くとともに,医療サービスのエンドユーザとしても心強く思いました.この分野はほぼ素人の私ですが,いままでもリーダーシップ教育について共同研究のお誘いや講演依頼は時々あり,今回は立教時代に大学入試業務が縁で知り合った安全管理の専門家・芳賀繁さんの推薦で招待していただくことになりました.
エドモンドソンの研究でも「恐れのない(fearless)病院組織」のほうがエラーの報告件数は多いけれども医療の質は高いことが紹介されていて,石井遼介さんの著書『心理的安全性のつくりかた』を通じてこの学会では心理的安全性についてはほぼ全員がなじみがあるそうです.私はまずリーダーシップが必ずしも権限や役職によるものではないこと,リーダーシップは教育によって身につけられるものであること等を説明しました.
ここまではいままで書いた本にも繰り返し書いたことですが,それに加えて,心理的安全性を作るのは他ならぬリーダーシップであること,そしてついでに,心理的安全性というワーディングは実は危険で,石井さん自身も注意を喚起しておられるように容易に「ヌルい組織」(心理的安全を実現するために成果志向を弱める)への道になりやすいこと,(既にnoteにも書いたように)心理的安全性と呼ぶよりむしろ(自動車の安全性の尺度で使われる)衝突安全性と呼んだほうがその点に関する限りは誤解がうまれにくいことも説明しました.
最後の点は会場の皆さんにも興味をもっていただけたようで,いくつか質問もちょうだいしました.質問にお答えしているうちに気づいたのですが,衝突安全性を構築すること自体が衝突を促進するかどうかは吟味が必要かもしれません.もし衝突しても安全だという一種の保険があるときに,それなら安心して衝突しちゃえという方向に行動の変容があるとすればこれは古典的な保険のモラルハザードでもありますね.