せきぞう、さんで思い出した『里の秋』
黙っていても秋は深まりいく、静かな秋の午後である。
いつもこの時期思い出すのが童謡の『里の秋』である。
今の小学生の音楽の教科書を目にしたことがないから分からないが、こんな童謡はいつまでも残しておいてもらいたいものである。
『静かな静かな里の秋』、で始まるあの童謡である。
子どもの頃、両親、兄と過ごした豊川市のアパートから自転車で少し走ると穂ノ原という地名、広い農地が広がりその先には赤塚山があった。
終戦直前の空襲によって二千五百人以上の犠牲者が出た豊川海軍工廠の跡地は工業団地となりそんな悲惨な出来事のあった場所なんて子どもの私たちに微塵も思わせることはなかった。
なんでもないどこの地方都市にもありそうな田舎の風景がいつまでも私の心に残るのである。
そして、この時期『里の秋』の調べとともに私の記憶に甦るのである。
この曲が終戦の暮れに復員兵や引き揚げ者たちを励ますために作られた曲だと知ったのは中学生くらいの時だった。
その時思ったのは、聴いた人たちはかえって悲しくなってしまったのではないだろうか、であった。
しかし、その悲しさは思い出があるからこそのことであり、それまで忘れていた感情かも知れないとも思ったのを覚えている。
戦争という異常な空間と時間の中でこの曲は普通の人間に戻るための、麻痺した感情を取り戻すための、軽いストレスを与えるリハビリ曲なのではないかと解釈した。
まだまだ出口の見えないこの流行り病の先にも、忘れた心を思い出すこんな誰でもが口ずさむことの出来る唱歌のようなものが、生まれてきてもよいのではなかろうかと思うのである。
ヘッダー画像は私の一昨日の記事『秋祭りの糊のきいたハッピのおもいで』に連想して、せきぞう、さんが描いてくれたものです。
とてもありがたい、心に染み入るデジタル画像でした。
そして、ジッと見ていて思い出したのが『里の秋』でした、、、