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眠れない夜の優しい羊。

なんだかとろりと疲れている。
くたくたって感じじゃない。とろりと疲れている。
桃の缶詰のシロップのようだ。

とても眠たいのに、お月様の端っこにシャツが引っかかったように眠れない夜。


そう、立ち上がるのも億劫で、寝ながら上手にお茶飲み、どこかほんのひとさじ寂しい気持ちの時は、優しい羊のことを考える。

いっぴき、にひき。
私が数えはじめると、ぴょんっと柵を飛び越えるように、彼らはベランダから部屋に入ってくる。

おりこうさんな彼らは、部屋の隅から隅まで、ぎゅっぎゅっと詰まっていく。

ぎゅっ ぎゅっ

ぎゅっ ぎゅっ

各々が好き勝手あちらこちらを向いているくせに、誰に指示されるわけでもなく、上手なテトリスのようにきちんと私の部屋の中、隙間なく埋まっていく。

ベッドの周りまできた彼らは、私のシャツの裾をかまって欲しそうに引っ張ったり、私の手の下に頭を潜り込ませたりする。

私は横になったまま、ごわごわした彼らの背中を寝ながら撫で、



ほら、そうしたら、朝になった。

私の優しい羊。

眠れない寂しい夜に、布団で横になりながら書いた文章は、あれでおしまい。

羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹…
one sheep, two sheep, three sheep…

SheepがSleepに聞こえる言葉遊びだから、日本語で数えても意味がない、なんてことは言わないでね。
小さい頃から私はこうやって優しい羊に囲まれながら眠る夜があったのだから。

何度も何度も、小さい頃から羊が眠りをもたらしてくれる。
そしてなんだか寂しい気持ちは、朝になれば夜が持っていってくれる。

たくさんの人の寂しいを抱え持って行ってくれる夜だから、その寂しいが溢れて、たまに誰かの心に落ちちゃうのかもしれないね。

どうか寂しいがあなたに落ちてきませんように。
どうせ落ちてくるなら、私の心に落ちてきてもいいよ。

私なら大丈夫だから。
羊がふんわりと甘えながら、夢へ運んでくれるから。

今日の夜も、あなたに穏やかな夜でありますように。

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