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左翼化する前の途上国は、腐敗した社会で米国と結びつき、独裁色を強める。
前回で示した通り、途上国で未熟な執政が行われている時、米国との経済的関係が深まると、汚職や贈収賄等、社会の病根が蔓延し、富の分配格差が広がり、一部の人間だけが裕福になる。不満が溜まった国民は、皆平等の貴賤無しを謳う共産主義の夢物語に魅了される。軈て共産革命が起こり、反米国家ができあがる。何故こうなってしまうのか。
米国との経済的関係と言うのは、米国企業が途上国で金儲けのために活動する事である。多くの場合、この企業とは資源関連の企業である。途上国では教育制度が貧弱なので、技量が高い労働者は得られない。この様な労働市場では、利益が高い重化学やハイテク工業は望むべくもない。国民の文盲率が高い場合は、低利益の繊維産業すら難しい。伝統的農業も機械化が進んでないので儲けにならない。
しかし、資源産業は利益が期待できる。資源産業に伴う多くの仕事は、穴掘り、土や鉱物の運搬や仕分等の単純作業だ。現地労働者は、技量が無くても文盲でも作業できる。鉱山や油田で扱う機械は高度技術者が必要だが、人数は少なくて済むので本国から呼び寄せれば事足りる。
最も特筆すべき事は、資源関連企業は独裁者、あるいは独裁政治が好きだということだ。資源事業は穴を掘ったり、山を崩したり、公害を発生させたりと環境に負荷を掛けることが多い。住民と揉め事を起こす事も少なくない。
この時、民主国家で法治が良くなされている国では、工事反対や損害賠償を求めて訴訟が起こったり、宣伝媒体で取り上げられ、社会問題になったりする。当該企業は対応に追われ、時には高額な賠償金や、開発の遅れや最悪の場合中止に追い込まれ、巨額の損失を抱える可能性がある。
しかし、独裁国家では独裁者や役人と話が付けば、後は一気通貫、どんな問題も隠蔽して解決できる。住民の立ち退きや、反対派の始末など汚い仕事は、現地の組織に任せれば良い。鼻薬を嗅がすか袖の下に何か入れて置けば、企業は手を汚さずに済む。安全管理に手を抜いて、事故が起きても訴訟なんてあり得ない。独裁者や現地組織への分配金など、全体からみれば高が知れている。企業は費用を浮かせて、暴利を貪り食うことができる。
一部の人間のみ裕福になり贅沢三昧している状況は、現地住民、延いては国民の怒りを買うことになる。独裁政権の下では声を上げる者、反対する者は、投獄され拷問され、時には始末される。こんな時、人々は共産主義の貴賤無し、皆平等の夢物語に耳を傾ける。軈て、政府打倒の革命が起こり左翼系政権、あるはより独裁色が強まった軍部政権が誕生して反米国家に成っていく。
これに中国やソ連(現ロシア)が付け込んだり、宗教的理由が加わる場合もあるが、特に反米国家でも無かった国が反米化して行く過程は、大体似たり寄ったり上記の様なものである。米国はどうしてこの様な反米環境を作り出して、自分で自分の首を絞めるのだろうか。これは米国の成り立ちに関係があるが、次回としよう。