フィンランド教育神話の光と影とは?
フィンランドに一年弱留学することになりました。
そこで、かつては教育界の神話的な存在であったフィンランドの教育について実際に教育を受けながら、実際はどのようなものかを調べます。
先行研究として、フィンランドの教育の歴史と現状を調べます。
1.教育の平等性
フィンランド教育において特筆すべきは教育の平等性です。
そもそもフィンランドはほとんどが公立学校であり、私立学校はほとんどありません。
また、学費も(給食費も)高校まで無料なため、経済格差による教育の機会が奪われるということは全くもってありません。
また、16歳までテストがなく、(つまり高校受験は存在しないということ)
より高い偏差値の高校に行くために、塾に通わせたりということが必要ないので、より教育における経済格差は小さくなっています。
2.主体性を尊重した授業スタイル
フィンランドは、2000年代初頭より、現在日本でも取り組みが始まっている主体性を尊重した教育を取り入れてきました。ただ教師が授業を淡々と黒板で教えていくある意味受動的な教育内容ではなく、生徒個人個人が自らの意思と責任を持って行動”できる”
教育内容です。
さて、大きく一般的に論じられているフィンランド教育が優れている点を挙げましたが、結果として現れているのかを調べます。
3.PISA学力調査で見るフィンランドの教育システム
そもそもPISAとは、OECD(経済協力開発機構)加盟国の生徒による学習到達度調査のことです。3年周期で行われるこの調査はメインテーマが変遷しています。
ここで2000年のPISAの順位を見てみます。
数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーの三つの分野の順位です。
数学的リテラシーにおいては、日本は1位に輝いています。
そしてフィンランドは4位となっています。
科学的リテラシーにおいても日本は2位となっており、フィンランドは3位。
そして読解力に関しては日本は8位ですが、フィンランドは1位です。
輝かしい実績を上げています。
では、直近で行われたPISAの学力順位を見てみます。
フィンランドの結果です。
フィンランドの方には申し訳ないですが、ひどいほど落ちぶれています。
三つの観点のどれをとっても大幅に下がっています。
推移をみます。
右肩下がりなのが確認できます。
フィンランドの教育は成績においてなぜ低下したのか?
そこでいくつかの記事を見つけました。
4.フィンランドの成績低下はなぜ起こった?
記事によると、フィンランドの教育文化省はフィンランド教育評価において、他国が成績を向上させているのに対し、フィンランドは停滞していると評価しています。
また、報告書によると、学習成果の低下は「異例なほど急速」であり、「いくつかの研究で観察された読解力と数学力の低下は、1年、さらには2年で達成された学習成果に相当する」と言います。
Sakari Puisto氏は、例えば、複数の科目にまたがってより総合的にトピックを学習する学習概念である現象ベースの学習の利点を再検討するなどして、小学校の日常生活を落ち着かせるべきだと述べています。
両氏の言葉からもわかるように、フィンランドはより高度な教育方針をとるがあまり、基礎的な教育が足りなかったということのようです。
5.現状まとめ
フィンランドは2000年代初頭と比べて、すべての項目で順位を落としています。
しかし、これは成績だけでの比較です。
このPISAの対象年齢は15歳です。
つまり、高校一年生が受けるテストです。
先述の通り、フィンランドは中学校まではテストがありません。
その中でのこの順位はすごいことなのかもしれません。
主体的な教育において、核となる部分は、自己決定しなければならないと言うことです。つまり生徒自身に向上心がないと、伸びる生徒はものすごく伸びる一方、どんどん落ちぶれていってしまう生徒もいると言うこと。
フィンランドはそんな扱いの難しい教育方法を導入しています。
教育は成績が全てではありません。多角的にフィンランドの教育を見た時にどのような点が評価できるのかを一年間を通して観察していきたいです。
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